みんな、どんな仕事をして、どんなことで悩んで、どんな夢を持っているの?
山形県内で働く20代社会人に、突撃インタビュー!!
ヤマガタ未来ラボ編集部では、山形で働く20代を“ミライさん”と呼んで、応援しています!
今月のミライさん★
豊嶋 莉乃(としま りの)さん
職業:高畠町地域おこし協力隊
年齢:27歳
出身:山形県
社会人歴:6年目
好きな言葉:「好奇心は最高の栄養剤」
はじめての営業職。仕事に悩み、もがいた日々
――豊嶋さんは、東京から山形にUターンして地域おこし協力隊になったそうですが、以前はどんなお仕事をしていたんですか?
「東京の大学を卒業後、新卒で入った会社では営業をしていました。営業自体は好きだったし、いろいろなお客様と会って話ができるのは楽しくてやりがいもありました。ただ、私は競争するのがあんまり好きじゃなくて…。営業って、どれだけ売ったかという結果で競争するところがあると思うのですが、私はそれよりも「過程」を大事にしたいと思っていたので、売上の数字だけで評価されるのは何か違うなと感じて…。結果を追い求めるという仕事のスタイルが自分には合わなくて、1年半ぐらいで辞めてしまいました」
――仕事を辞めるという決断をするのも勇気がいりますよね。
「とにかく一旦リセットしたいという気持ちでした。ハローワークで仕事を探して、毎日5〜6社エントリーしていましたね。新卒で就職したときは、社長の言葉や熱意に惹かれて入社を決めてしまったので、会社のことをあまりよくわかっていなかった部分があったと思います。だから転職活動では、とにかくいろいろな会社を見てみようと思い、計50社以上は受けました。一人暮らしで貯金を崩しながらの生活だったので、正直、すごく大変でした。今までの人生で一番頑張った時期だったかもしれません(笑)。」
山形で“私にしかできない仕事”をしたい
――いろいろ経験して気づくこともたくさんありますよね。次の就職先はどんなところだったんですか?
「メーカーの営業事務です。前職で営業をしていたときに、言い方ひとつで相手の反応が変わるということは経験していましたが、営業事務でも「こう伝えると、営業の人はこう動くんだ」とわかって勉強になったし、営業さんをサポートしながら育てていくのはとても面白かったですね。
でも、ある時ふと「この仕事って、私じゃなくてもいいのかもしれない。誰でも私の代わりになれるな」と気づいたんです。それと同時に「私にしかできない仕事がしたい」という気持ちが強くなっていって…。どうせなら生まれ故郷の山形で何かできないかな、誰かと一緒に何かをつくりあげる仕事ってないかなと思い始めました。」
――「山形で何かしたい」と思っても、東京で働きながらそのきっかけを見つけるのは難しいと思いますが、具体的に何か行動を起こしたんですか?
「高畠町に『熱中小学校』という廃校を利用した大人の学び場があるのですが、母が熱中小学校の生徒で、私がちょうど仕事を辞めようか悩んでいた時期に、「熱中小学校で運動会をやるんだけど、誰でも参加できるからおいでよ」と誘われたんです。軽い気持ちで両親と一緒に参加したら、それがすごく楽しかったんですよね。今になって振り返ると、その運動会に参加したことが山形に戻るきっかけになったと思います。」
※熱中小学校とは、廃校になった小学校を利活用して大人の学び舎とする取り組み。『もういちど7歳の目で世界を…』をコンセプトに、起業家精神や里山文化・最新技術を学び、創造する場。
▲高畠熱中小学校(旧時沢小学校)
大人が楽しそうに笑っている光景に心動かされてUターンを決意
――Uターンを決意するきっかけになった運動会とは、どんなものだったんですか?
