山形県を地図でみるとちょうど人の横顔の形をしていることは、山形にゆかりのある方ならご存知ではないでしょうか。現在は酒田市に統合された旧平田町は、そんな山形県のちょうど目の位置にあることから、めんたまの町としてユニークな町おこしをしてきたことで知られています。

 今回のやまがたで働く人

佐野圭さん

アパレルのセレクトショップ「Fun★K」のオーナー

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そんな平田町で生まれ育った佐野さんは、東京でアパレルショップの店員を経験したのちに妻と子供を連れてUターンをし、現在はとして活躍されています。佐野さんが地元酒田に戻られたきっかけやお店を開店された理由などをお聞きしました。


明治通りのアパレルショップで働いた20代

高校を卒業後、東京へ上京して情報処理関係の専門学校へ進んだ佐野さん。そんな佐野さんが専門学校を卒業した後に選んだ進路は、なんと渋谷にあるアパレルショップの店員でした。

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 「高校生くらいの頃から洋服には憧れがあり、とても好きでした。地元では手に入らないブランドの洋服を求めて、仙台までバスで行ったこともありました。

 東京へ出るきっかけとして情報処理関係の専門学校に進みましたが、どこかの会社にシステムエンジニアとして就職して、毎日スーツを着て夜遅くまで働くのは漠然と嫌だなぁと思っていました。

 そんな時に、いつも行っていた明治通りのお店が、たまたま求人を出していたんですね。そこのオーナーはいつも格好いい服装をして、ハーレーに乗って出社するんですよ。そんな姿に憧れもあり、是非お願いしますと訪ねていったら運よく採用してもらうことができて。就職してからはお店を移り渡ることなく、約15年間そちらでお世話になりました」。

 こうしてショップの店員として働き、いつか自分のショップを開くことを視野に入れながら、佐野さんはアパレル業界のコネクションや経営の知識を身につけていきます。

 そうした中で、渋谷や原宿といった人の途絶えない華やかな場所にあっても、消えていくお店が少なくないことを目の当たりにします。

 「こんなに好立地にあっても、ダメになるお店はあるんですよね。場所が悪いとか、わかりにくいとか、そうした理由は後付けで、場所は関係ないということを実感しました。

IMG_5117-300x225 だからこそ、自分が生まれ育った平田でも洋服屋をやっていけるのではないかと考えるようになりましたし、続けるためにはどうしたらいいか、どんな配慮や仕掛けが必要かを、一生懸命考えるようになりました」。

 様々な下調べを行った佐野さんは、地元平田に店舗兼住居となる建物を新たに建て、2010年7月に妻と子供2人を連れてUターンします。


自分の生まれ育った酒田市平田で、2010年に店舗をオープン

 これまでの経験とコネクションを生かし、地元の平田でアパレルのセレクトショップ「FUN★K(ファン・ケイ)」をオープンさせた佐野さん。ロッジ風のおしゃれな外観の建物と車庫におさめられた黒いアメ車は、通りを走る車の中からでも目を惹きます。

 「2010年にお店をオープンさせたのですが、随分前から夏休みに実家に戻ってきたときなどに、商圏をリサーチしたり、友人知人にヒアリングをしたりということをしていました。調べたり聞いたりしてわかりましたが、欲しいブランドの服を求めて都会へ買い物に行かれている人は、少なくないんですね。

 でも、地元にはないという先入観が強くて、そもそも地元は見ていない。自分自身の若い頃を考えてみても、同じように地元にはない、と思い込んでいました。でも実際に外へ買いにいっているということは、需要はあるということですよね。

 そして実は、鶴岡や酒田にも相当昔から東京のブランドを持ってきてやっている、先駆的なお店が存在することもわかりました。こうした場所でもやっている方もいるんだと勉強になりましたし、可能性を感じました」。

 こうしてちゃくちゃくとお店を開くための準備を進めていく佐野さん。自分のこだわりの雰囲気を出せる物件は探しても出てこないだろうと考えて、店舗兼住宅となる建物を新たに建築します。

 「ネットで簡単にモノが買える時代だからこそ、このお店で買う付加価値というものが大切になってきます。空間や雰囲気もそのひとつですよね。だからこそ妥協はできなかったというか。

 そしてこんな時代だからこそ、顔と顔を付け合せて、自分という人間をわかってもらって商売をすることが、大切だと思っています。それには自分が生まれ育ったここ平田でお店をやることは、得なことだと感じます。商売は地域に根ざしていないとダメだと思いますし、地方の方であればあるほど、どこの誰がやっているのか、ということが重要ですよね。佐野の息子がやってる店らしいぞ、と聞くと、地元の方も安心感があるでしょうし」。

