こんにちは。スマイルトレーナー®の山田貴子です。雪の降らない瀬戸内海沿岸から山形に嫁いできて13回目の冬を迎えておりますが、雪道での運転には、未だに緊張感が漂います。

山形に嫁いで来て孤独を抱えていた過去の経験から(参照:ずっと地元・UIターン・転勤族・…いろんなママが混ざり合えば、より豊かに育児を楽しむ環境づくりができる!https://mirailab.info/column/10213)、同じく県外から山形にやってくることに不安を抱えている女性や現在進行形で不安を抱えている女性に、その不安を解消してもらいたくて、こちらでコラムを書かせていただいています。

山形での暮らしに対する不安や悩みは、なかなか人に相談しづらいものです。でも、県外から嫁ぎ、同じような葛藤を経てきた女性になら、安心してその胸の内を話したり、素直にアドバイスを聞き入れたりすることが出来ますよね。そして、自分が興味を持っていることや、自分らしくいられる習い事などを見つけ、心地よいと感じられる環境に身を置くことで孤独やストレスを軽減させることができます(参照:県外からやってきた女性たちの「春のストレス」とその対策 https://mirailab.info/column/10616)。

 

こちらでは、同じく山形県外からやって来て、リラクゼーションサロンやお教室等を起業している女性達をご紹介していきたいと思います。

 

 

今回のやまがたで働く人

木村聡美さん(フラワーアーティスト、華道家元池坊脇教授、花育アドバイザー、AtelierMomo(アトリエモモ)主宰)

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茨城県出身の聡美さん。

日本画家を志し、東北芸術工科大学(以下:芸工大)/日本画コースへ入学。

2010年に卒業し、生花店に就職。2011年に独立、山形市内で花アトリエ【AtelierMomo(アトリエモモ 以下:Momo)】を主宰。2013年、山形生まれ山形育ちのご主人と結婚。現在に至ります。

 

 

 

日本画家を志して、山形へ

「日本画家になりたくて、東京の美術大学を志望して2浪したんです。

失礼な話ですけど、山形に来ることが決まったときには、正直落ち込みました。あんなに頑張ったのに志望大学に合格しなくて、まるで“あなたは出来が悪いから”って言われたような気持ちになってたんですね。

だけど、入学して出逢った同期は、ハングリー精神がすごかった。“東京の大学のやつらになんか絶対負けねぇから!”っていう。 yamada2

山形に居るからコンクールで評価されない訳じゃないし。人のせいにしたり、環境や社会や時代のせいにしたりする人を、すごくカッコ悪いと思うようになってたから、山形に来たことを後悔したことはなかったかな。」

 

「日本画家になるつもりでいたから、大学院に進みたくて。でも、ずっと親に学費を出してもらうわけにもいかないから、進学費用を貯めるために就職しました。

アルバイトしていた生花店に“2年間だけ働かせてください”ってお願いして。

そして、大学を卒業してアートの現場から離れちゃうのが嫌だなって思ったから、芸工大関係者が入居してたシェアハウス【ミサワクラス】に住みはじめました。

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キッチンの一角が【三角コーナー】っていうギャラリーになってて、絵画・建築・デザイン…いろんな分野の住人達が、定期的に作品展示をしたりして。それぞれに仕事を終えて帰宅してから、キッチンに集まって、夜遅くまでいろんな話をしました。とても楽しくて刺激的だったな。」

 

気持ちを伝えるツールが、“絵”から“花”へと変わった

「ちっちゃい頃から人見知りで、人と話すのも苦手だし、人の目を見て話せない子だったんですね。小学校の休憩時間には、花壇のおしろい花の種を摘んでるような子だったので。

私にとって絵を描くことは、自分の気持ちを伝えるための手段だったんです。私のおばあちゃんがいつも絵を褒めてくれて、それが嬉しくてずっと絵を描いていました。」

そんな、絵を描くのが好きだった少女時代の木村さんは、 中学時代から本格的に華道を習い始め、指導者資格も持っているほどの腕前。大学在学中&卒業後にアルバイトしていた生花店での勤務経験を経て、絵画制作以上の喜びと自己表現の奥深さを“お花”の中に見出しました。

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「大学卒業後、生花店でアルバイトしていているうちに、自分の作品を作る活動に専念したくなり、“働いてる場合じゃない”って思って、就職した生花店を1年で辞め、シェアハウスの自室でMomoを始めました。そのときは、“花は、売れたらイイな”くらいで、経営とか何も考えていなくて、簡単に稼げるだろうと思ってました。