「地域の方たちもみんな参加するのですが、綱引きなど定番の競技のほかに、ドローンにくす玉のようなものを吊り下げて、上からドサッと落としたピンポン玉を拾ったり、新しい競技もいろいろあって、大人もみんな夢中になってやるのですごく盛り上がるんですよ。
普段、大人が笑うところって、あまり見ないですよね? その運動会では大の大人がはしゃいで、みんな笑っていて…。そんな光景見たことがなかったから衝撃的だったし、普段笑わない私の父がこんなに笑うんだってびっくりしました(笑)。そのとき「熱中小学校って何?ここで働きたい!」と思ったんです。」
▲熱中小学校の運動会の様子
――軽い気持ちでたまたま遊びに行った運動会が、豊嶋さんの転機になったわけですね。
「山形に帰ってもいいかなと思い始めたときに、ちょうど運動会があって、行ってみたら楽しくて、そこで働きたいと思ったら、たまたま地域おこし協力隊の募集があって…と、トントン拍子に事が運びました。自分の気持ちといろいろなタイミングがうまくかみ合った感じでしたね。」
Uターンして高畠町地域おこし協力隊に
——現在、高畠町の地域おこし協力隊として働いているとのことですが、具体的にはどんなお仕事をされているんですか?
「高畠町には現在、地域おこし協力隊が4人いて(2019年10月時点)、それぞれ担当している仕事が違うのですが、私は熱中小学校の事務局で働いています。熱中小学校で行う講座の企画や運営がメインですが、他にも地域の行事に参加させていただいたり、東京や仙台などで行われるフェアへの出店やPR活動も行っています。」
――地域おこし協力隊として高畠に移り住んで、地域の方とはすぐ打ち解けられましたか?
「私は山形市出身なので、実は高畠町のことはあまりよく知らなくて、ワイナリーしかないと思っていました(笑)。方言も全然わかりませんでしたね。
でも、高畠町の人は、よそものに対して優しくてウェルカムなんですよ。商店街の方も、私たち地域おこし協力隊のことをすごく気にかけてくれて「どんなことやるの?」と聞いてくれたり、お店に行くと「よくござったな〜」「とりあえず食え食え!」と招いてくれるんですよ。私が「こういうことをやろうと思っているんです」と言うと、熱心に話を聞いてくれるのでとてもありがたいですね。私も積極的に町のイベントに出たり商店街に行ったりして、できるだけ地域の人と話す機会を作るようにしています。」
地域の人と一緒に何かをつくりあげる喜び
――地域おこし協力隊の仕事はやりがいがありますか?
「私が昔からやりたかった“誰かと何かをつくりあげていく仕事”を、地域の方と一緒にできているので、すごくやりがいがあります。難しさもあるけど、やっぱり楽しい。こういう仕事ができるのは嬉しいですね。今は、自分のやりたいことを精一杯やっているので、毎日充実しています。
もちろん大変さも伴いますが、協力してやり遂げるからこそ、終わった後は達成感もあるし絆も生まれるんですよね。そして、一回きりで終わらせるのではなく、改善して次はさらにいいものをつくろう、もっと良くしていこうという仕事の仕方が、私は好きなんです。」
▲高畠町時沢地区の風景
――地域おこし協力隊になって、大変なことや苦労したことはありますか?
「うーん、苦労しっぱなしだなあ(笑)。企画をやりたいと言ったものの、それまで会社で企画なんてやったことがなかったので、正直、うまくいかなかったこともあります。
着任して1年目の夏祭りでは、「私はこれをやりたいので、町の皆さん協力してくれませんか?」というスタンスでやってしまって…。マルシェを企画したのですが、出店者の方や地域の方の意見をあまり聞かないまま進めてしまい、いろいろな気持ちのすれ違いが起こりました。結果としてマルシェはできたけど、これじゃダメだなと反省しました。
その経験から、協力してもらうためにはまず地域の方の意見を聞いて、企画する側がみんなの気持ちをきちんと汲み取らなくてはいけないと気づきました。
今年の夏、もう一度マルシェを開催したのですが、今回は早めに動き始めて、協力してくれる方たちと毎週話し合い、地域の人ともコミュニケーションを取るようにしました。まだまだ改善が必要ですが、1年目の反省を活かして取り組んだので、前回よりもうまくできたと思います。」
――回を重ねるごとに少しずついいものになっていくといいですね。きっと町の人たちも豊嶋さんの頑張りや成長を見守ってくれていると思います。他にはどんなイベントをやっているんですか?
