これまで仕事図鑑では、人物に焦点をあて、その人の生き方や働き方のストーリーをご紹介してきましたが、今後は今までの『人物クローズアップ』編に加え、“仕事内容”に焦点をあてた『お仕事クローズアップ』編も展開していきます。

世の中には
「聞いたことはあるけど、どんなことをやっているのかよくわからない」
というお仕事もありますよね。
お仕事クローズアップ編では、知っているようでよく知らない職種を取り上げ、
実際に働く人にどんな仕事なのか詳しくお聞きします。

興味がなかった分野も、知れば意外と面白そうだったり、
興味が湧いたりするかもしれませんよ!

 

Vol.1 教えて!『生産技術』のお仕事

「生産技術」という言葉だけ聞くと、技術者?生産に関わるエンジニア?など、理系のお仕事のようなイメージがあると思いますが、実は違うんです。

生産技術とは、モノづくり(製造業)の現場において、製品を効率よく量産するための方法や仕組みを考える仕事。「低コストかつ高品質のものを速く、大量に作る」ために、各部門の橋渡し役となって業務をすすめ、生産の工程を計画・設計するのが生産技術の役割です。
※ただし、作るモノや会社によって業務内容や仕事の流れは変わります。

今回、お話を伺うのは創業101年目となる老舗のモノづくり会社「株式会社山本製作所」の製造部 生産技術グループ グループリーダーの藤原淳平(ふじわら じゅんぺい)さんです。

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ヤマガタ未来ラボ学生記者も取材に同行し、学生目線で聞きたいことを質問させてもらいました。

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目標を達成するための方法を何通りも考える

――『生産技術』と聞いても、仕事内容がイメージできないのですが、どういうお仕事なんですか?

技術と製造をつなぐ中間的な役割ですね。よく、製造で大切なのは「納期と品質と価格」だと言われます。

会社としては、それをある基準まで達成するという目標があるので、製造部門はその目標を目指して作ります。

でも、最初からすべてがうまくいくわけではないので、製造の過程で目標に届かないかもしれないというときに「こうすればいいんじゃないか?」という提案をするのが私の仕事です。

ーー「つなぐ役割」「提案する仕事」ですか!思っていた仕事のイメージと違います。

ものを作る方法というのは何通りもあるんですよ。

たとえば原価が高くなってしまって、それをどう改善するかというときに、一つの案だけでなく、何通りかの方法を考えなければなりません。

そのために情報を集めたり、いろいろな人と話したりすることが必要になってきます。

情報を知っているのと知らないのとでは選択肢がまったく変わってくるので、仕事の半分は情報収集です。一人で成り立つ仕事ではないので、全員がチームのような感じです。

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<既存の自社製品を改良する場合の流れ>

1,営業(お客様)の要望を聞く(こういう機能をつけたい、もっと価格を抑えたい等)

2,技術開発計画(どうやってつくるか)

3,試作(量産前に、機能を高めたり価格を抑えるために試作し検討する)

4,改良(さらに良いものにするために改善点や方法を考える)

5,試験(技術的に問題がないかどうかテストする)

6,原価計算(製品をつくるためにかかるコストを計算する)

7,2回目試作

8,技術から製造へ移管

9,生産立ち上げ(量産の筋道を立てる)

10,量産開始

11,製造原価チェック(量産にかかるコストを計算し、目標を達成できるかチェックする)

12,改良

より良いものを作るために、試行錯誤を重ねる

――生産に入るまでの道のりが長いんですね。この工程には、どれぐらいの時間がかかるのですか?

上記の1〜9までで、だいたい2年ぐらいかかります。10〜12までで1年弱ですね。

――へぇ〜!? そんなにかかるんですか…。びっくりです。生産が始まってから原価チェックするんですね。

設計の段階ではわからないことや、実際に作ってみたら予想とは違う仕上がりになったりすることがあるんです。最初はこれで十分だと思っていたけれど、もっとこうしたほうがいいねとか。

たとえば、「ここ、色ムラがあるから、塗料を替えて違うメーカーの塗料にしないとダメだよね」と。そうすると、その後の工程も条件が変わるから、A社ではなくC社に持っていかないといけないとか…。

作る過程でいろいろ出てくるので、最初は30万円で作るはずが35万円になったりするわけです。じゃあ、どうするかということを考えるのが私の仕事です。

CIMG2736▲藤原さんに、工場の中を案内していただきました!

