山形を離れているけど、故郷・山形のために何かやりたいー。
こんな思いを持っている山形出身の方は多いのではないでしょうか。実は、私もその1人です。
東京と山形を行き来して、その気持ちを体現している、朝日町出身の菅井敏之さんにお話をうかがいました。
菅井さんの山形への思いをお伝えします。
大事な人を大事にしない人生は後悔する
編集部(以下、青字)
山形と東京を行き来する生活を始めたきっかけを教えてください
菅井さん(以下、黒字)
私は長男なのですが、大学入学と同時に山形を出て来ちゃいました。
そして36歳のときに母を亡くして、父を1人暮らしにしてしまった。
自分の大事な人を大事にしないで終わる人生はきっと後悔するー。
そんな気持ちがずっとあって、50歳までにはサラリーマンを辞めて、山形と東京を往復する生活がしたいと考えていました。
そのためには、サラリーマンを辞めても生活していける経済基盤を持たなくてはならない。
当時は銀行に勤めていたので、お金に余裕のあるお客さまに会うことも多く、その方たちに共通していたのが、
不動産経営で毎月新しく入ってくるお金があるということでした。
それならばと、私もアパート経営を始めることに。
6棟のオーナーとして、年間7,000万円の収入が得られるようになったタイミングで銀行を辞めました。
48歳のときでしたね。
(菅井さんの公式サイト。現在”お金のプロ”として、数多く出版・講演されています)
東京でがんばっている若者たちの“止まり木”に
山形に移住するという選択をしなかったのはどうしてですか?
東京でやりたいこと、東京にいるからこそできることがあると思っていたので、移住はちょっと違うかなと。
東京で山形のことを紹介したり、東京にいる山形の人たちとつながったり、こっちにいなければできないことがありますよね。
それが、私が東京にいる意味だと思っています。
そういう思いから、「SUGER COFFEE(スジェール・コーヒー)」をオープンされたんですね。
はい。田園調布に2012年にカフェをオープンしました。
朝日町の方言でお客さんにお茶をすすめるときに「すじぇてけろー」と言うので、そこから「スジェール」と命名したんです。
店内には、りんごやはちみつ、みそなど、朝日町のおいしいものを紹介するコーナーを作っていたり、
毎月1回、第3火曜日に、山形にゆかりのある人たちの交流会「SUGER BAR」(https://mirailab.info/club/club_type/suger)を開いています。(編集部注:ヤマガタ未来ラボ編集部も一緒に企画をさせて頂いております)
(スジェールバーには毎月20~30人の人が集まります)
山形から東京に出てきている若者たちの“止まり木”になれたらと思っているんですよ。
都会でがむしゃらにがんばっている若者たちが、故郷を思い出してほっとする場になればいいなと。
人の幸せのシナリオを考えるのが好き
今やっていること、これからやっていきたいことを教えてください
私の使命というか、人生の3つの柱を持っています。
1つ目は、金融リテラシーを広める。
銀行員を長く勤めて感じたことですが、日本人は金融リテラシーがとても低いんです。
資産形成のことなんて、誰も教えてくれないから仕方ありません。
お金を増やす方法はいろいろありますが、みんな知らないので、何となく怖くて手を出せない。
私からしたら、本当にもったいないことです。
今も、毎日何人もお店に相談に来てくれます。
こうやって私が持っている知識をたくさんの人に伝えたいと思っています。
2つ目は、少子高齢化を食い止めるための縁談紹介。これは、独身者同士をつなぐ“世話焼きおやじ”ですね笑
また、直接的な縁談紹介ではないですが、朝日町でもアパートを経営しています。
若い夫婦をターゲットにしていて、おかげさまですぐに満室。今2棟目を計画中です。
それまで朝日町には賃貸アパートがなく、町を出て行く若者も多くいました。その一助になればと思っています。
そして3つ目は、さっきお話した、山形のために東京にいるからこそできることをやる、です。
3つともそうなんですけど、私は人の幸せのシナリオを考えるのが好きなんです。
“幸せ配達人”かな笑
自分のポテンシャルに気づいていない人って多いんですよね。
それに気づかせてあげて、どうしたら1番幸せになるか、私なりのアドバイスができたらと思っています。
人の幸せのストーリーを想像するのがとても楽しいんですよ。
山形県人の魅力「おだがいさまったなー」の気持ち
山形のために、いろいろやっている原動力はなんですか
それは、「おだがいさまったなー」の気持ちですね。
父は朝日町で建築業をやっていたんですが、誰に頼まれたわけでもないのに、町のために空気を祀(まつ)る「空気神社」を作ったり、毎日のように誰かの相談に乗っていたり、若者同士の縁談をすすめたり…。
今、私がやっていることは父が茶の間でやってたことなんですよね。
昔はみんな自営業や個人事業主で、助け合って生きていましたよね。
それぞれの得意分野や、いいところを認め合ってやっていた。
これからの時代は、またそうなっていくんだろうと思います。
それが、身の丈に合った暮らし方・生き方ではないでしょうか。
私は決して新しいことをやっているつもりはありません。
これからも、父のような“茶の間の世話焼きおやじ”をやっていきたいですね。
取材後記
ベストセラー著者と聞いて緊張して取材にうかがいましたが、菅井さんのゆったりとした優しい雰囲気に居心地がよくなり、おいしいコーヒーもいただきながらすっかり長居させていただきました。
菅井さんの手元には分厚いノートがあり、そこにはメモがびっしり。すべて菅井さんに相談をされている方たちの情報とのことでした。1人1人の幸せをじっくり、そして楽しみながら考えていらっしゃるのだろうなと感じました。
私の“幸せのシナリオ“も考えていただき、そのお話をされているときは本当に楽しそうにされていて、自分のことではないのに、あんなにうれしそうに話していただいて、私もその未来を想像してとてもわくわくしました。
早速、そのシナリオに沿ってアクションを始めました!
菅井さんにお会いしたい方、山形のために何かやりたいという思いをお持ちの方、ぜひ毎月第3火曜日の「SUGER BAR」にご参加ください。
※詳細はこちら https://mirailab.info/club/club_type/suger
Profile
菅井敏之(すがい・としゆき)さん
1960年、山形県朝日町生まれ。83年、学習院大卒業後、三井銀行(現・三井住友銀行)に入行。個人・法人取引、およびプロジェクトファイナンスを担当した。48歳のときに銀行を退職。その後、起業してアパート経営に力を入れる。2012年には、東京・田園調布にカフェ「SUGER COFFEE(スジェール・コーヒー)」をオープン。著書『お金が貯まるのは、どっち⁉』は45万部のベストセラー。