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Uターンを考えてはいるけれど、長年離れていた故郷に再び馴染めるか心配…。
地方での暮らしや仕事に生きがいを感じられるだろうか…?
そんな不安を抱えている方に、勇気を与えてくれる移住者をご紹介します。
都会と地方それぞれの良さを見つけてポジティブに今を楽しむ姿勢に、後悔しない生き方のヒントが隠されています。
長井市出身の方も、そうでない方も、ぜひ今後の“人生の選択”の参考にしてみてください。
今回のやまがたで働く人
鷲見 孝(すみ たかし)さん
【プロフィール】
岐阜県出身。三菱商事でイタリアに6年在住。フェラガモ、エルメスジャポンの要職を歴任するなどファッション業界の最先端で長く活躍。2010年~2017年、文具卸大手の(株)MDS社長。その後、夫婦で長井市へIターン。2017年、『はぎ苑』を経営する(株)長井観光の社長に就任。英語、フランス語、イタリア語を自在に操る。
良いところに目を向けて、今いる場所を楽しむ
――以前はファッション業界でご活躍されていたそうですが、なぜ長井市に?
川西町に住んでいた義理の父が他界して母が一人になったので、一緒に住もうということになりまして…。いろいろなご縁があって、今の職に就くことになりました。
――移住に迷いはありませんでしたか?
悩むというより、決断するしかなかったですね。これまでも人生の転機は何度もありましたので、決断慣れしているところはあるかもしれません。
もともと妻の両親が住んでいたこともあり、3,4ヶ月に一度は山形に来ていたんです。お米は美味しいし、景色も素晴らしくて空気もいい。東京と違って人も少なく渋滞もないし、いいところだなと思っていました。
――実際に住んでみていかがですか?
何を不便と感じるかは人それぞれだと思いますが、私は今まで欲しいものがいつでもすぐに手に入る環境で暮らしていたこともあって、正直、不便さは感じます。都会の便利な生活に慣れきっていたので…。コンビニは交差点に4軒もありましたしね(笑)。今は、買い物は近くのヤマザワとUMEYAに行きますが、そこにないときは、山形市や米沢市まで行くので、生活圏が以前は2,3キロだったのが今は50キロぐらいに広がりました(笑)。
――山形と東京ではどちらのほうが暮らしやすいですか?
どちらがいいということはないです。それは、外国と日本を比べるのと同じで、どちらも良いところもあれば悪いところもありますから。東京にないものを山形で楽しみ、山形にないものを東京で楽しむ。そうやって、今いる場所をエンジョイすればいいと思っています。
例えばイタリアも良い国ですけど、勤労意欲は低いし、公共サービスがなくてイライラする事もたくさんあります。でも、美しい観光名所など良いところもたくさんある。だから、良い面を楽しみ、足りないところは他で補うという視点の切り替えが大事なんじゃないかな。
――山形ではどんなことを楽しんでいますか?
自宅に大きい畑があるので、野菜を作って自給自足しています。トマト、キュウリ、じゃがいも、玉ねぎ、ネギ、大根、いんげん、ズッキーニ、カボチャ…。いろいろ作ってますよ。東京にいた頃は土いじりなんてまったくしませんでしたけど。キレイなものしか触らないファッション業界にいたのでね(笑)。でも、もともと私は奥飛騨出身で、子どもの頃は山や自然の中で育ったので、土いじりはまったく苦になりません。
自分の畑にない野菜は白鷹町のドリーム農園で。あそこの野菜は新鮮で美味しいのでほぼ毎週買いに行ってます。
山形は、美味しい日本酒の蔵やワイナリーがたくさんあるのも嬉しいですね。高畠ワイナリーにはよく行きます。今、ワインソムリエの資格を取ろうと思っているところなんですよ。
――移住して苦労したことは?
近所の方と会って話しても、方言がわからないし、いまだに七割ぐらいは聞き取れません(笑)。でも、ニコニコしながら挨拶するということが大事だと思っています。それから、地域の寄り合いには必ず参加して、一緒にお酒を飲んだり…。そうすると、だんだん打ち解けていくので、そういうことは必ずやると決めています。
時間がかかることや面倒だなと思うことも、地域に馴染むためにはやったほうがいい。ときには回り道をしたほうが近道ということもありますから。田舎ではとくに何事も「急がば回れ」ですね。
コミュニケーションから生まれるチームワーク
――山形での仕事はいかがですか?
