転職、結婚、子育て…。人生のいろいろな変化の中で、皆さんはどこを「住む場所」、「働く場所」として選びたいですか?人生の多くの時間を過ごす場所は、自分自身の価値観や人間形成に大きな影響を与えるものです。

自分は今後どこで、どんな風に生きていくべきなのか?
地元に帰るべきか、都会で生活するべきか迷っている…。
地方に関わりたいけど、移住までは考えられない…。

そんな悩める方たちへのヒントにしていただくべく、今回は、厚生労働省主催の地方就職の取り組みである「LO活」の仕掛け人・伊藤悠さん、「ヤマガタ未来Lab.」山形にUr-turnしよう!編集長・田中麻衣子の対談を、3記事に分けてご紹介。

東京に住みながら、地方と東京をつなぐ”仕掛け人”たちは、いったいどんな理由で地方と関わっているのでしょうか。地方・東京どちらも知っている仕掛け人たちが考える「地方移住」とは?

前編はこちら>>>地方と東京をつなぐ仕掛け人対談【前編】「地元」と「アイデンティティー」の関係からひも解く、地方との関わり方(https://mirailab.info/column/17471)

 

 

目次(この記事を読むのにかかる時間:8分)

  • 価値観が動く時が移住の時!?なりたい自分になるための手段として移住を考える
  • 地方で働くことで自分の価値が上がる!自分を認めてもらえる場所が見つかる!

 

対談メンバーのプロフィール

ito伊藤悠さん:長野県出身。新卒で人材サービスの株式会社インテリジェンス(旧社名:現パーソルキャリア株式会社)に入社。その後、地方で事業づくりや復興支援など複数の経験を積み、約2年前にパーソルキャリア株式会社に再入社。現在は厚生労働省から委託されている地方人材還流促進事業(通称「LO活プロジェクト」)の仕掛け人として活躍。

 

tanaka

田中麻衣子:山形県出身。大学卒業後、地元企業で社会人を経験し、その後上京。東京でも会社員として働いたのち、ヤマガタ未来Lab.を立ち上げる。現在は、株式会社キャリアクリエイトに所属し、山形へのUIターン転職の支援なども手掛ける。

 

LO活プロジェクト(地方人材還流促進事業)

スクリーンショット 2017-12-25 12.46.53

LO活とは、地方就職を考える若年層に向けて、地方就職に役立つ情報を提供する厚生労働省のプロジェクト。全国46の自治体(道府県)・211の大学との連携により、どこよりも詳しい地方就職に関する情報を掲載している。(WEBサイトはこちら

 

価値観が動く時が移住の時!?なりたい自分になるための手段として移住を考える

ライター:これまで地方に関わる活動をずっとやってこられて、見えてくるものはありますか?

 

伊藤悠さん(以下、伊藤)人が移住人するということは、これまでもお話ししてきたように、セルフイメージなど、とても個人的なところとつながっていると思います。

 

生活費の比較や地方移住することのメリットを訴える情報は巷に溢れています。そういった表面上のデータは、人が移住する理由の一つにはなると思っています。ただ、決め手にはならないと思う。もっと人間のリアリティーに迫った活動をやらなければ移住促進みたいなことはできないと思います。

 

人って、全然自分と縁のない地域に行って、誰かと話したことをきっかけに、ぽっと移住したりするじゃないですか。移住ってそういうものなんだろうなと思います。

 

ライター:これまで私が取材させていただいた方などを見ても感じますし、私自身も感じるのですが、今まで自分の中で築かれてきた概念・価値観を破る人を見ると、土地関係なく、もっとその世界を知りたいなと思ったりします。

 

伊藤:そうですよね。だから、例えば、価値観が変わるくらいの衝撃を与えてくれる人がシリコンバレーにいたらシリコンバレーに行くし、日本のどこかの地方にいたら地方に行くのかもしれません。自分がどんな人間になりたいのか、自分がどんな集団の一員になりたいのか。その対象が、地方にいたら地方に行くっていうことなのかなと思います。

 