 

だけど、独立してすぐはお客様も少なかったから、アルバイトが中心の生活になりました。そんなとき、シェアハウスの仲間がいてくれたのは、本当に有難かったです。」

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Momoでは、生け花個人レッスンや花育ワークショップ、完全オーダーメイドのフラワーギフト制作、ブライダル装飾、オフィス等の活け込み、イベント・メディア等のスタイリング、また異業種の仲間とコラボしたユニット活動等、花・植物をコミュニケーションツールとして人と人を繋ぐ幅広い活動を店舗を持たない自由なスタイルで行っています。

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「数年前は、こだわって独自の肩書を作ろうかなって考えたりもしましたけど、今は、言葉じゃないし、何でもいいかなって思ってます。私を見た人が、“お花屋さん”って思うなら、私はお花屋さん。お花の先生でもいいし、フラワーアーティストって感じたなら、そのままに。それぞれのカテゴリーで多様に表現するお花との関わり方を、それぞれに受け取ってもらえたら嬉しいです。

Momoを始めて2~3年のうちは、“私、ほんとは絵を描きたいのにな…”っていう葛藤もあったかな。

だけど今は、お花っていう絵以外の手段でも、大切な人を喜ばせることが出来るんだって分かったから、全く絵を描いていないけど、苦しくないんです。」

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「絵を描いていた学生のときは、“私、こんな面白いことしてるよ!見てよ!何でわかってくれないの!?”って、自分を主張することに必死だった。強気に我を通す感じだったけど、それをずっとやってきたら辛くなってきて。

 

今は自己表現というよりは、“花を通して、何かを受け取ってくれたら嬉しいな”っていうソフトな感じになりました。

“私の意見は、○○!”って押し付けるものじゃなくて、“私は、こう思ってますよ。あなたは、そう思うんですね。”っていうコミュニケーションみたいな感じで、お花と、その目の前の人と向き合ってます。」

 

 

花農家とフラワーアーティストによるパフォーマンスユニット【floRe:(ふらり)

「制作に集中するためにアトリエとして独立したけど、きっとそれだけだと辛くなってしまってたかなって思うんですね。」

と、マルシェに出店したり、多様な価値観を持ったいくつかのコミュニティーに属して、バランスを取っているという木村さん。【floRe:】というユニットで、イベントなども行っています。

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「【floRe:】は、お花離れの進んでいる若い人達に、お花をもっとカッコよく魅せよう!っていう趣旨で、バーを借り切ってイベントを開催したり、ハロウィンや桜フェスなど季節に合わせたお花を魅せるイベントを開催しています。

花農家2人と私ともう1人のフラワーアーティストの4人で始めましたが、そこからどんどんメンバーが増えて、今は11人で活動してます(https://www.facebook.com/floRe.yamagata/)。」

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独立直後に、東日本大震災があって。当時住んでいたシェアハウスのメンバーと何かできることはないかとよく話し合ってました。

“津波で塩分濃度が高くなってしまった土壌に花を植えるには?”という話題になったときに、たまたまTwitterで繋がっていたユリ農家の方に電話をして相談したんです。その後、東京で開催されたお花関係者の交流会で、初めてその方と直接お会いして“山形でも何かやりましょう”って話したのが【floRe:】を始めるキッカケでした。

 

 

人の心に残る仕事をしていきたい

「仙台で開催されたマルシェで【花育ワークショップ】をさせてもらったことがあったんですね。そのときに参加してくれた姉妹とお母さんとの会話が、忘れられません。

“どこに飾るの?”って聞いたら、“パパが津波で死んじゃったからお仏壇のところにあげるんだ。いつもはママがやってるけど、今日は私が活けたお花を置くんだ”って明るく返事が返ってきて。お花にはいろんな使い方があるんだって、再認識した瞬間でした。

そのやり取りは、ずっと忘れられないなと思います。」

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「アトリエだけをやっていたら、自分の作品を好きになってくれた人達とだけの関わりになってしまうけど。マルシェに出店して、私を知らない人のところにポンッと行くと、リアルな声が聴こえてきます。

 

フラワーギフトやブライダルなど、量だけこなしてると慣れてきちゃう。だけど、相手の人が、どういう気持ちでお花と触れ合っているのか、忘れちゃいけないなって。

 

