こんにちは。ヤマガタ未来ラボ編集部です。

こちらの「山形の「攻めの会社」教えます」のコーナーでは、山形で働くことに関わるビジネスパーソンの皆さんに向けて、魅力的な山形の企業の姿を紹介しています。

今回、編集部が訪れたのは庄内は三川町に本社を置く『株式会社 三洋』さん。

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株式会社 三洋は、ビニールハウス・パイプハウスなどの農業資材や包装資材、また、コンビニエンスストアなどの陸運に使われる保冷ボックスをはじめとする物流資材などの製造メーカー。

戦後まもない東京五輪が開催された昭和39年に、現会長が食品包装用のポリ袋を生産する事業を始めたのがその始まり。

昭和43年に法人を設立し、ISEKIさんやYANMARさんなど、当時特許技術を取得したコンバインに合わせた袋を製造し、農機具メーカーとタッグを組むかたちで事業を大きくしてきました。

その後、次々と遮光シートなどの農業用資材や、クロスコンテナや通い袋などのクロス袋類、建築養生などのシート類、PSPトレーなどの包装資材、保冷ボックスなどの物流資材などにも着手。

これまで手がけた営業品目は1万点を超えるほど、さまざまな商品を開発・販売してきたといいます。

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(今もなお現役で稼働する製袋機。同社の歴史はこの一台とともにはじまりました)

現在では従業員数約80人。年間売上高は約30億を誇り、山形、また東京に営業所を持つ企業となっています。

初めて同社に訪問した際、社長がスタッフの皆さんを信頼して任せている片鱗を感じ、これはきっと何かあるに違いないと感じ、改めて、詳しくお話を伺う時間を頂きました。

”気付き”コンテンストで、業績伸びてます

現在、同社を率いるのが、創業者である父親の後を継ぎ10年前に社長となった石田伸社長。

社長として会社経営を行う一方で、自ら率先して日本全国をトップセールスで駆け回り、かつ、何よりもお客様第一主義を貫く人物でもあります。

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編集部:代替わりしてから10年、業績が伸びていると伺いました。その秘訣は?

石田さん(以下石田):数年前から、“気づき”を養う訓練としての環境整備に取り組み始めました。

社員には、営業時間内に行われる日々の掃除を行うなかで、どうやったらより整うか、綺麗になるのかを考えてもらっています。

例えば、机の上は拭くけれど、机の裏側は見たことありますか?

ここも掃除すれば、より綺麗になるなとハッとするでしょう。

事務所や工場の蛍光灯も同じメーカーで揃え、同じ向きでキレイに並んで置けば、どれが古くて切れそうかがわかりやすい。

私にとって環境整備とは、そういった気づきの感度を磨いてもらうためのものなのです。

環境整備にはじまった気づきの訓練は、各部門の業務改善へと移行され、それぞれがチームとなって気づきを集めています。

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編集部:環境整備は、多くの企業が取り組んでいると思いますが、その“気づき”を養う訓練としての環境整備が、業績と繋がっていますか?

石田:はい、繋がっていますね。

気付き自体も大切ですが、それで終わってはもったいない。

その「気付き」を、自分ごととして主体的に取り組むための仕組みとして、「コンテスト」があります。

 

編集部:「コンテスト」ですか。

はい、業務改善の気づきを提案するコンテンストを実施しており、提案が採用されると賞金付きで表彰されます。

はじめは賞金目当てに頑張る人もいるでしょう。

でも、続けるうちに本来の気づきの大切さを理解してくれます。

 

日々の環境整備やコンテストを続けることで、生産現場では、生産効率がかなり上がったことがあります。

営業の現場でも、お客様の真のニーズに気づくようになり、取引が成立する確度が上がって来ました。

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石田:普段の環境整備で、その感度を養う。

一番身近で一番大事な学習です。

効率を求めることだけが目的ではありませんが、続けることが大事ですし、今後も頑張りすぎない程度に環境整備をしていきたいですね。

編集部:結果的に、社員全員「お客様のためには?」を凄い感度で思考していることになる。全員営業体制にも繋がっていくということですね。

 

 

コンテストに、累計1500ケの業務改善の提案が集まった

業務改善の気づきを提案するコンテンストを担当する部門は総務部。

部長は女性の高橋美葉里さんです。

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編集部:女性が部長。山形という地域では、とても先進性を感じます。

高橋:最初に部長職に指名されたときは、一度断ってしまいましたが、現在はお陰様で楽しくやっています。

子育てや家の事情で一度は退社を決意した時もありましたが、『パートでもいいから続ければいいじゃん』って社長から言われて、その『いいじゃん』って言葉にすごく助けられたんですよ。

年齢や性別に関係なく、モチベーションが高く仕事に打ち込む人にはチャンスがある会社ではないでしょうか。

営業部のリーダーなどの役職は、立候補制を取っています。

お給料とともに責任もついてきますが、やりがいって意味では楽しい会社と言えるのではと思います。

編集部:石田社長から伺った「気付きを養う訓練としての環境整備」は、前例主義・習慣に流されない「感度を磨く・本質を見抜く」という訓練ですね。コンテストは盛り上がりますか?