CIMG2735▲約6300平方メートルの工場内にはさまざまな機械が。

CIMG2769▲パーツに粉末の塗料を吹き付けているところ

――具体的にはどういったことをするのでしょうか?「もっと安くしてください」ってお願いするとか?

取引先と交渉することが多いですね。もっと安くなりませんか?というような価格交渉ではなく、取引先のできることと、こちらのできることを組み合わせた合理的なやり方であったり、相手がメリットを感じるような提案をします。

ですから、取引先がどういったことが得意で、何ができるのかという情報を集めるのが大事ですね。私は以前、試作を担当していたこともあり、そこでいろいろな取引先を知ることができたので、そのときの経験が今に生きているなと感じます。

 

いろいろな部署での経験が、すべて今につながっている

――藤原さんは、最初から生産技術を担当されていたわけではないんですね?

入社してすぐ、生産技術で加工機械のことを教えてもらい、その後、試作に移って板金加工を教わりました。今思うと、そのときの現場の方たちが目をかけてくれたおかげで今の自分があるなあと思います。

製造のことを何も知らずに入社したので、教えてもらわないと何も仕事ができない状態だったのですが、その部署にいた定年間近の先輩方が、嫌な顔ひとつせずにいろいろ教えてくれたんです。右も左もわからない若造に、一から仕事を教えてくださったのは本当に有難かったですね。

それから試作発注を5年ぐらい担当しましたが、そこでは部品や材料の発注をしていたので、どの工程でどういう材料が必要で、どれぐらいの時間がかかるということがわかりました。その後、生産管理を10年、生産企画を2年経験して、今年から生産技術に戻りました。

CIMG2730▲主力製品は、農協などで使われている大型の穀物乾燥機。

自分のアイデアが結果につながる喜び

――生産技術の仕事は、どんなところにやりがいを感じますか?

自分のアイデアが採用されてうまくいったときは、やっぱり嬉しいですね。それまで10の時間をかけて10のものしかできなかったところを、5の時間で20できるようになれば評価もされますし…。自分が関わることで、仕事の流れが良くなったり、みんなが喜ぶ結果が出たりするとやりがいを感じます。

ただ、評価されるのはもちろん嬉しいんですけど、それだけでは続かないと思います。今まで続けられているのは、やはりモノづくりが好きという思いですね。

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――仕事をする上で大切にしていることや心がけていることは何ですか?

何かが成功したり上手くいったときには、頑張ってくれた人がきちんと評価されるように、必ずその人の上司に伝えるようにしています。成果を自分の手柄だと思ってしまったら、それは驕りだと思うので、そこは履き違えないように気をつけています。

私はあくまでいろいろな業務の間をつなぐ立場なので、現場で働いている人や営業の人たちの活躍が評価されるように、伝えるのが私の役割かなと思っています。

モノづくりへの思いが原動力

――仕事で大変なところはどこですか?

やはりダメだったときにどうするかというところですね。うまくいかなかったという報告をそのまま出すだけでは意味がないので、じゃあ、どうすれば良くなるのかという改善計画を考えて、具体的にいつからそれをやるのかというスケジュールも出さなければいけません。

やった結果を集計するのも大変ですが、その後の改善・改良を考えることのほうが大事なんです。

100ある業務のうち、楽しいと思えることなんて、1〜5ぐらいですよ。残りの95%は面倒くさいことばっかりですから(笑)。

それでもやっているのは、モノづくりに対する想いがあるからでしょうね。それと、入社当時お世話になった先輩方や、文系の私を採用してくれた会社に対して恩を感じているというのが大きいかもしれません。

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苦手なことも気にならないくらい、仕事が面白い

――藤原さんは、文系出身なんですよね? なぜ、今の仕事を選んだのですか?

