[sponsored by 長井市]
長井市へのUターンを考えているけれども、なかなか一歩踏み出せない、という人もいるでしょう。
仕事のこと、お金のこと、あるいはコミュニティーのこと。
悩むポイントは人それぞれ。
そんな人のために今回は、Uターン経験の「先輩」として、長井市にあるインターネット事業会社「日本アルカディアネットワーク(以下、Jan)」の高橋直記さん(44歳)にお話を伺いました。
今回のやまがたで働く人
高橋直記さん
「なんでも試してみないと気が済まない」という高橋さん。歩んできた道は一見破天荒ですが、都会で働きながら感じた長井への思いという点では、今現在、県外で働いている長井出身者にも共感ポイントは多いはず。プライベートでもまちづくりに関わっていらっしゃる立場からも、Uターンを検討する人たちへの「ウェルカム!!」という熱意をぶつけてくれました。
――まずは、高橋さんの経歴を教えてください。
「聞かれると思って、まとめてきました」(おもむろに1枚のレジュメを取り出す高橋さん)
――紆余曲折経てますね……。
そうっすね。ぼくの根本的な性格として、何事も自分で試してみないと気が済まないってのがありまして……。大学を卒業して銀行に入ってすぐ、「あれ、ちがうかな」と思ったんです。だから銀行を辞めた時、「東京暮らしを1回試してみたい」ってなノリで、上京することにしました。それで専門学校に通って、全く畑の違うところに就職して……。
上京後、変化していった優先順位
――実際の東京暮らしはどうでしたか?
すごく刺激的で楽しかったけど、だんだん「ちょっと違ってきたかな」という風に思い始めました。ここに一生いるのか?と考えた時、「ここじゃないかも」って思ったんです。プライオリティー(優先順位)ってだんだん変わっていくじゃないですか。東京に出て行った時のプライオリティー、あっち(東京)でしばらく暮らしてからのプライオリティー。そもそも「とりあえず東京暮らしがしてみたい」と上京したので、いつの間にか、プライオリティーが変わっていったんだと思うんです。
あるきっかけでUターンを決意。必要としていた「腹落ちのいい言葉」
――それで、Uターンを考えた、と。
うーん。なんとなくモヤモヤしている感じだったんじゃないかな。直接的なきっかけをもらったのが、おやじの脳梗塞でした。その時、改めて考えたんでしょうね。「自分って何しっだい(したい)んだっけ?」「どごで暮らしっだいんだっけ?」って。その時に割としっかり言語化して考えたことが、そのまま行動になりました。「親の病気」という大義名分をもらったというか……。きっと自分の中で「腹落ちのいい言葉」みたいなものが必要だったんでしょうね。
――なるほど。でも、すぐにUターンしたのかと思いきや、その後の「放浪期間」とは……?
今になって思えばおやじの病気は会社を辞めるきっかけというか、言い訳というか……(笑)。おやじの脳梗塞は早くに見つかったので、結局は大丈夫で、今でも元気してます。おやじも元気だし、ってことで(笑)……「今しか自由な時間ないな。今しかできないことしっだい」と。自分の中の「モード」はすでに(仕事を辞める方に)切り替わっていたので、その半年くらい後に東京の会社は辞めました。そんで、ワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。
――そして帰国、と。フリーのCGデザイナーになられたんですね。
これもまぁ、「独立」ってやつを一回やってみたい、っていう気持ちでした。でも正直、この当時はちゃんと食えていなかったですね。
ちょうどそのころ、ぼちぼち結婚を、となっていた頃だったので、食っていけないのはマズイ!と。その時、知人に誘われて、新しく会社を立ち上げないかということで加わりました。とはいえ、ゼロからのスタートアップだったので、ここでも最初の2年ぐらいは厳しくって、ほとんど看護師の奥さんに食わせてもらっているような状態でした。だから今でも奥さんには頭が上がんないっすね、人生最大の恩人です(笑)。その後、(現在働く)Janの今の上司に声をかけてもらって、地元の長井市ということもあり、転職することになりました。
「何でもやってみないと気が済まない性格なんですよね~」
山形市から毎日通勤 俯瞰して見つめる長井
――今はお住まいが山形市で、毎日長井へ車通勤されているんですよね。それにはどんな理由が?
前職の時に山形市に家を買ってしまっていたっていうのもあるんですけど、今考えれば、「長井のこと」をするのにほどよい距離感だなと思います。「中」に入っていながら、俯瞰もできる。通勤には片道1時間ほどかかりますが、行き帰りの車の中で新しい企画を思いつくこともあります。
――「中」にいながら、俯瞰して見ることができるというお話でしたが、帰ってきてみて感じる長井市とは、どんな土地でしょうか?