毎月実施しているコンテストでは、多い時では1回あたり50ケの提案が集まります。

毎回採用される数は様々ですが、3〜5ケ程度の提案が採用され、提案者には賞金が支給されます。

最も多く提案した人や、最も優れた提案した人には更にボーナスが追加されます。

多い人は、その時のボーナスが1.X倍になったなんて人もいますよ。

金額では表せないような内容の改善もありますが、コンテストを始めて3年目での累計で300万円くらいの効果が出ているとと思います。

 

編集部:毎月実施することで、目に見える数字として成果が出るのはもちろん、”主体的に動く風土”も醸成されますよね。

 

 

 

目先の売上よりも、社員の教育

製造課課長 斎藤憲和さんにもお話を伺ったところ、教育を大切にしているエピソードが。

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斎藤さん:パイプハウスや保冷ボックスなど、弊社の商品の素材は、強くて、硬くて、重いもので構成されるものが多いです。

中には体全体を使わなければ、扱えないものもあって、生産現場は、肉体的には結構過酷です。

繁忙期は、いかにラインを効率よく動かすかが至上命題です。

その忙しい繁忙期でも、2〜3時間ラインを止めて、研修を受けたりするんですよ。

 

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(工場内では女性社員が多数活躍しています)

編集部:目の前の売上よりも研修を大切にしているのですね。
会社の内側に向かって、教育(感性磨き)という手段で徹底的に攻めていることが、ひいては、対外的な差別化に繋がっている印象です。

 

 

自社工場を持っていることが大きな強み

商品の設計から裁断や縫製、施工まで、そのすべてを自社工場内で一貫して行う三洋は、農業用パイプハウス、鉄骨ハウスの建設実績は庄内エリアでトップクラス。

雪国ならではな雪害へのノウハウや耐久性で、地元はもちろん他県での販路を拡大し続けています。

 

「この仕事をする上では、自社工場を持っていることが大きな強みとなっています。」

そう話すのは、高校卒業とともに入社し、以来ずっと営業畑でキャリアを積んできた伊藤さん。

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伊藤さん(以下伊藤):仕事は、JAさん、農家さんを相手に、パイプハウスなど農業資材を販売しています。

農業は自然相手の仕事ですから、予想外のタイミングでお仕事を受注する場合があります。

天候が良く、順風満帆に事業を進めている時ではなく、不慮の災害でパイプハウスが壊れてしまった時など、お客様がピンチになった時こそが地元で身近な当社の出番なんです。

速く、安く、きめ細かにお客様のピンチに寄り添うことこそが大事です。

 

そんなときは、自社工場の製造課にお願いして納期をできるだけ短縮してもらっています。

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伊藤:だから自信を持って応えられるのですよ、突然のオーダーにも“はいっ大丈夫です”と。

もし、工場がなかったら、発注から入荷までのタイムラグが長く、商売はなりたたないでしょう。

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編集部:『明日までに試作を』など緊急の求めにも対応じ、ときには“電話1本で、畑まで商品を届ける”というサービスも展開しているそうですね。

伊藤:対応するのは楽でないときもあります。

でも、仕事をすればするほど、お客様と仲良くさせていただけるようになる。

だから、楽とか苦ではなくて、お困りなことがあるならなんとかしたい! という気持ちになるんです。

お客様からのオーダーは、どんなものでも決して断らない。

何かあればお客様の元へと飛んでいき、社員の皆で知恵を出し合って問題解決のための努力をする。

それが、弊社の基本姿勢です。

 

 

今後は世界相手に仕事をしたい

石田:来たるべき食糧危機に打ち勝つには、日本の農業技術が必要です。

農家さんとともに、いつか世界を救うべく、海外を目指したいですね。

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取材後記

とても小さな“気づきの訓練”と、仕事を自分ごととして主体的に取り組めるような仕掛け。

初めて訪問した時に感じた「社長がスタッフの皆さんを信頼して任せている雰囲気」は、こうした工夫があるからなのだと合点が行きました。

 

これから日本は、ただでさえ人口減少が進み市場が縮小していきます。

そんな時代を乗り切るためには、きっと新しいアイデア=気づきが必要です。

 

※この記事は、平成29年度「東北地域中小企業・小規模事業者人材確保・定着支援等事業」として作成しました。

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