大学は教育系の学部だったのですが、幼い頃からモノづくりが好きだったのと、もともと人と話すのがあまり得意ではなかったので、就職先は製造関係に行きたいと思っていました。

でも、当時は就職氷河期だったこともあり、大学で教育を学んでいた学生がモノづくりをしたいと言っても、企業からは見向きもされなかったんですよ。

そんな中で山本製作所だけが「とりあえず来てみたら?」と声をかけてくれて…。入社したきっかけは「なんとなく」でしたが、結果的には良かったですね。もともと人と話すのが苦手だから製造業を選んだはずなのに、結局、人と話す仕事をしているというのは謎ですが…(笑)。

――苦手なことをやっていても、嫌にならなかったのは何故でしょう?

仕事が面白かったんでしょうね。情報を集めて計画を立てて進めていくというのが、けっこう好きなのかもしれません。この仕事は、決まったことをやる定型の仕事ではなく、目的を達成するための方法を何通りも考えるので、そこが面白いですね。あとは、人に恵まれたというのは大きいと思います。

自分が思い描いていた未来とは異なりますが、これはこれで楽しいですし、やりがいもあるのでけっこう満足しています。

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何が向いているかより、何が好きか

――藤原さんは、もともといろいろなアイデアを考えるのが好きだったんですか?子どもの頃は、どんなお子さんでしたか?

私は岩手の田舎で育ったのですが、両親も仕事で忙しかったので、近くの山や川に行って釣りをしたり、そこらへんにあるもので自分でおもちゃを作ったりしてました。

小さい頃から、試行錯誤しながらものを作るのが好きでしたね。小学校の文集には、エンジニアになりたいと書いていたので、やっぱりモノづくりに興味があったんでしょうね。プラモデルもよく作っていました。

仕事を選ぶときには、適性も必要ですが、興味のほうが大事だと思います。興味のないことをやっても続かないですから。

CIMG2760 ▲一生懸命、説明を聞く学生記者

学生時代のさまざまな経験が、世の中と自分を知るきっかけに

――最後に、学生へのメッセージをお願いします。

私は、大学時代に障害者の在宅支援のボランティアを2年ぐらいやっていたのですが、そこで障害のある方や支えている方たちと出会って、こういう生き方もあるんだと、すごく刺激を受けました。

他にもいろいろなアルバイトをしましたが、そこで自分に向いていることや苦手なことがわかったので、いい経験になりましたね。

社会人になると一年があっという間に過ぎてしまうので、後悔しないように学生のうちにいろいろなことにチャレンジしてほしいと思います。

まとめ

“生産技術”のお仕事に向いているのはこんな人!
・ “モノづくり”が好きな人、興味がある人
・情報収集して計画を立てるのが好きな人
・アイデアを考えたり工夫するのが得意な人
・人と人をつなぐ役割、縁の下の力持ち的な役割にやりがいを感じる人
・課題に対して、「じゃあ、どうしたらいいか?」を考えられる人

いかがでしたでしょうか?
モノづくりの現場で活躍しているのは、職人さんや機械だけでなく、目立たないところで「生産技術」の方がとても重要な役割を担っているのですね。

理系の人が多い職場でも、文系の人が活躍できる可能性もあるとわかれば、仕事の選択の幅も広がるのではないでしょうか。

「興味がある」「好き」という気持ちがあるのなら、視野を広げてぜひチャレンジしてみてほしいと思います。

<学生記者からひとこと>
山本製作所は、精米機「こめ太郎」を製造している会社だということは知っていましたが、私たちが普段何気なく食べているご飯は、何らかの形で山本製作所が関わっていると聞き驚きました。工場見学は、始終ワクワクして面白かったです!
世の中には、私の知らない仕事がまだまだ多くあると感じました。自分が気付かないところで多くの人が働いているということを忘れず、過ごしていきたいです。(菊池みなと)

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株式会社 山本製作所

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