山形の人は控えめなので、打ち解けるまでに少し時間がかかりますが、みんな嘘はつかないし、優しいし、良い人たちばかりです。ただ、会社の人間関係が同じ地域の知っている人ばかりだと、言うと角が立つから言わないでおこうという風潮が強くなるんです。でも、それは良くない。何か言った人を責めるのではなく、その意見について話し合えば、良い方向に向かうこともあるわけですから。
仕事で抱えている悩みを会社の誰かに打ち明けて問題が解決できると、小さな成功体験ができる。そういう体験をすると、次から次へとみんな相談するようになります。そこからチームワークが生まれるというのが、何十年も経営に携わってきた私の考えです。
最初の頃は、会議をしても意見がなかなか出なくて…。誰かが何かを言うまで私はずっと我慢して黙っていました。上の人が話せば、みんな楽なんですよ。でもそうすると、社長が決めればいいじゃないかということになる。それでは意味がないので、私は何も言わないんです。そうすると誰かが何かひと言ボソッと言う。そこから会話になるまでまた時間がかかる(笑)。ずっと沈黙ですけど、そこも我慢。それが大事なんです。経営者の中には、自分が決断したほうが速いからと、自分でどんどん進める人もいますが、そうすると下が育たない。私はチームワークが大事だと思っているので、黙るようにしているんです。
――チームワークをよくするために心がけていることはありますか?
人は同じことを何度言っても忘れるので、大事なことは100回言い続けてくださいと言っています。大事なことは必ず合議で決め、それぞれの部署で周知徹底させます。それから月に一度、全社員を集めて意見を聞く機会も設けています。とにかくコミュニケーションが大事なので、それぞれの持ち場でこまめにミーティングをするようにしています。
はぎ苑に来て1年経ちましたが、従業員も活発に発言するようになりましたし、自発的に会議をするようになったので、それは一つの成果だと思います。
今までの経験上、ものすごくハードルが高いと感じることも、やり始めたら3年後には劇的に変わるということがわかっているので、やることを決めて着実に進めていけば目標は達成できると思っています。
(はぎ苑の社員の皆さんと)
地域・業種を超えた連携で人口減少に立ち向かう
――はぎ苑の経営だけでなく地域DMOにも関わっていると伺いましたが、長井市の課題は何でしょう?
やはり人口減、高齢化が課題ですね。長井市の人口は毎年350人減っているのですが、政府のデータによると一人あたりの消費額は年間125万円といわれていますから、年間で4億3千750万円減っていることになります。つまり地元経済がそれだけ縮小しているわけです。じゃあ、それをどうやってカバーするかといったら、外から人を呼び込むしかない。
今、長井市も観光資源を生かした人の呼び込みに注力して、観光行政に力を入れ始めています。長井市だけでやるのは大変なので、広域連携でやっていこうと、長井市、南陽市、白鷹町、飯豊町の二市二町で来年の3月に『地域連携DMO』を設立する予定で準備しています。
――新しいことをしようとしたり、何かを変えようとすると反発もあるのではないでしょうか。
地方は今、何か手を打たなければ衰退していく一方です。問題を先送りにして、若い人たちに負の遺産として残すわけにはいきません。誰かがリーダーシップをとってやらなければならないんです。外から来た人間は、多少変わったことをしても「またアイツ何かやってるよ」と思われるだけなので、あえて私がそういう役をやっています。
地域のいろいろな会合に出て「皆さん、今のままでいいんですか?」と質問すると、「良くないけど、どうしたらいいかわからない」と言う。それに対して「若い人の意見を聞いて、新しいイベントをやるという方法もありますよ」と、具体的に説明すれば納得するんです。外から来た人の意見はそう簡単に受け入れられるものではないし、反発するのは当たり前なので、そこを丁寧に説得してあげることが大切だと思いますね。
――課題解決に向けて、はぎ苑が取り組んでいることは?