例えば、ブライダルフラワーは一度に大量のアレンジメントを作るから、流れ作業のようになってしまいがちだけど、新郎新婦の顔を思い浮かべられないような仕事はしたくないんです。どんな結婚式にしたいのかイメージをよく聞いて、なるべく季節の花を取り入れるようにして。“桜がキレイな時期だったね”って、成長したお子さん達と一緒に写真を見返して思い出してもらえたら嬉しいな。

 

“そんなの、イチイチ心で感じてたらやっていけないでしょ?”って言われることもあります。

だけど、たとえ商売として下手だとしても、ちゃんと心に残る仕事をしたいなって、大切にしている想いです。」

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家庭、子どものこと、これからの働き方

「今は、主人と二人暮らしだから、家庭のウエイトはちっちゃいかもしれません。

仕事に集中しちゃうと家事がおろそかになっちゃうタイプなので、それも理解してくれてます。

 

結婚したばかりの頃は、晩ご飯が出来上がるのを待たれるのがストレスでした。私が作る前提だから、彼も待つし、私も早く仕事終わらせなきゃ!支度しなきゃ!って焦ってしまって。

“出来ないものは出来ない”って開き直れたら、自然に、主人がサポートしてくれるようになりました。休日が合うときは、マルシェにも協力してくれてるんです。

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子どもがいると違うんでしょうけど、まだ二人だからそこも自由にできるのかな。

 

30代になって、年齢的には妊娠を意識しなきゃいけないんだろうけど、焦らず、自然に任せて…でいいかなぁって。山形には、仕事も育児もバリバリこなしてる女性がたくさんいるし、相談にものってもらえるから心強く感じてます。

 

でも、出産前後のどうしても依頼を断らなきゃいけない期間に、お客様が離れてしまったらどうしようって不安もあります。だから今は、産後の復帰を待っててもらえるような信頼関係を、一つ一つ丁寧に築いていきたいと思ってます。

それから、私の不在時にも安心してMomoを任せられるスタッフを見つけたいなって。」

 

 

山形での縁に感謝しながら、山形に新しい風を吹き込める人になりたい

「Momoを始めてからの5年間、毎年必ずワークショップの依頼をくださる公民館さんや、レッスンにずっと通ってくれている人達がいます。活動を初期から支えてくれていた人達を大切にしながら、外にも目を向けていきたいと思ってます。

山形には地域密着で活躍されている生花店がたくさんあるから、私は新しい風を吹き込める人でありたいって。昨年出場させていただいた“花いけバトル”のような新しいことにも、どんどん挑戦していきたいです。」

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「それから、故郷の茨城とか、山形県外からもマルシェやワークショップの依頼をもらえるようになりたいなって思います。その土地土地のお花や人に触れ合ってみたいし、“あの先生から習ってみたい”と思ってもらえるような存在になりたいですね。

 

アトリエの屋号は、ミヒャルエンデ著『モモ』に由来しているんです。

モモがいるところにいくと、ケンカしている人同士でも仲良くなって帰ったりとか、子ども達が何もないところでも遊びを見つけて楽しんで帰ったりするんです。そんな場所を作りたいと思ってMomoと名付けました。

 

Momoに行くと話聞いてもらえるなとか、よくわかんないけど心が穏やかになって帰れるなっていう場所にしたくて。学校や家庭で何かあったときに立ち寄れる場所、心を取り戻せる場所としてMomoを選んでもらえるように育てていきたい。」

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編集後記

聡美さんのフラワーレッスンは、セラピーのようだと感じるときがあります。お花を活けながら、日頃の慌ただしさやザワザワした気持ちが一つ一つ整っていくような。

「お花は、一つ一つ違う表情を持った生き物だから。お花が持つ独特の力なんでしょうね。」とお話くださったのが印象的でした。

 

たくさんの雪に心がどんより曇ってしまったら、聡美さんのアトリエで気持ちに彩りを与えてあげてみてください。色彩豊かな繋がりが、きっと拡がってゆくのではないでしょうか。

 

URL:  https://www.ateliermomo.net/

Facebookページ:https://www.facebook.com/atelier.momo.0303/

 

Profile

木村聡美さん

茨城県出身。フラワーアーティスト、Atelier Momo代表

URL:  https://www.ateliermomo.net/

Facebookページ:https://www.facebook.com/atelier.momo.0303/

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