田中麻衣子 ヤマガタ未来ラボ編集長(以下、田中):世間一般が思う「地方」の概念が一様だから、本当にそこに行って「なりたい自分」に近づけるのかが本人はわからないから迷うんだと思います。私も「なりたい自分」になれなかった経験を経て田舎から出てきたけど、地元でこれまでのコミュニティ(家族・地域・高校までの友達)以外の人に出会って、『こんな人たちが地元にいるのなら楽しそう』『自分もなりたい自分になれるかも』と思えたから、『地元に戻るのもアリだな』と思えるようになった経験があります。

 

伊藤:僕ができる一つの活動として、いかにコップがあふれかけている人(都会でやりたいことなどがもう満たされていて、地方に目を向けるようになっている人。前編参照)と「地方」とつないでいくのかだと思っています。機会の提供をしていきたい。

 

そもそも、どうしても暮らす場所は「都市」、または「地方」でないとダメだという人は、案外少ないのではないかと思っています。例えば、都市部で通勤の満員電車が嫌だ、と思っている人は多数いるでしょうが、ほとんどの人はそれで移住を決行することはなく都市で暮らし続けます。全体の8割くらいの人は、都市・地方、どっちに住んでも平気なのではないかなと思います。

 

僕は、都市と地方をつなぐ仕事を通して、人を無理に地方に移住させよう、と思っているわけではないんです。ただ、機会を提供することで、その人にとって最良の選択をしてもらいたいと考えています。

 

田中:私も全く一緒です。

 

伊藤:僕が地方に関わり続けている背景として、企業の人手不足に対する危機感が強くあります。全ての企業が残れる訳ではもちろんありませんが、人のことを考えて経営している企業が大きくなってくれたら、社会全体がもっと幸せになると思うんです。でも、そういう企業がどこにあるか、一般の人にはなかなかわからないと思うので、そういう企業を見出して知らせていくことで、その企業が大きくなっていく支援が出来たらいいなと思っています。

 

田中:私も企業の採用支援を行う仕事を通して、地方の人材不足を日々感じています。でも、人を大切にしていない会社のことは、正直あまりお手伝いしたくありません。それに、そうゆう会社は遅かれ早かれ働き手から選ばれなくなっていくでしょう。だから、地方の人不足を無理やり全部を解決しようとするのではなく、働く人にとって良い会社のサポートを精一杯やることが、今やるべきことかなと思っています。

 

伊藤今はまだ「都市」がもてはやされている傾向があると思いますが、僕はいずれ、価値観が逆転する時期が来るのではないかと考えています。大体、20年後くらいかな…。

 

というのは、今後、圧倒的に水や食料が貴重になる時代が来るからです。中国の内陸部など、すでに荒廃して使えなくなってしまっている土地もたくさんありますし、アメリカの土地も地下水を大量にくみ上げていることから、不安視しています。人口が100億人に到達する頃には、危機的な状況になるかもしれません。

 

その時代が来たら、現在打ち捨てられている地方の土地の価値は急に上がると思います。一方で、人が生活するためにコミュニティは必要なので、地方の土地が荒廃していたらコミュニティを形成できなくなってしまうかもしれません。

 

国全体を見れば、東京など都市ではもう生きられない。」となった時に、地方にコミュニティがあって耕作地も残っている状態を維持しておかなければならないと思っています。

 

田中:その話はとても合理的でしっくりきました。長期的な視野に立つと、地方が大切な場所であるということが改めて感じられます。

地方に住むかどうか、ということではなく、自分が大切にしていきたいと思っている場所をなくしたくないという気持ちがあるなら、何か行動してみる意義はあると思いますね。

行動の内容は、人それぞれで選択できるといいですよね。高い視座で物事を見た時に、大きな流れの中で、自分はどうやって生きていくのかということを考えるきっかけになると思います。

 

 

地方で働くことで自分の価値が上がる!自分を認めてもらえる場所が見つかる!自分を変えたい人へ地方移住のススメ

伊藤:僕は、「ここで自分の力を最大限発揮できる」と思ったら移住すると思います。現時点では、同じ時間当たりで僕の力を活かせるのが東京だと思っています。

 

田中:そうですね。私も転職のご相談などを受けていて感じますが、お金・収入は一つの結果であって、「自分の能力を最大限活かしたい」と思っている方が多いと思います。

 

ライター:意外と、「自分の力」ってそもそも何なのか、どこで活かせるのかはわからない人の方が多いと思います。だから、伊藤さんのように自分の力を活かせる場所がわかっている人は、とても幸せだと思います。

