東北六県の味覚を一同に集め、赤坂の隠れた名店として知られている居酒屋「トレジオン」に2018年6月、3号店となる「東北酒場 トレジオンポート」が誕生しました。
最大100名までOKの大型店。
東北各地の自治体などとタッグを組み、食に関わるイベントも行っていく考えだといいます。運営会社の社長・吉田慶さん(34歳)に、東北への思いを聞きました。
震災の復興支援で東北へ
吉田さんは東京都出身で、東北とは縁もゆかりもありません。
加えて、もともと飲食業に身を置いていたわけでもありません。26歳までは、医学部への合格を志していたといいます。しかし勉強は一向にはかどらず、ダラダラ過ごす日々。そんな中で発生したのが、2011年3月11日の東日本大震災でした。「僕にも何かできることはないか」と足を運んだのが岩手県。ボランティアで携わった岩手県内のNPO法人の職員となり、復興支援に取り組みました。
『東北への思いを語る、トレジオン社長の吉田慶さん』
震災から半年、1年……と時間が経つ中で感じていたのが、「関心の風化を防ぎたい」ということでした。「忘れないで」というだけでは、響かない。
かといって、「お情け頂戴」とでもいうように支援を呼びかけるのでは、品物は買ってもらえても、継続した支援にはなりにくい。果たして本当に東北のためになっているのだろうか――との疑問も感じていたといいます。
「支援」ではなく「ビジネス」で
縁もゆかりもなくとも、岩手に身を置く中で、食べ物のおいしさと、人の温かさに引かれたという吉田さん。一方、2012年からはNPO法人の東京事務所の所長も務めましたが、東京では、東北の魅力というものが十分に伝わっていないということも痛感したそうです。そこで、「食」を入り口にして、より多くの人に東北の魅力を伝えようと、一念発起。「支援」ではなくビジネスとして東北に関わろうと、腹に決めました。
2013年10月にNPO法人を退職し、翌月、東京・赤坂に、1号店となる「浜焼きバル Tregion」(現在は東北バルトレジオン)をオープンさせました。
「Tregion」とは、スペイン語で「3」を意味する「tre」と、「陸、地域」を意味する「region」を組み合わせた造語です。復興支援に携わった三陸地方への思いを込めたそうです。
1号店では、東北の一つの県やまちにスポットを当てたフェアを計100回以上開催してきました。中には、常連客の中から「1日店長」を決めて、その人にフェアの内容をプロデュースしてもらうというユニークな取り組みも。
数多くの飲食店がひしめく赤坂の待ちでも、「隠れた名店」として人気、知名度を上げてきました。
100席の大型店 東北の自治体と連携したフェアも
2017年5月には、赤坂バル横丁内に、2号店となる横丁店(現在は 東北バルトレジオンプチ)をオープン。満を持して、3号店となる「東北酒場 トレジオンポート」が6月にオープンしました。(WEBサイト)
コンセプトは、「東京・赤坂のど真ん中に、東北を創る!」。
「ポート(=港)」には、「東北に関係する人・もの・ことが集まって交流が生まれる“東京にある東北の港町”になってほしい」との意味を込めたといいます。
『港をイメージした内装』
1号店、2号店とは異なり、最大100席まで用意可能な大型店。これまで数多くのイベントを手がけてきたノウハウを生かし、東北各地の自治体とともに、食の魅力をPRするイベントを請け負う計画もあるといいます。
地元の食材を生かしたオリジナルレシピを考案するなどして、新たな魅力作りにも取り組みます。トレジオンが目ざすのは「ファン作り」。
吉田さんは「トレジオンを介して伝えることで、その土地の食の魅力をさらに高めていくことができれば」と語っています。
『吉田慶さん(左)と「トレジオンポート」店長の清水政也さん(右)』
我らがソウルフード・芋煮は○○○に!?
メニューに並ぶのは、東北直送の魚を使ったアクアパッツァや鮮魚のカルパッチョなどの海の幸はもちろん、いわて短角牛のローストビーフや牛タンの赤ワイン煮込みなど、肉好きも大満足の料理の数々です。
山形県民のソウルフード・芋煮は、トレジオンの手にかかれば、ミネストローネに。
『芋煮のミネストローネ』
蔵王チーズの盛り合わせや、定番の玉こんにゃくなど、山形の味も用意されています。
『蔵王チーズの盛り合わせ』
『短角牛のローストビーフ」(岩手)』
『東北の漁師から直送される鮮魚も!』
酒どころ・東北らしく、各県の日本酒、地ビール、ワインもずらり。山形からは、くどき上手(鶴岡・亀の井酒造)や楯野川(酒田・楯の川酒造)、月山ビールなどが楽しめます。
『東北の銘酒も各種取りそろえ、酒好きも大満足間違いなしの品揃え』
しかしながら、太平洋側の食材・酒に比べて、山形、秋田の食材はまだまだ少ない。「トレジオン」の由来が「三陸」であることが示す通り、現状では太平洋側、とりわけ岩手県の食材が多数派を占めます。
率直な疑問をぶつけてみました。
「山形、少ないんじゃないですか」
吉田さんは「東北の6県でブランディングを図る方が相乗効果を狙える。今後、日本海側の食の魅力発掘も攻めていきたい」と、「日本海側」へのテコ入れも約束してくれました。
みなさん、山形のんまいもの、トレジオンさんに積極的に伝えでいぐべ!
(ライター:八木みどり)
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東北酒場 トレジオンポート
住所
東京都港区赤坂3-12-18 第8荒井ビル2F
営業時間
【月〜金】17:00~0:00(L.O.23:30)
【土・日・祝】イベント開催の場合のみ営業
→詳しくはホームページhttp://www.tregion-bal.com/shop-list/tregion-port/でご確認ください
電話番号
050-5595-5582
アクセス
東京メトロ・赤坂駅から徒歩1分(234m)
2番出口を出て、右方向に。坂を下りながら、左手の「すし好」と「吉野家」の間の通り(みすじ通り)に進みます。そのまままっすぐ歩いて1分弱、右手に見える「龍神丸」という土佐料理屋がある建物の2階です。
平均予算
4,000~4,999円程度
定休日
土日(イベント開催時のみ営業)