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  • 100年後の新しい農業の姿を作りたい「生きものを大切にする農業」「薬に代わる食」に取り組む(株)いにしえ 山形仕事図鑑 #133

山形県にとって身近な農業。

ひと口に農業と言っても様々なスタイルがありますが、殺虫剤、殺菌剤、除草剤など、”生き物を排除することで、自分たちの糧を得る”という農業の常識を、『生き物を大切にすればするほど、生物多様性を大切にすればするほど、おいしく健康的な作物が穫れるような農業』にしていきたいと思って農業を始める人もいます。

 

今回の山形で働く人

伊藤誠さん

山形県天童市に拠点を置き、自然栽培食材を使って、無添加の食品加工や販売を行っております、株式会社いにしえの伊藤と申します。

今回は、自分の経験と、いにしえを立ち上げるに至った考え方などをご紹介させていただきます。

 

野生動物の保護活動をきっかけに農業の道へ

2003年頃、私は仙台で会社勤めをしており、野生動物保護のボランティア活動にも積極的に参加していました。その中で、野性の傷病動物の治療と自然への帰還を支援する取り組みに関わっていました。

当時のNPO代表の武田修氏が、農家から「そんな動物を殺してしまえ」と言われたという話を聞き、その考え方に憤りを感じ、農業の在り方に疑問を抱くようになりました。
農作物を荒らしてしまう動物を「害獣」、鳥を「害鳥」、虫を「害虫」と呼び、あらゆる生き物を敵視している、私にはそう思えました。

農家の気持ちを考えると、農作物の被害は生活に直結する問題ですので、排除すると言う考え方は致し方ないと思うのですが、「他の生きものたちを排除して自分たちの糧を得る」というやり方に違和感を覚え、「命を大切にすることが美味しい作物を育てることにつながる」そんな農業にかえられないだろうかという思いが生まれました。
そこから、『あらゆる生き物と共存する農業の仕組みを創る』という明確な理念が確立し、私の農業への道が始まりました。

虫や動物などの生き物を大切にしたい、それらと共生するような農業のやり方を見つけたい、生きものと共生する農業の仕組みを、私たちは【生態適合農業(JEFA)】と呼んでいます。

 

 

「自然栽培」という手段で、食と文化を大切にする仕組みづくりへ

これまで、一般的な栽培の大規模果樹園で研修に従事したのち、青森県弘前市で自然栽培の野菜と果樹の研修を受け、自身の圃場で自然栽培のぶどう・りんご・ももを生産してきました。

自然栽培、有機栽培、自然農法、炭素循環農法など、栽培方法や呼び方は様々ですが、これらに取り組む人々の多くは、人と地球の健康、環境改善などの共通した目的を持っているように思います。そして、現代の農業を憂い、次世代のために行動し、自ら進んでリスクを背負って取り組むという覚悟が感じられます。

農法の違いを超えた目的の一致による連携は、地球環境、食文化、健康社会に前向きなインパクトを与えることに取り組もうと前身の会社を立ち上げ、古くから伝わる文化にこそ自然との関わり方のその真があると考え、社名を「いにしえ」と改めました。

 

 

農薬にも肥料にも頼らない栽培

一般的に【農薬】の役割は、虫や微生物による害を防ぐことが主で、一部では、果実の落下を防ぐのようなものがあります。また、除草剤と言われる、作物以外の植物を枯らすものもあります。

【肥料】の役割は、成長に必要な栄養を供給するもので、液体状のものから、顆粒のもの、そして堆肥といわれる植物や家畜の糞尿を発酵させたものなどがあります。また、緑肥と言われる植物を育て、それを意図的に土に漉き込むなどの方法で作物に栄養供給するなど、方法は多様にあります。

農薬と肥料を使わない「無農薬無肥料」、「自然栽培」などをやる理由として挙げられるのは、

・農薬や化学肥料が体に悪影響を及ぼす可能性があるから
・肥料が分解される過程で、環境に有害なガスを発生させることがあるから
・より自然に近い形で栽培したものの方が健康に良いと考えているから

などが主なものだと思います。

農薬や肥料を使わないことは、生産量の不安定、品質のばらつきなどを招くなど、生産者のリスクは大きいものですが、それぞれに想いを持ってそのリスクをとって取り組まれています。

いにしえとしては、消費者の皆様の理解を深め広げることで、そのリスクを分散することも大切な取り組みの一つです。

 

だから自然栽培。だから生態適合農業。

〇〇がダメという視点は、矛盾を生んでしまうし、批判と取られかねないのであまりしません。

SDGsにある飢餓を無くそうっていう項目を例に見ても、自然栽培、生態適合農業では、食料危機を脱するのは、かなり困難だし、そこを目的に栽培している人はほとんどいないように思います。そういった意味では、現在の技術では農薬と肥料に頼ることが最適だと思います。

つまりそれぞれの栽培方法には、それぞれに目的や最適な役割があって、どれも必要な経過を辿って進化しているものだから、これからどれを選択していくかっていることが大切なのかと思います。

今は、農薬と肥料に頼る農業が主流でも、50年後、100年後にそれに変わる新しい農業の姿があればいいなぁと思って取り組んでいます。

私が元々農業を始めた理由が 生き物たちとどう共生するかを考えての スタートで、「地球の健康」か「自分の健康」どちらを選ぶか、と二者択一みたいな質問を考えていたこともありましたが、わたしたちが何か動き出すと人も健康になるし 地球も健康になるそんな商品が作れないかなと思っています。

 

薬の代わりになる食

今、私たちは、食べ物が薬のような効能を発揮するようなものを作れないかと考えています。

その名も 「ショクスリ」(商標登録 申請中)。

本来は、食べ物って生きるためのものなので自分を健康にするべき はずなんですけど、今の病気の大半が食べ物の原因とした病気が多いです。元に戻す意味で薬に変わる食っていうのをやっていきたいと思ってます。

 

汝の食事を薬とし、汝の薬は食事とせよ

私たちがテーマとしている『薬に代わる食』。

この言葉に辿り着いたのは、ヒポクラテスという古代の医者の言葉です。

「食習慣が健康を害すので、これで改善を」という意味合いの健康食品や健康法が多く、広告でも予防医療などの言葉がたくさん溢れ、体調を崩したら「薬を飲む」という常識が定着しているように思います。

ですが、このヒポクラテスの言葉は、「健康をもたらす毎日の食事」という本質を示しているように私は受け取りました。

「薬の代わりになる食」と聞くと、体調が悪くなったときに治すために食べるものという印象を受けるかもしれませんが、それだけではありません。

現在の薬のような「飲んで数十分後には痛みがやわらぎ・・・」などのようなものよりも、1週間先、1ヶ月先などの将来の不調を見越して、やや長期的な視点で今の食事を変えていくというものです。

だから調味料やお米などの毎日の食事に欠かせないものから商品化しています。

「薬の代わりになる食」は、皆さんの食習慣を支えるものとしてご提供していきたいと考えています。

 

 

伊藤さんが働く、株式会社いにしえ

株式会社いにしえ

(いにしえのコラム・求人・イベント・インターン情報がまとまっています)

いにしえのインターンシップ

【有償インターン(社会人・学生)】人と自然環境の距離を近づける。「やればやるほど自然が回復する仕組みづくり」を体験

いにしえの求人情報

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