300年の歴史を持ち、山形県で温泉旅館のグループ経営を行う
株式会社 高見屋旅館(http://www.zao.co.jp/)
(蔵王温泉 深山荘高見屋)
TAKAMIYA HOTEL GROUP セールス&マーケティングマネージャー 遠藤拓也さん
経歴
1982年生まれ(34歳)福島県出身
千葉県の大学を卒業後、東京の企業に就職。その後、福島県のリゾートホテルに就職。
現在は株式会社高見屋旅館にて、ウェブマーケティング・広報担当として活躍中。
生い立ち
福島県猪苗代町出身、民宿を経営していた本家の長男として生まれた遠藤さん。
「猪苗代町でも田舎の方の出身で、半径3キロ圏内にはお店がなく、自転車で30分かけて最寄りのコンビニまでお菓子や必需品などを買ってきて、泊まっているお客様に売っていました。」
競輪選手や様々な宿泊するお客様と一緒になり、会話をしたりする中で
人を泊まらせて喜んでもらえるのが、昔から楽しかった。
しかしながら、本家の長男として生まれたことから幼い頃から「家を継げ」と言われ続け、逆にそれがコンプレックスだったと言います。まわりの同世代は地元で就職する中、経営・商売を間近で見て育ったという環境もあり
自分で商売がしたい
いつしかそんな風に考えるようになり、千葉の大学に進学後「経済学」を専攻。
仕事に追われ闘った「東京」での毎日
大学時代を経て、最初の就職は「東京」と考えた矢先、父親の病気が発覚。大学三年生の時に他界。その後、東京本社の大手家電量販店に就職し、新宿店勤務や秋葉原店のオープンにも携わったそうです。遠藤さんは当時の様子を、こう語ります。
秋葉原店オープン時。お客様の数は予想をはるかに上回る来店数。在庫も合わない。商品を売りたいのに、売れない。常に怒号が飛び交う
まるで、戦争のような毎日
それでも、弟の生活費を工面する為「辞める」といったことは一切考えず、ひたすら働き続けました。残業もしていたので、それなりの収入もあったそう。しかしながら、弟さんの就職を機にふと我に返り
「ふと、旅に出たくなって。これでいいのか。ずっと仕事に追われるような、忙しい日々を送っていていいのだろうか?」
そんな思いを持ち、たまたま実家に帰ったときに訪れた裏磐梯の『五色沼』
(photo by PHOTOZO http://photozou.jp/photo/show/242422/42198896)
そこで見た景色はとても綺麗で、それはまるで心が洗われるような感覚。
お金はあるけど、何かが違う。
「都会での利便性や見栄、お金。そういうのにずっと囚われていたけれど、まさに灯台下暗し。実家に帰ったらこんなに素晴らしいものがあったのかと思いました。」
その時に無性に「戻りたい」と思い、会社を辞めて転職をする決意をされました。
「営業ノウハウ」を学んだ ホテル営業一年目
26歳の時、当時オープニングスタッフを募集していた福島県裏磐梯のリゾートホテルに転職。販売から「営業職」への転向。営業の経験がなかった為、最初は担当エリアを持たされなかったそうです。「何をしたらいいですか?」という問いに対し、当時上司の営業部長は