 

田中:確かにそうですね。自分には何ができるのか、何をやりたいのか、どこでできるのか、なかなかわからないですよね。

 

伊藤:自分もまさに20代の時には、そのことで悩んでいて、どこで自分の力を発揮できるんだろうと考えていました。せっかく与えられた人生なのだから何かやり遂げたいと思っていましたね。

振り返ると、自分の価値に気付いたきっかけは、地方で仕事をした経験でした。

都市で一万人のうちの一人・千人のうちの一人、の状態ではわからなかったのですが、地方に行くと自分一人の価値が上がります。

会議で使う文書が作れるとか、会社で当たり前にやっていたようなことが重宝されたりします。

僕は、人の話をまとめられるスキルが強みだと地方に行って初めて自覚できました。経営コンサルタントのようなスキルがある訳ではありませんが、きちんと話を聞いてまとめて物事を進めていくようなことがすごく役立ったりした経験は多かったです。

 

自信がない、自分の力をもっと活かしたいなどの理由で、20代・30代でもやもやしている方がいたら、とにかく一回地方に行ってみると良いと思います。

見える世界が変わります。

 

写真:対談中の田中さん

田中:ただ、『仕事が分業されている大企業で、業務の一部しかやって来ていない人』や『仕事に対して受け身な人』は、仕事探しや入社してから苦労するかもしれません。

なぜならば、地方にある企業は、ほぼ中小企業。中小企業の社員は、一人の人間がこなす仕事が幅広く、複数の仕事を兼務していたりします。「なんでもやる」というマインドセットが求められるし、本当になんでもやることが多いので、これまでの仕事のやり方・スタンスから脱することが出来ないと、つまづく可能性があります。

 

でも、それを乗り越え、仕事を任せられて、新しいこともできるようになっていくとどんどん自信がつきます。

人不足だから、重宝されるし、結果を出せば出世だって可能です。

 

確かに、悩んでいる方には、一回地方に行ってみて!って思いますね。

 

伊藤:相対的価値は絶対に上がりますよね。

 

しかも、自分の価値が自覚できるということには、思った以上の効果があります。周りに若い人がいないから重宝されているだけかなと思っていたのですが、東京に戻ってきてからも、以前東京で働いていた時よりずっと仕事が評価されるようになったんです。

 

ちょっと自分の経験をもとにこんなことをいうのは恥ずかしいですが笑。

 

僕、20代の頃本当にできないダメ社員だったんです。新卒で働いていた時、初年度営業成績は同期で最下位でした。

夢は壮大で大きなことばかり考えているのですが、実力が全然追いつかなかったです。

 

それなのに、東北に行って、被災地で揉まれて東京に帰ってきたら、「やりたい」と思った仕事が出来る自分になっていました。例えば、僕が地方でやっていたことと言えば、被災地の仮設住宅を回って、ワークショップのチラシを配ったりするような、泥臭い仕事ばかりだったのですが、その時の経験を通して能力が高まったし、周囲からも評価してもらえるようになったのは事実だと思います。

 

田中:私も東京の会社で営業職やってた時、必ずしも成果が高い方ではなかったです。自信がなくて素で勝負できなくて、お客様の前だと緊張しちゃってました。素だとみんなを巻き込んでいける性格ではあったので、「お酒を飲んで営業したほうがいいんじゃない?笑」と冗談で言われることもありましたね笑。

 

地方と関わるようになって、経験がないことを手探りでとにかくやっていたら、出来ることがどんどん増えました。そう考えると、都会でなかなか成果が出せなくて迷っている人は、地方で仕事をどんどん任されることで、自分の価値を大幅に上げられる可能性があるのかもしれませんね。

 

もちろん、仕事内容の希望はあると思いますけど、あまりこだわり過ぎず、直感を信じていろんなところに出かけて行って、感覚を磨いていく。価値観の合う人を見つけて、飛び込んでみると自分に合った人や仕事や環境は見つけやすくなります。

 

伊藤:東京のベンチャーでも、一人で複数の仕事をやって価値を高めることはできると思うんですが、そういう企業はものすごく優秀な方がゴロゴロいて、自分にチャンスが回ってくるとは限らないんですよね笑。その点、他に若手が少ない会社で働くと「お前しかいない」って言ってもらえる。

