「新庄市」、と言えば?
新庄まつり、くじらもち、納豆汁、とりもつラーメン?
いえいえ、それだけじゃあありませんよ。
新庄市のエコロジーガーデンで開催されているマルシェ「kitokito(キトキト)マルシェ」をご存知ですか?
kitokitoマルシェは、毎回1000~2000人が訪れる人気イベント。心地の良い時間が流れるマルシェに多くの人が訪れています。
kitokitoマルシェとは
マルシェとは、フランス語で市場(いちば)を意味する単語で、日本全国各地はもちろん、山形県でも県内各地でマルシェが開催されています(参考:山形にも広がる「マルシェ」各地方の人気マルシェをご紹介!)
kitokitoマルシェは、山形県内でも早くから2012年にスタートし、今年で4年目。雪が降る時期を除いた5月〜11月の毎月第3日曜日に開催されています。「キトキト」とは、最上地方の方言で、「ゆっくり」という意味。ゆったりとした時間という意味が込められています。
kitokitoマルシェHP(http://kito-kito.tumblr.com/ )
毎回出店するのは、約30の農作物・クラフト・飲食などのジャンルのお店。「作った人が、売る人」というコンセプトで、販売されている農作物は、若い農家さん自らが、美味しい秘訣、こだわりのポイントを教えてくれます。
地元で作られているけれど、スーパーでの販売がないから馴染みがないという商品も、回を重ねるにつれて、地元の人に受け入れられるようになっています。
飲食物では、お菓子、パン、カレー、みそ、麺、米粉クレープ、自家焙煎コーヒーなど、様々なジャンルのお店が並びます。
「クラフト」「パン祭り」「」など毎回変わるテーマは、女性や子連れの家族や、カップルがデートに訪れたりと、特に若い世代の人たちに支持され、スタートした頃は500人程度だった来場者は年々増えて、「パン祭り」では2000人(!・しかも県外から来た人も大勢)の来場者が訪れたということもある、とても人気のあるマルシェとなりました。
山形県内に住む陶芸作家がつくる作品も販売されています。
ビニールプールを持ってきて子供達が遊び、のんびりしている家族がいたり、「見てるだけでお金を使わなくても良い。買わなくてもいいから好き。」という若い人がいたりと、居心地が良い空間ということが伝わってきます。
「訪れた人が自由に楽しめるように」そんな思いで、雰囲気づくりにこだわっています。
マルシェからの広がり
kitokitoマルシェの会場「新庄エコロジーガーデン」は、昭和初期に建てられた蚕糸試験場。養蚕産業が衰退してから新庄市に払い下げられたこの建物は、2014年に文化財になりました。
kitokitoマルシェは、昭和初期に建てられた蚕糸試験場を会場に行っています。何十年も変わらない建物。僕たちを変わらず見て来た建物。そんな場所で、失われつつあるながりを再生し、相互理解のもとでよりよい新庄最上の生活を楽しめるようになることを目指しています。そして何十年後かに、他の地域と比べる事を知らずに育ったこども達、孫達が変わらずありつづけるマルシェでノンビリ過ごす。そんな場所と時間になれたら最高です。
ここの建物に、2015年には、カフェ、セレクトショップ、シェアブックスペース 、暮らしを学ぶカレッジ、など多様な交流ができるスペース「Commune Aomushi(コミューンアオムシ)」がOPENしました。毎週土日の週末だけオープンしています。
カフェで使用される食材を作った地元農家とつながったり、カフェで使っている食器を作った作家とつながったり、買ったり。誰かが置いて行った本を読みながら時間をすごしたり。そういった時間を過ごしたい人が集まる場所になれたら嬉しいです。
1871年にパリに誕生した労働者階級による自治政府「パリ・コミュ−ン」女性参政権など当時の社会では革新的な試みが数多く行われました。
山形県最上地方でも、ここエコロジーガーデンを中心に緩やかな雰囲気の中に新庄最上の文化を未来に向けて行くデザイン感覚、未来へのアンテナを持った人たちが集まり、美しい世界観を共有しながら田舎を作っていく試みを続けていきたいと思っています。(出典:https://www.facebook.com/Commune-Aomushi-687642881366076/?fref=ts)