はぎ苑も外からのお客様を呼び込むにあたって、いろいろと見直していかなければなりません。外国の方やハンディキャップのある方を受け入れる体制、首都圏のお客様の志向に合ったサービス、その他、館内の設備や従業員の対応など、改善すべきことは山ほどあります。
海外からのお客様への対応としては、新たな外国人スタッフを採用したり、ホームページも英語バージョンを作ったり…。今、オンラインでも予約が取れるようにシステム改修をしているところです。これからは、SNSやHPで情報を発信して個人客を呼び込むということが非常に重要になってきますので、インスタグラムやフェイスブックもどんどん活用しています。
最近、スモーキングルームを設置し、完全分煙にして吸わないお客様も気持ちよくお過ごしいただけるようにしました。
これからもっと、はぎ苑も町も変わっていくと思いますが、自分たちだけでできることには限界があるので、他のお店やいろいろな業種との連携、コラボレーションが大事になってきますね。
――社員の意識改革も必要でしょうか。
「変わらなければいけない」なんて難しいことは言いません。私は“変わる”という言葉はあまり好きじゃないんです。自分を変えるって、どうやって変えたらいいかわからないですよね? だから、“進化”や“発展”と言う言葉に置き換えています。
はぎ苑の従業員には「絶えず進化しましょう」と言い続けています。「一緒に目の前の課題を解決しましょう」と。一つ解決すると、次の課題が見えてくる。その課題をまた解決する。それを繰り返していくことで、サービスが良くなったり品質が良くなったりして、進化するわけです。進化するというのは、なにも壮大なことをやるわけではありません。今、目の前にあることを解決していくということです。
――はぎ苑の今後のビジョンを教えてください。
地方都市の小さい温泉旅館ですから、高級旅館とは違う路線で、身の丈にあったビジネスをしていきたいと考えています。
長井市唯一の温泉旅館ですので、長井を訪れる観光客の方が温泉に入ってくつろぎ、食べて美味しい、泊まって楽しかったと思っていただけるような場所でありたいですね。
また、地元のお客様だけでなく、県外や海外から訪れるお客様にもご満足いただき、リピートしていただけるような隠れた温泉宿になれればと思っています。
――鷲見社長が感じる長井市の魅力は?
全国的にはあまり知られていませんが、長井市には良いところがたくさんあるんですよ。三淵渓谷とかね。あそこに連れて行くとみんな感動して「すごい!」って言いますよね。私の友人が来たときは、その後、酒蔵に行って、それから丸大扇屋、やませ蔵美術館を案内します。そして、はぎ苑の温泉に入って泊まるというプランですね(笑)。みんなすごく満足して帰ってくれますよ。
ただ、町の中に飲食店が少ないのが残念。日帰りのお客様も楽しんでいただけるような、食事を出すお店が増えていくといいですね。
人生を楽しみながら、地域や社会へ貢献していく
――とてもイキイキとしていらっしゃいますが、人生を楽しむコツはありますか?
昔、イタリアで働いていたとき、あまり一生懸命仕事をしていないように見えるイタリアの人たちがすごく人生を楽しんでいて、あくせく働いている日本人の自分はストレスだらけで、これは、おかしいと気づいたんです。それ以来、ワークライフバランスをすごく意識するようになりました。“楽しむときは楽しむ”というオンオフの切り替えが大切。休みをきちんと取って、毎年、旅行には必ず行きます。まず私が率先して休みを取らないと、従業員も取りづらいですからね。幹部にもきちんと休みを取るように言い続けています。
(イタリア時代にピサの斜塔で)
――今後のライフプランは?
地域貢献や社会貢献は、私のビジネスライフの締めくくりとして大事な要素です。今まで仕事で携わった方からさまざまなことを教えていただき、多くの学びがありました。そのおかげで今まで成果を出してこれたので、それを若い人たちに伝えていくことが社会貢献の一つではないかと思っています。
講演を頼まれれば基本的には引き受けていますし、惜しみなくすべてを伝えます。秘密はありません(笑)。
ビジネス成功の秘訣? それは、コツコツと進化していくことです。
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