「自分で考えろ」
と、一蹴。
考えた末、最初は先輩のやり方を学ぼうと「5人の先輩」の営業に同行。そこである程度の営業知識・ノウハウを身につけ、ある日思い立って許可を取り単独で東京営業へ。
東京の主要駅すべての「旅行代理店」に飛び込み営業
門前払いは半分以上。最初はびびりまくってたという遠藤さん。でもそのおかげで、アポなしで営業にいくことは平気になって度胸がついたと、現在は笑顔で語ります。
戻ってからも、新規法人開拓など電話帳からしらみつぶしにアポイントを取るなど、体当たりで営業の経験を積んでいきました。
Q. ホテル営業の秘訣は?
「記憶に残ること」が大事です。売り込むよりも、最近面白いことありました?なんて相手と会話をしたり、喋りやすい雰囲気を出すことを大切にして。お茶を出されたら、3時間かけてお茶を飲んでたこともありました(笑)
営業も「サービス業」である
一方的に売り込むのではなく、相手を楽しませることができれば、仕事にも繋がる。
そこまで辿り着くのに時間はかかったけれど、その後「東京エリア」担当に抜擢されたり、大手旅行会社の担当を任されるなど、営業として実績を積んでいきます。
ホテルが「某有名リゾート会社」へ運営を委託
しかしながら、リーマンショックの影響もあり、ホテルの業績は低迷。そこで当時はまだ無名だった、リゾート運営会社に運営を委託するという転機が訪れます。
完全なる「能力主義」の会社へ
フラットな組織体系で、立候補制でマネージャーになれるシステムを導入しています。経営が移行するにあたって、在籍するスタッフは新しい総支配人と面談しなければなりませんでした。
遠藤さんはホテルに勤めていて感じていた問題点を述べ、解決案を提案。
「東北一有名なホテルにしたい」
その意気込みを買われ、二年目にして営業支配人へ抜擢。
衝撃を受けた「本質を見抜く力・物事を考える力」
新しい運営会社から配属された新しい支配人。この方も遠藤さんの今後の仕事の仕方・考え方に、大きく影響を与えます。
一件「5000円」の広告費
5000円くらいだしまあいいか…そんな軽い気持ちで稟議を通そうとしたら、総支配人が怒鳴り込んできて「何の意味があってこの判子を押したんだ!!」と問いました。「安いからいいと思って」…そんな理由が通るわけもなく
「おまえは『なんで』が足りないんだよ」
常に「なぜ」と向き合う、ロジカルな思考
「なんで」に答えられない、そんな甘い考えは、一切通用しない。総支配人に納得してもらえるよう、理由を答えられる明確な根拠を武装する。そんなロジカルな思考力を、徹底的に叩き込まれた二年間。
Q. 仕事へのモチベーション
そんな厳しい環境の中、度重なる試練に立ち向かう遠藤さんの「モチベーション」はどこから生まれくるのでしょうか。
「たとえば、目の前にばらばらのパズルがあったらはめてみたくなりませんか?私はそれが『難しいパズル』の方が楽しく思えるんですよね。」
目の前の課題が、難しければ難しいほど、やりがいを覚えるという遠藤さん。パズルは正解がひとつじゃない。たとえやり方が間違っていても、正解だと思うパターンをたくさん試していく。
完成まで何通りもピースを試し、もし壁にあたったとしても、また次のピースを試せばいい。
そんな考え方のベースを持っていたからこそ、遠藤さんはそれからホテルの過去最高売上に貢献していくこととなります。
山形「タカミヤホテルグループ」へ転職(2013年~現在)
31歳、また新たな目標と出会った、人生三度目の転機。当時のタカミヤホテルグループの評判は「伸び盛り」。体制はまだまだ『アナログ』だったといいます。でも、逆にその環境がとても楽しそうだと思ったそうです。
「台帳が手書きだったり。支配人が現場に出ていたり…ほんとうにアナログだったと思います(笑)でもだからこそ、なんでもできるやりがいのある環境だと思ったんです。」
また、人を大切にするタカミヤグループの社長の方針・考え方。
『ハンデは個性である』
これが出来るから凄い、支配人だから偉い…そんなことは一切思わないで欲しい、社長はこう語ります。自分が持ってないものを、他の人が持つ良さを活かし補っていく。完璧な人間はいない、だからこそ助け合うチーム力が大切。
そんな考え方にも共感を覚え、心機一転、山形での新たな挑戦を決断しました。
仕事内容
主な仕事内容については「なんでもやります」とおっしゃる遠藤さん。広報としてのラジオ出演をはじめ、今まで着手していなかった『ネットマーケティング』なども導入。
ホテルに転職後、ずっと営業をしていた遠藤さんでしたが、タカミヤグループは確かにアナログながらも、今までの歴史の中で、人との繋がりを大切に着実に培ってきた「凄い営業能力」を持つの方がたくさんおりました。
自分よりもすごい営業人たちが会社に存在する中、ここで自分が営業に固執するよりも
「それならば、違う形で自分にもできることがある」と考え、時代はネットに移行しつつあったこともあり、今まで未開拓だったネットマーケティングに着手。
◇タカミヤ湯の浜テラス 西洋茶寮(http://www.yunohama.com/)
◆庄内あつみ温泉高見屋 別邸久遠(http://atsumionsen-kuon.com/)
◇山形県戸沢村草薙温泉 高見屋最上川別邸 紅(http://mogamigawa-beni.com/)
現在は蔵王を拠点にウェブマーケティングのマネージャーとして働いておりますが、やることがたくさんあって、とにかく飽きないとおっしゃいます。今までと同じやり方に固執するのではなく、
時代の変化を読み取り、自分がすべきことは何なのか見極める
そんな仕事への姿勢が新たな風を吹き込み、タカミヤホテルグループは着実に新しい一歩を踏み出しています。
Q. 遠藤さんにとって「仕事」で一番大切な事は何ですか?
「常に、自分を飽きさせないことです。」
UIターンを考える方へ
今まで『10回以上』住むところは変わりました。
仕事で新しいことをしたいときは、その場にいてはいけないと思います。
自分の居所を変えるのは、新しいことにチャレンジする為の一番のリセット方法。
新しいことを始めるには「自分がここに居て楽だ」と思うところから、抜け出していく方がいい。
安定を守ることよりも、いつまでも挑戦し続けることが大切だと思います。
まとめ
ホテル・観光業としての仕事内容。仕事において大事な「心構え」や「思考力」。そして、生き方のスタイル。インタビューをさせて頂き、様々な場面に通じる『大切なこと』をたくさん教えてもらいました。
新しい一歩を踏み出すか迷っている、この記事を読んでくれた、あなたへ。
過去の「成功」や、同じ居場所の「安定」に甘んじることなく、常に新しいことへ挑戦し続ける遠藤さん。そんな遠藤さんの考え方・生き方を知って、たとえひとりでも、新たな一歩踏み出す『勇気』を感じてもらえたなら、とても嬉しく思います。
(インタビュー:伊渕南々絵)
Profile
TAKAMIYA HOTEL GROUP セールス&マーケティングマネージャー 遠藤拓也さん
1982年生まれ 福島県出身
千葉県の大学を卒業後、東京の企業に就職。その後、福島県のリゾートホテルに就職。
現在は株式会社高見屋旅館にて、ウェブマーケティング・広報担当として活躍中。