山形駅から二十分ほど西へ歩くと、山形市立商業高等学校(通称山商、以下山商)が見えてくる。山商は諭誠(真心を尽くすこと)の精神のもと、文武両道に励んでいる。
毎年高い進学率と就職内定率を誇り、全国的に知名度の高い部活動もある。レスリングでのオリンピック金メダリスト、女子バレー日本代表選手も輩出している。男女共学だが、女子生徒の方が多く元気があるのが特徴の、県内有数の伝統校である。
その山商で、先月二十一日と二十二日に毎年恒例の山商祭が行われた。外では焼きそばやたこ焼きなどの食べ物屋が通りを作り、校舎内では教室を改装してお化け屋敷などのアトラクションが好評を博した。生徒達自らが企画立案し、先生らがその交通整理を行いながら、山商生に商売を楽しく学んでもらうのが山商祭の目的だ。売上成績や優れたアイデアが光った企画は、来客者などの投票によって表彰される。今年も晴天に恵まれたおかげで多くの人々が山商を訪れ、店は繁盛し、祭は大いに盛り上がりを見せたのだった。
今回取材をお願いしたのは、山商で教鞭をとる先生
今回のやまがたで働く人
佐藤大先生。
山形市立商業高校教師:理科
理科を教える夏でも陽の当たらない涼しい理科室を縄張りにし、授業を通じて身近な理科に触れさせ楽しんでもらうことをモットーにしている、そんな大先生に色々と話しを聞いた。
山形大学を卒業し、教師へ。活動は幅広く
大先生は新潟県の出身で、三人兄弟の末っ子として生まれた。(山形弁でいう『ばっつ』。大抵ばっつの前に馬鹿をつけて使われることが多いのだが、大先生は立派に教師を務めておられるのでその言葉の使い方は必ずしも正しくないようだ。)実家は温泉旅館街で有名な月岡温泉が近い。
越後の美しい田園風景に囲まれて 育った自然児である。地元の高校を卒業をした後、山形大学に進学し、以前から希望していた教員免許を見事取得。その後は庄内の高校で教え、今から十年前に山商に異動になり、現在に至っている。かわいらしい奥さんとの間に二人の男の子を設ける。
大先生は多彩な運動神経の持ち主で、小、中学校は野球、高校の時には当時流行っていた超人気漫画『スラムダンク』に影響を受けバスケットボール部に入部。バスケ素人の主人公の真似をして、ボールをリングに置いてくると言いながらシュート練習に励んでいたそうだ。現在はスキー部の顧問をしている。
春夏秋は雪がないので練習は主に体力トレーニングが中心になっている。今年の夏休みには庄内の遊佐まで自転車で走破させる予定だそうだ。(片道約135km)プライベートではゴルフを楽しんでいる。もうスポーツだったら何でもこいみたいな感じだ。ただ、大先生はいざ自分のスポーツ遍歴を振り返ってみると極めた競技がないことに気づいて、何やらしみじみと感じいってる様子だった。
また大先生は頼まれたことは拒むことなく「いいですよ、やりますよ」と引き受けてしまう。例えば今年からうけもった学校図書係や、校外では子どもの保育園の保護者会副会長を務めたりしており、活動範囲は広い。大先生のように幅広く仕事をこなすことのできる人は山商では貴重な存在なのだ。
「適当」
大先生は今年新たに一年生を担任することになった。まだ高校生活に慣れず緊張している新入生に対して、大先生は新しいクラスを受け持つたびに言い聞かせていることを話した。僕の好きな言葉は「適当」です、と。
この「適当」という言葉に消極的な意味は込められていない。
大先生が言う「適当」は、頑張りすぎないこと、疲れない程度にやること、でもやるときはしっかりやることである。力が入りすぎるとなかなかうまくいかないし、真面目過ぎたり深刻になりすぎるのは必ずしも良い結果を生まないものだ。だから、肩のチカラをぬいてリラックスする。チカラの適材適所を心掛けるようにすればいい、これが大先生のモットーであり、信念である。
大先生は山商へ遊びにきたある卒業生から「先生から教わった“適当”というコトバを今だに覚えています」と言われたことがあった。どうやら「適当」は心に残る言葉らしい。
Profile
佐藤大さん
出身 新潟県