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2025年1月15日
山形県西置賜郡にある小国町で、「マルチワーク」という働き方が注目を浴びています。
人口10,000人以下の市町村への労働派遣事業である「特定地域づくり事業組合制度」を利用して、小国町の働き手不足解消に取り組んでいるのが「おぐにマルチワーク事業共同組合・通称おぐマル」です。
今回は、おぐマルの事務局長をされている吉田悠斗さんに、マルチワークとはいったいどんな働き方なのか詳しく教えて頂きました。
おぐにマルチワーク事業協同組合代表 吉田悠斗さん
埼玉県出身。大学卒業後、バイオテクノロジー関連の会社に就職。
2018年、地域おこし協力隊として小国町に移住。
任期終了後、2021年からおぐマルの立ち上げに着手。
現在はおぐマル事務局長として運営を行う傍ら、シェアハウス企画・運営や農家さんの手伝いなど自身もマルチワークを行う。
この記事は、「山形を知るインターン」に参加している社会人が取材・執筆を担当しました。
(社会人インターン)ずばり、マルチワークとはどんな仕事なのでしょうか?
(吉田さん)マルチワークとは、簡単に言えば同時に複数の仕事に従事することです。1年を通して季節によって違う仕事をすることであり、1週間の中で幾つかの仕事を組み合わせることでもあります。
例えば、農業に興味を持っている人がいたとします。春から秋にかけては米農家で田植えや畑仕事を手伝いながら、週末はレストランの店員として働き、農作業が無い冬は、スキー場や宿泊施設で働く。季節性がある仕事に就いたとしても、年間通して安定して仕事に就くことができます。
このような働き方は新しいものではなく、昔からいわゆるお百姓さんがやってきたスタイルです。収穫や種まきの忙しい時期は助け合い、農作業が無いときは他の仕事をする。季節や気候、人手に合わせて複数の仕事をするのはまさにマルチワークです。
そしてここ小国町では、昔ながらの「複数の仕事を掛け持ちする」という文化が色濃く残っています。小国町は山形県内でも有数の豪雪地帯です。温暖化の影響で年々雪の量が減っている中、今もなお積雪により果樹が育たない。雪の影響で、冬の間は自然と違う仕事をしています。除雪車両のドライバー、スキー場従業員、日本酒造りをする人、つる細工を作る人、かご職人など。現役のマタギの方もいらっしゃいます。
おぐマルの組合員・通称「マルチワーカー」には、何種類の仕事をしなければならない、どれくらい働かなければならない、という決まりはありません。事業の種類や職種には限りがありますが、その中で事務局と相談をしながらカスタマイズしていきます。
(社会人インターン)町おこしにどんな効果がありますか?
(吉田さん)『「特定地域づくり事業組合制度」を利用する地域は、人口の激減に直面している地域です。小国町のように、若者が都市へ流出し、高齢化・過疎化が急速に進んでいる地域では、働き手不足に苦しんでいます。田んぼがあっても耕す人がいない、繁忙期には旅館に人手が足りない、といった具合です。
一方で、補填するために人を雇うとなると、正規職員を雇用するほど年間を通して仕事が無い、または資金が無いという問題が出てきます。このような、「年間を通して仕事が無いが、繁忙期には人手が足りない」という問題を抱える事業者に対して、必要な時だけ人材を派遣することができるのがマルチワークの強みです。
小国町でのマルチワークを希望する方を、おぐマルの組合員として雇用します。そして春は米農家で田植え、夏は観光などサービス業、秋は米や野菜の収穫、冬は温泉旅館やスキー場と、季節によってニーズの違う事業者に派遣することで、町全体として人材不足を埋めることができます・』
(社会人インターン)マルチワーカーをする人には、どんなメリットがありますか?
(吉田さん)『組合員として安定した収入を得ながら、様々な仕事に携わることができます。農業、林業、日本酒造りなど地方ならではの仕事から、サービス業、ものづくりまで。人材のニーズがある事業者の中に限られますが、全く未経験の事業にもチャレンジすることができます。
また、週休4日で自分の時間を確保するという選択肢もあります。週3日以上働くことができれば、マルチワーカーとして雇用保険に加入することができます。起業を考えている人、副業の時間を確保したい人、スキルアップのために自己投資したい人などが、マルチワークという制度を利用してステップアップして貰えたらと思っています。
実際におぐマルで働いている人の中には、様々な仕事を経験して「自分に合っている仕事を見つけたい」という思いを持っている人も多いです。同世代で夢を追っている人、やりたいことを見つけたい人たちと接点を持ちながら生活することができます。
事務局としても、マルチワーカーとしての経験が次のステップに繋がるよう、定期的な面談などのフォローを行っています。』
(社会人インターン)おぐマルを立ち上げて、どのような効果が出ていますか?