若い人に選ばれる要素って何なんだろう、っていうのを仮説と検証で確かめてみたいんです。言うなれば、長井は「課題先進地」。全国的に高齢化や過疎化が進む中、ちょっとひと足先に「ヤバい」状況だぞ、っていう意味でね。課題先進地に身を置いて、試す――そういうフィールドとしてはおもしろい。それがたまたま、自分が生まれた土地だったわけで、やっぱり愛着はあります。
若い人に選ばれる要素とは? 浮かんできた五つの仮説
――やっぱり、なんでも試してみないと気が済まないんですね(笑) 仮説とは?
僕が考えている仮説は
1.働きがいのある仕事
2.多様な人間関係
3.不安のない暮らし
4.ほどよい自然環境
5.その土地固有のもの
といった点。この仮説に対するアプローチとしてやってみたいことはたくさんあるんですが、持続可能性という点で、やはりビジネスとして成り立つようにしていかなければいけないな、というのも考えています。
副業と本業を組み合わせた働き方を提案したい
――ビジネスとは、どんなものを想定されているのでしょうか。
今、新規事業として、副業と本業を組み合わせた働き方を、地元で促進するためのサービスを考えています。
たとえば、東京でデザイナーとして働いているけど、土日に時間があって、「自分にできることで、地域にニーズがあれば、手伝えます」という人と、デザイン力に課題がある地元の会社を結ぶ。 あるいは、Uターンしてくる人と、「1年だけ雇用したい」という地元企業を結んで、Uターンしてくる人のとりあえずの着意点にするとか。 転職する時に、自分のやりたいことができる企業を一発で「当てる」のは、奇跡に近いと思う。
だから、とりあえずの仕事があれば、そこで働いている1年の間に、地元で本当にやりたい仕事を探すということもできます。
そういったマッチングサービスは山形でも需要があるのではないか、と。
新規事業「PARASUKU(パラスク)」の名刺イメージ
――地方で、しかも副業に特化したサービスは珍しいですね。
副業自体を提供しているサイトは増えてきているし、大手企業を中心に、副業を解禁する会社は多いけれど、地方ではまだまだ少ない。一方、キャリア戦略としてや、幸福度の向上を目的として副業やパラレルワークをやってみたいという人は増えてきているで、うまくマッチングできればと思っています。
地方企業だと、正社員で採用されると、少しずつ幅広いキャリアを身につけていく場合が多いですよね。プロ野球にたとえるなら、ドラフトでとった選手を育てていく感じ。でも、それだと打線がつながらないことも……。そんな時に、(高い専門性を持った)助っ人外国人が入ることで打線がつながる、という場合もあると思うんです。その「助っ人」の仕方や受け入れ方というのは、地方ではまだまだ試されていないのはないでしょうか。うまくマッチングできれば、地方の人口が今後少なくなっても、会社や事業を円滑に回していけるのではと。
最近はテレワークも発達してきているので、地元を離れた人たちだって、地元に関わっていくことができる。そうしているうちにUターンについて考える人も増えたらいいな……という期待もあります。
長井との接点を増やす「ながこん」 月1回 “アジト”でブレスト
――仮説検証のためのアプローチには、ほかにどんなものを考えていますか?
プライベートで取り組んでいることとしては「ながこん」があります。鎌倉で行われている、地域活性化プロジェクトの「かまこん」をモデルしつつ、もうちょっとゆるくしたものです。
長井市内の居酒屋をアジトにして月1回、例会を開いていて、「長井をアップデートする」を肴にしてブレストしながら呑んでいます(笑)。長井に住んでいる人、出身の人、その他だれでも参加できます。その周りに「リブランド部」や「インバウンド部」などの部活動(プロジェクト)が動いています。
一応ここでも、事業化は薄っすらと狙っていて、やりたいことがあって、「はい!」と手を挙げてみたら、それを手伝ってくれる人がいて……というところから、それを継続していくために、いっそビジネスとしてやっちゃおうかっていうのも、一つの選択肢になるのではないかと思います。
第1回の「ながこん」の様子=Nagacon 提供
※ながこんのfacebookページ(https://www.facebook.com/nagacon1.0/)
――この取り組みを始めたのは、どんな考えがあってのことなのでしょうか。
この土地を離れた人が帰りやすいように、多様性を受け入れる居場所(空気)をつくりたいなという気持ちがあったのと、「地元への愛着はどこから来るのか」という問いについて考えた時に、「接点と愛着は比例するのでは?」と思ったこと。