 

田中:替えがきかない人材として認めてもらえる場所ですよね。

 

伊藤:そうです。自分が会社へ与える影響も大きいですし、自分がいなかったら物事が進みません。東京の大企業だと、自分がいなくてもいくらでも会社は回ると思います。

 

田中:私も「替えの効く歯車感」が無くなったなと思いますね。言葉にすると陳腐だけど。「山形という社会を担っている」と実感できるようになったかもしれません。社会を、友達や親との関係を捉えるように自分ごととして考えられるようになったし、自分の仕事が、身近な友達や親との関係にも影響を与えられる仕事だと実感しています。

 

伊藤自信を持つためには、「信頼の貯金」が必要だと思います。人から「お前は頼りになる」って思われている状態が、チャリンチャリンと貯まっていく感覚です。その貯金が一回満たされないと、自信を持って仕事をすることができない。

 

今の仕事で、地方でやったことがダイレクトに活かされているかというと、そうではないと思う。でも、圧倒的に自信がつきました。地方で貯めた信頼貯金を持って東京に戻ってきたら、昔自分が見上げてたような人たちと、対等に話せるような実力・自信がついて、緊張がとれました。

 

さっき、田中さんから、「素が出せないと、なかなか成果を出せない」って話がありましたが、今なら、僕は以前できなかった営業をやっても、成果を出せるのではないかという自信があります。

 

別に正攻法で成果が出なかったとしても、自分なりにいろんな方法を考えて、やり遂げることが出来ると思います。地方でそれをやってきたからです。そういう、生きていく上での図太さや自信が、地方での経験を通して圧倒的に身についたと思います。

 

その自信が、また周囲の人からの信頼に変わっていくんです。その信頼が雪だるま式に増えていって、大きな仕事が出来るようになったのだと思います。

今の仕事でも途中からプロジェクトに参加しましたが、すぐに裁量を持たせてもらいました。

 

そうなってくると、仕事はどんどん楽しくなります。僕はこの結果を期待して地方に行ったわけではないのですが、全然自信がなかった僕が、地方での仕事を経験して戻ってきたら、全然違う人生が待っていました。

 

移住する・しないとか、給与はいくらとか、そういう枝葉のことを見てしまいがちですが、それより、そもそも自分が求めているものや自分ができることは何かということを、じっくり考える経験が必要だと思います。何かを変えたい人は、移住という選択肢もあるのかもしれませんね。少なくとも、自分の価値を高めたいのであれば、MBAなどよりも地方で経験を積んでみたら?と思いますよね。

 

******

東京で山形との関わり方を考えてみるイベント「ヤマガタユアターンサミット」

25434401_1625339654192307_918230489_o

「今」の山形に出会えるイベントを、1月27日(土)に開催します。

ヤマガタユアターンサミットでは、「山形では今、どんなことが起きているのか」山形の今・チャレンジを知ることが出来ます。

ゲストは、山形のチャレンジャー達。山形にも希望があるんだなって、きっと希望が湧いてきます。

頭の片隅に「山形」「地方」とかのキーワードがよぎるなら、みんなでガヤガヤ話しませんか?

山形からやって来たゲストや参加者同士でも話すことで、「自分はどうだろう」と、自分の心を少し客観視できたりします。

今、必要に迫られて決断するような出来事はなくとも、「未来はわからないけど、何か動いてみる」てことを今しておくと、心の準備とか人脈とか人生の備えであるとか、とにかく人生にプラスになるはず。

「話す」のは、その第一歩。

小さな一歩が大きな一歩です。

ヤマガタユアターンサミット2018
  • 日時:2018年1月27日(土)13:00〜18:00
  • 会場:fabbit大手町(東京都千代田区大手町 2-6-1 朝日生命大手町ビル3F)
  • 主催:株式会社キャリアクリエイト
  • 共催:経済産業省 東北経済産業局
  • 後援:米沢商工会議所
  • 詳細、参加お申し込みはこちらまで。

 

編はこちら>>地方と東京をつなぐ仕掛け人対談【後編】ご機嫌な状態の自分でいたいのであれば、自分と向き合ってみるのが面倒だけど大切

記事をシェア