(吉田さん)『おぐマルを立ち上げてから約3年、小国町でマルチワークをしたいという20,30代の方が少しずつ集まってきました。例えば、地元山形へのUターンを考えていたものの足踏みしていた方が、マルチワークをきっかけに小国町に戻ってきたUターンの方がいます。またおぐマルを取り上げて頂いたテレビ放送を見て、縁もゆかりも無い小国町に来たIターンの方も多くいます。このような多様な出身、きっかけの若いマルチワーカーが小国町の様々な事業者で働いています。
そして、マルチワーカーの影響は期待以上だと感じています。マルチワーカーを受け入れ始める時は、農家での力仕事、旅館での掃除、ガソリンスタンドでの接客など、まずは足りない人手を埋めるための目先の労働力として期待されます。しかし、マルチワーカーが働き手として加わることで、今まで見えてなかった問題に気づくことがあります。例えば、「背中を見て学べ」という教え方だった事業者にマルチワーカーが派遣され、仕事を教える環境が整っていない問題に気づくなど。
このような課題に対して、おぐマルでは積極的に介入しています。実際にマルチワーカーが派遣先で仕事をしながらマニュアル作りを行うことで、必要な時に人を採用できる環境づくりができた事例があります。このようにマルチワーカーが働き手として加わることで、短期的な人出不足解消だけでなく、事業を維持していくための仕組みづくりに繋がる可能性があると考えています。
自治体によってマルチワークをどう町おこしに繋げるか目論見は異なると思いますが、私はおぐマルのマルチワーカーをただの労働力として派遣したくないと思っています。ぜひ事業を活性化させるための起爆剤としての存在になって欲しいと思います。小国町のマルチワーカーへの期待は低くありません。中には「覚悟と熱意のあるマルチワーカーがいれば、ぜひ事業継承したい」という事業者もいます。そういう大きな可能性がある働き方だと思っています。』
(社会人インターン)地域の方との関わりはありますか?
(吉田さん)『私を含めたマルチワーカーは、地域行事に積極的に参加をしています。例えば、神社のしめ縄を撚る(=ねじり合わせる)ところに参加した時は、近隣の方が寄り合うところに行って、一晩中かけて作りました。作業の間には郷土料理のくじら汁をふるまってもらいました。他にも、夏祭りのみこしの担ぎ手が減っていて手伝ってくれると嬉しいという話があり、皆でみこしを担ぎました。それにより長年出来ていなかった行事が継続できたですよね。
私は、こういうお金にならないボランティアや助け合いはとても大事だと考えています。地域の助け合いで色んなことが成り立っているんだと知る経験ができるのも、おぐマルだからだと思います。』
(社会人インターン)今後に向けて、取り組んでいる課題はありますか?
(吉田さん)『まずは、マルチワーカーを受け入れる事業者を増やしていくことです。3年かけて組合に加入する事業者は増えてきてはいるものの、まだまだ少ないと思っています。派遣先を増やし、多様な経験を期待するマルチワーカーが満足できるよう、まさに事務局が取り組んでいるところです。
第二に、派遣先の環境を整えることです。事業者のトップはマルチワーカーに期待をしていても、現場が中々受け入れられないということもよくあります。今までの皆さんの仕事の教え方や進め方があるのはわかっているつもりです。
だからこそ、今が土台作りの時期だと思っています。今おぐマルで活動している人の中には、私と一緒に現場に入り込んで環境改善に尽力してくれている人たちがいます。そういう仲間と共に今やっていることが、来年、再来年、十年後の未来の町おこしに繋がればと思っています。』
山形県では、小国町に続いて、白鷹町でもマルチワークの組合(通称:たかマル)が設立されました。
仲間を募集中なので、興味のある人は、話を聞いてみては?
たかマル問い合わせページ↓
たかマルInstagramアカウント→https://www.instagram.com/shirataka_multiwork/
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