僕の地元の集落は子供の数とUターン者の数が他の地域と比べてなぜか圧倒的に多いのですが、その理由を仲間と考えた時に、このような仮説に至りました。だから、パラスクもそうですが、ながこんを通して、多様性を受容する空気を醸成しつつ、地元との接点をいくらかでも増やしていければと思っています。
――現在進行中のプロジェクトのほかにも、構想しているものはたくさんあるようですね。
まだ具体的にはなっていませんが「ちいきコンシェルジュ」みたいなものを考えています。Uターンする人って、「とりあえずこのお金でやっていけるのか?」とか「住もうとしているエリアはどんな感じですか?」とか……聞いてみたいことは人それぞれ違います。そんな時に、地元の人に気軽に質問できたらいいなと。不安を払拭するための一つの装置みたいなものになれば。
モヤモヤしている自分の気持ちを言語化、数値化してみて
――たしかに、仕事のこととか、不安なことが一つ減るだけでも安心感が違ってくるでしょうね。
結局、Uターンする時って先に心が決まるもの。ただ、行くことは決めてるんだけれど、自分自身に対する理由や腹落ちのいい言葉が必要になってきたりもする。あとパートナーに対するプレゼンも(笑)。なんとなくモヤモヤしている自分の気持ちを言語化してみたり、数値化してみたりすることって案外大事なんじゃないかと思います。でも結局は帰りたいかどうかはその人の気持ちだからね。
――納得しないままUターンしても、「帰ってこさせられた」みたいな気持ちになってしまう可能性もあるかもしれないですね。
外に出て行った人がふと故郷を振り返った時に、「OK、OK、いつでも帰って来て大丈夫よ」と、両手を広げて構えていられるような状態をつくりたいなと強く思っています。その上で、最高に青い「隣の芝生」をつくりたい。だって、楽しそうにしてたいじゃない。そんで、「そっちもいいかもな」って思ってもらえたら嬉しい。
「OK、OK、いつでも帰って来て大丈夫よ」と、懐の深き存在
つくりたい 最高に青い「隣の芝生」
――そのために、具体的に意識されていることはありますか?
ぼくの本業としては、地元の企業や自治体のウェブサイトを作るのが主な仕事なのですが、その中でもこの土地や会社にしかないというものを、情報表現として出すことは心がけています。出てった人に対しても、今住んでいる人に対してもそうだけど、「いつでも帰れる場所があるからがんばろう」という気持ちになるってあると思うんです。故郷が廃れているよりは、そこにしかない特徴があって誇らしいなぁと思えた方が、頑張れるし戻りやすいかなと。特に地元の観光サイトなんかを作るときは、「ここを出てった人が見るかもしれないな」というのはすごく意識します。「ダッセー(ださい)な」と思われるよりは、「意外とアリだな」って思ってほしいので。
高橋さんが働くJANが手がけた長井観光局のウェブサイト(http://kankou-nagai.jp/)
Uターンウェルカム! 何百万分の1から、重宝される存在に
――Uターン経験者の「先輩」として、Uターンしてみての苦労はありましたか?
Iターンだと人間関係の問題なんかがあるかもしれないけど、Uターンだとハードルは比較的低いと思います。ぼく自身はウェルカムな雰囲気で帰ってこれました。東京にいると自分の存在は何百万分の1だけど、田舎に来るとまあまあ重宝されます。1人の重みが増すというか。きっと、活躍できる場所があると思います。超~~~ウェルカムされますよ。
強いて言うならやっぱり仕事かな。でも、オレみたいな生き方しなければ、何とでもなると思うんだよなぁ(爆)。ただ、そんな無茶も、故郷に帰ってきたからできたのかなとも思います。東京であのままいたら、何も考える間もなく働いていたかもしれませんね。
逆に良かったというか、助かっているのは子育てです。うちは小さい子供が3人いるのですが、ぼくの両親と妻の両親、計6人で高速にパス回しをして育てている感じ。これが東京だったらと思うとちょっとゾッとします(笑)
――Uターンを考えている人へのアドバイスをお願いします。
僕の場合、「俺はこの仕事しかできない」「地元でも同じ仕事じゃないとだめだ」と思い込んじゃってるところがありましたが、実際に戻ってきてみると案外そうでもないんですよ。今の仕事と同じじゃないと活かせないのかといえば、そういうわけでもない。自分が本当にしたいことや心地いいことって何だっけ?と絶えずプライオリティーを整理することが、大事なんじゃないかなと思っています。
――ありがとうございました。
ライター:八木みどり(長井市出身)
高橋さんと一緒に、ゆる〜くブレストしてみませんか?
11月17日(土)、高橋さんが主催する「ながこん」を東京で東京で開催します。長井をアップデートするアイディアブレストに興味がある方、長井市に関わる面白いことに関心がある方、高橋さんに会ってみたい方、お待ちしてまーす!
Profile
高橋直記さん
長井市出身。