1Fのカフェを毎週末運営するのは、なんと地元新庄の高校生。マルシェを手伝いにきていた、コミュニティを作っていくことに興味があった高校生が、自ら「カフェをやりたい」と手を挙げてスタートしました。
2Fはセレクトショップ。お皿・マグカップ、ほうきなど、新庄・最上で中心とした県内で生まれたグッズが購入できます。
「kitokito BOOKS」は、本をシェアして人をつながるシェアブックスペース。次の人へのメッセージを書いた誰かに読んで欲しい本を2冊ここに置いたら、好きな1冊を持って帰れます。
マルシェがお休みの12月〜4月の冬場は、誰もが学べる場所「kitokito大学」も開催しており、地元で楽しく暮らすためのヒントが得られる、日常に溶けこむ、暮らしに寄り添うような講義を行っています。
今年からは、ここがその学びの場になる予定です。
自分でこのまちで生きていく上で、あったらいいなって思うものを作る。
欲しいもながないなら作る、それがkitokitoマルシェの根底にある想い。
だから、マルシェの什器やコミューンアオムシの場も、自分たちで手作りしています。
こども達が楽しく遊んでいるこのブランコも、自分たちで作りました。
そして、なんと、このツリーデッキも!!!手作りで作られました。
ツリーデッキは、建築系の経験があるプロジェクトメンバーの夢を実現にしたもの。
本当に自分たちでつくったの?という思ったそこの方、出来るまでの工程をご覧ください。
本当に自分たちでつくっているんです。
根底に流れているのは、「自分でこのまちで生きていく上で、あったらいいなって思うものを作る。」というマインド。
ないなら作ってしまおう、と大人たちが楽しみながらやっています。
「地域で豊かに暮らしていける新しい価値観を見つけていこう」
このkitokitoマルシェをはじめたのは、新庄市の吉野敏充さん。
吉野さんの実家は農家。新庄市内の高校卒業後、東京での専門学校に進学、卒業後は東京の制作会社でデザイナーとして働き、制作会社の社長として働いていましたが、2010年に地元新庄市にUターン。吉野敏充デザイン事務所を立ち上げて、デザイン業と並行して農業を行い、「半農半デザイン」を実践しています。
農家の息子・娘が、実の野菜を販売するプロジェクト「倅(セガレ)」にも所属し、東京のマルシェで実家米を販売していた吉野さん。kitokitoマルシェをはじめるきっかけになったのは、山形にUターンしてきてからも、奥さまと一緒にマルシェに出店してときのある出来事。
「お客さんに「スーパーの方が安いわ」と言われたんですよ。そこで、こういうことやりたいわけじゃなかった、と思った。しかもそこは新庄からはちょっと遠かった。
それなら新庄でやりたいなと思い始め、新庄や最上地方の一緒にマルシェできたらなと思う人たちに「新庄でマルシェやりたい。いい感じのお店がぎゅっと集まったマルシェでお店をお客さんに知られれば、別日に、最上地方のそれぞれのお店を回れるんじゃないか」と、相談しました。
ちょうどその頃、新庄市がエコロジーガーデンの活用方法を模索していた頃で、この場所でマルシェをやったらどうか、と話が具体的になり実現しました。」
4年間続けてきて、地元に馴染んできたkitokitoマルシェは、少しずつ、人々の心に変化を与えています。
「真室川でお店をやってる普通のおばちゃんもkitokitoマルシェのことを知っていて、おおって思いました笑。
あと、僕なんかがいろいろやってるのを見てた20代くらいの子が、『自分でも何かやっていいんだって思えた。 何かをはじめる・つくるっていうことを自由に考えて、企業とか役所とかじゃなくても、仲間でやるとかやっていいんだって思った。じぶんでもやれる気がする。』って言ってたんですよ。
僕、こんな感じでかなりゆるいから、吉野でも出来るんなら俺でもできそうって思ってくれたみたい」
欲しいものがないなら作ろうの精神で楽しんでいる大人たちを見て、地元の若い人の心に変化があったようです。
kitokitoマルシェが目指すものって何でしょうか?
「自分の子供達が生きていく上で、経済活動だけじゃなく、それ以外のものもちゃんとあるバランスが取れた豊かな暮らしが出来るようにしたいです。」
そう話す吉野さんは、いつも自然体でした。
kitokitoマルシェから広がる新庄の豊かな暮らし。あなたも参加してみてはいかがでしょうか?
Profile
吉野 敏充さん
吉野敏充デザイン事務所・吉野農園 代表
kitokitoマルシェは毎月第3日曜日開催。(12月~4月休み)