 そこにここじゃなきゃいけなかった理由がありました、と語る佐野さん。現在は地元の商工会にも所属して、地元の方々と関係を深めながら地域の活動にも積極的に参加しています。


アパレルショップ×カフェという組み合わせがキーに

実はFUN★Kさんの吹き抜けになっている2階は、カフェが営業できるよう許可をとっており、現在はコーヒーを楽しめる空間になっています。

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「最初はお店の前にたむろしてほしくないという思いがあって、2階にゆっくりできるスペースを確保したのですが、思いつきで提供を始めたコーヒーが今では大事なツールになっています」。

やるからには中途半端なことはしたくなかったと語る佐野さん。コーヒーの豆は千葉の有名な焙煎屋さんなどから取り寄せて、美味しく入れられるよう勉強もしています。

「服屋さんってどこもそうだと思うんですけど、なかなか入りづらいところがありますよね。入ってみたいけど、買わないと悪いと思ってしまう、といいますか。だから、ちょっとコーヒーを飲みに入ってこれる気軽さは、足を踏み入れるきっかけにもなるし、良い意味でお客さんに逃げ道をつくってあげることになっていると思います」。

コーヒーを楽しむ客さんとゆっくり会話ができることは、佐野さんにとってもありがたいことだと言います。お店の中にできるだけ長く滞在してもらい、自分という人間の考えや想いを知ってもらい、人間関係を築きながら商売につなげていきたい。そうすることで、細くても長い付き合いができると考えているそうです。

 

庄内の中心に位置する平田で、地方の暮らしを応援していきたい

ショップオーナーという顔を持つ一方で、「ヒルクライム東北」というバイクのイベントを主催している佐野さん。

 ヒルクライム東北とは酒田市の松山スキー場でシーズンオフに開催されるイベントで、参加者が各々の自慢のバイクで一気に丘を駆け上がり、到着タイムを競う競技です。2014年で4回目となるイベントで、山形県のみならず東北一円から人が集まり大きな賑わいを見せています。

 「大小さまざまなバイクが参加してくれているのですが、エンジンの爆音を響かせて丘を駆け上がる姿は、とても迫力があります。バイクを知らない人でも見ていて楽しめるイベントで、嬉しいことに競技の参加者だけでなく、ギャラリーの方もたくさん集まってくれています。

 開催のきっかけは、自分がバイクが好きだったからというのもありますが、県外から人を呼んで庄内という場所を知ってもらうきっかけになればと思ったことと、大人たちが遊んでいる姿を地元の若い子に見て欲しいと思ったこと。地元でもこんな風に遊べるんだぜ、外へ出て遊ぼうぜ、ということを、自分の身をもって伝えていきたいです」。

 ご自身も20歳のときに買った愛車1963年製のハーレーをお持ちの佐野さんですが、主催者としての役割が忙しく、レースにはまだ参加ができていないそうです。それでも楽しそうに語ってくださる姿からは、多くの方に庄内の良さを伝えたい、若い子たちに楽しみ方を教えてあげたいという純粋な思いが伝わってきます。

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 「ショップ名であるFUN★KのサブタイトルをSupport Your Local Life Styleとしているのですが、単に洋服だけを売るのではなくて、地方での生活を楽しむためのお手伝いをしていきたいという思いを込めています。

 だから同じようにUターンをした人たちと地元を盛り上げるようなことをしていきたいし、移住を検討している方にアドバイスができることもあると思います。他にも、たとえばお店を開きたいと思っている人に自分の経験が役に立てるようであれば、是非応援したいと思っています。色々な人が繋がって、地元を元気にしていくような場所をつくりあげていきたいです」。

 まだまだやってみたいことがたくさんありながら、毎日10時から22時まで営業しているお店とイベントの企画などで、日々忙しくしている佐野さん。広い庄内地方の真ん中に位置する場所として、庄内の人々が交流していく中心地になるといいなぁと思いながらお店を後にしました。

Profile

佐野 圭さん

出身 山形県酒田市平田
生年月日(または年齢) S49.3.15
URL http://fun-k.jp/
Fun★K(ファン・ケイ)
住所:山形県酒田市砂越楯之内31-52
電話暗号:0234-52-3569
営業時間:10時~22時
定休日:水曜日

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この記事を書いた人

佐野 陽子

1983年生まれ神奈川県出身。 早稲田大学商学部を卒業後、大手損害保険会社に勤務し丸の内OLを経験。 山形の在来作物とそこに関わる人々を描いた一...

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