オフィス街である赤坂は、多くの人が行き交う繁華街であり、数多の飲食店がひしめくグルメ激戦区。そんな赤坂見附駅の赤坂出口から徒歩3分、ビルの地下へと続く階段を降りたところに『魚と旬の料理 まる』はあります。

 

ご主人長年の夢が形になった店『魚と旬の料理 まる』

“40歳になったら、自分の店を持とう”。そう胸に決め、上京して22年の修行期間を経て店主の佐藤弘行さんがここ赤坂に店を開いたのは、2000年11月のこと。

もともと、東京に漠然とした憧れがあったという佐藤さん。日大山形高校を卒業し、18歳で上京。和食料理店をメインに、いくつもの飲食店で経験を積みました。最後に働いた飲食店が赤坂にあり、たまたま良い空き物件に巡り合ったことをきっかけに、現在の場所に店を開くことに。こうして、上京当時からの夢であった40歳の年に『魚と旬の料理 まる』は誕生しました。

山形直送の食材をつかった料理と地酒、そして旬の魚介類を振る舞うこのお店。しかし、オープン当時は山形食材や料理には特にこだわらず、広く和食の店として営業を続けていたそう。

あるとき、お客さんの会話の中で山形県の出身だということが話題になり、山形の郷土料理を作ってほしいと言われるように。それから、お客さんの希望に応える形で山形の食材を使ったメニューや郷土料理を増やし、少しずつ山形料理の店として定着していったのだといいます。

 

旬を感じる季節野菜や山菜は、山形丸勘青果市場より直送!

店で提供する山形食材は、山形丸勘青果市場より直送してもらっているそう。山形丸勘青果市場社長の佐藤明彦さんはご主人の高校時代の同級生だそうで、長年のお付き合いはそのご縁と信頼から成り立っていることが伺えます。

例えば、GW前から6月の中頃にかけては、たらの芽、こしあぶら、赤こごみなどの山菜の天ぷらや、初夏になれば庄内のだだちゃ豆が味わえるなど、東京にいながらにして、その時々の山形の四季を感じられるのもうれしいところ。

もちろん、山形地酒のラインナップも豊富。雪漫々、米鶴や朝日鷹、初孫に東光、裏雅山流など辛口の酒をメインに、銘柄にこだわらず扱っています。料理に合うお気に入りの一杯に出会えるかもしれません。

山形の定番、芋煮や地元ではなかなか店舗で食べられる機会のないひっぱりうどんなども提供していて、飲んだ〆として人気なのだそう。

夜だけでなく、平日のランチも人気です。
その時々の旬の魚が5〜6種類も乗った、たっぷり海鮮づけ丼や、焼魚定食、刺身定食などがメニューに並びます。大盛り・おかわり自由のライスは、もちろん山形県産のつや姫を使用。リーズナブルに栄養のバランスの整ったラインナップに、女性の一人客なども多く見かけられます。

 

口コミで人が人を呼び、県民の交流の輪が広がる場所

「赤坂は、昔は高級なイメージがあったけど、今は立ち飲み屋の店なんかも増えて、随分カジュアルな街になったんじゃないかな。うちの店にも気楽な気持ちで来てもらえたらと思うね」と語る佐藤さん。

知人から美味しい“山形料理の店”と評判を聞きつけてやって来たことをきっかけにリピーターになる客も多く、企業の宴会はもちろん、山形の高校OB会で使われるなど、山形県出身者にも根強い人気です。中には、たまたま隣り合ったテーブルの人同士が山形の出身だったことがわかり、話に花が咲くこともあるのだとか。

この仕事の面白さを、佐藤さんはこう語ります。

「この辺りは会社の本社なんかも多いでしょう。だから、いろんな人が来ていろんな話が聞ける。それが店のおもしろいところだよね。意外な会社の社長や会長さんが山形の出身だったりもしてね。いろんなところに山形出身の人がいるもんだよ」

 

今年は20周年。これからも夫婦二人三脚でお客様一人ひとりを大切に

「若い時は、つまんない街だと思っていたけどね。この歳になって山形に戻ると、いいなって思うよ。時間の流れがゆっくりだよね」

佐藤さんは、地元山形をそう語ります。東京にやってきて、料理人として過ごして40年以上が経ち、料理は佐藤さん、ホールは奥様の二人で切り盛りしながら『魚と旬の料理 まる』は今年20周年を迎えました。

「子供も大きくなったし、できれば少し店の広さを縮小して、常連さんたちを相手にカウンターとテーブルのこじんまりした料理屋ができればと思って。俺ももう還暦だからね」

酒の進み具合はどうか、嫌いな食べ物はないかなど、お客さんの一挙一動にさりげなく気を配る真摯な接客がこの店の20年を作ってきました。

気持ちよく帰ってもらうためにはどうしたらいいのか? そんなお客さん一人一人を大切にする気遣いと心地よさが、常連のお客さんたちの心を掴んで離さない所以なのかもしれません。

【取材後記】

東京で、ふと入った飲食店に山形の食材や地酒を見つけたりすると、なんだかうれしくなってしまいます。口にすれば、その馴染み深い味わいに思わずほっとするような気持ちに。

こちらも、そんな山形食材を扱うお店。山形県出身者も常連に多いそうで、慣れ親しんだ地元の味と気さくな佐藤さんご夫婦の接客に癒される、故郷のような場所なのだろうな、と感じました。

ここでは、東京にいながらにして山形の四季を味覚で感じることができます。山形の味が恋しくなったら、ぜひ赤坂の『魚と旬の料理 まる』を訪れてみてください。

(ライター:大山めぐみ、新庄市出身)

 

魚と旬の料理 まる

住所
東京都港区赤坂4-2-5

営業時間
11:30〜14:00(L.O.13:30)、17:00〜23:30(L.O.22:50)

電話番号
03-3589-0312

アクセス
赤坂見附駅 赤坂出口 徒歩3分
https://goo.gl/maps/7WzvnVrB9DHbfnng6

平均予算
通常4,200円、宴会5,000円、ランチ850円

定休日
土・日曜・祝日
※土曜は予約で営業