「実は、栄養士の資格を持っているので、食のイベントをやりたいなと思い、熱中小学校で料理教室なども企画・実施しています。それから、高畠町の二井宿というところに乳牛を育てている牛舎があるのですが、こんなに良いところがあるということを皆さんにぜひ知ってもらいたいと思い、搾乳体験を企画しました。それはあっという間に30人ぐらい集まって、すごく楽しかったですね。」
▲二井宿での搾乳体験
――地域おこし協力隊の任期は3年ということで、ちょうど半分が過ぎたところですが、これからどんなことをやっていきたいと思っていますか?
「高校生と一緒に何か活動してみたいですね。以前、高校生のボランティアサークルがマルシェに手芸品を出してくれたり、ハーバリウム体験のブースを作ってくれたりして、面白いなと思ったんです。今後、一緒に何か形に残ることをしてみたいと思っています。」
離れてはじめてわかった山形の良さ
――Uターンして山形でイキイキと働いている豊嶋さんの姿を見て、ご両親も喜んでいるのでは? ご両親からは山形に戻って来て欲しいと言われていたんですか?
「本心は戻ってきてほしいと思っていたみたいですが、私に直接言ってくることはなかったですね。たぶん、私が自分で選択できるように、あえて言わなかったんだと思います。母からさりげなく運動会に誘われて、まんまと作戦に引っかかったなという感じですが(笑)、それがなかったら山形に帰ってきていないかもしれないので、母には感謝しています。」
――東京が嫌になって戻ってきたわけではないんですよね。
「東京での生活はすごく楽しかったです。友達もたくさんいたし、遊ぶところもお店もいっぱいあって、楽しもうと思えばいくらでも楽しめます。でも、ずっと住むところではないなあと、漠然と思っていましたね。やっぱり山形が好きっていうのが一番かな。東京に未練はありませんでした。」
――山形の人は、地元愛が強い人が多いですよね。山形のどんなところが好きですか?
「やっぱり“人”と“自然”ですね。東京に住んでいた頃は、ご近所付き合いや地域の方との触れ合いもほとんどなくて、隣の人の顔すら知りませんでした。山形では「作りすぎちゃったから」って近所の方からお裾分けをいただいたりするし、そういう人間らしさやあたたかさに惹かれたのかなと思います。
自然や空気も、都会とは全然違いますよね。地域おこし協力隊として高畠町に住むようになってから「空ってこんなに綺麗だったっけ」とびっくりすることもあります(笑)。田植え前の田んぼに水を張っている風景もすごくいいですよね〜。」
――わかります!水を張ってキラキラしている田園風景は本当にきれいで心が洗われますよね。でも、ずっとここに居たらその価値に気づかないのかもしれません。
「そうなんですよ。だから地元の高校生は「何にもない」「つまらない」って言うんですよね。でも、一度離れてみることで気づく山形の良さがあって、この自然が本当に素晴らしいと思うし、人もあたたかいし…。
だから、山形を出たいという人には、一度出てみることをおすすめします。私も、以前は何もないただの田舎だと思ってたし、東京に進学するときは「もう絶対に戻らない」と思ってたんですけど(笑)、帰ってきたら、「やっぱりいいところだな」と。
今は、自信をもって山形の良さを人に伝えられるようになったので、東京の友だちにも「山形に遊びにおいでよ!」って声をかけています。新幹線ですぐなので、けっこうみんな来てくれるんですよ。これからもたくさんの人に山形の良さを伝えていきたいと思います。」
仕事も人生も楽しんでね、ミライさん☆
ヤマガタ未来ラボは、山形のミライさんを応援しています。
最後に豊嶋さんから、高畠町でおすすめのお店を紹介してもらいました。
▶シフォンケーキ専門店「にんまる」
UIターンについて、ぼんやりと考えてはいるけれど、具体的なイメージが湧かないという人は、実際にUIターンした人に会い、体験談や意見を聞くことで、「こんな暮らしがしたい」「こんな生き方がしたい」という具体的なイメージが湧くかもしれません。UIターンを迷っているなら、ぜひこちらのイベントに足を運んでみてください!きっと、一歩踏み出すきっかけが見つかるはずです!
★2019年12月1日(日) 『山形県UターンIターンフェア』
★2019年12月7日(土) 『ユアターンサミット』
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