この記事は、鶴岡ナリワイプロジェクトより転載しています。
「一人ひとりに寄り添うことが、人と街の未来を変える」広石 拓司 株式会社エンパブリック代表
鶴岡ナリワイプロジェクトを代表の井東敬子さんが始める時、「鶴岡は自ら動く人はいない」「主婦だからパートしかない」といった声を多く聞いたという。しかし、この2年間で、30人のナリワイ起業家が動き始め、仕事づくりに関する公開講座には年間のべ450人が参加している。事務局も「鶴岡で、こんなに人が来るんだ」と思ったという。
私たちは、地域を見る時、地域性と称して一括りに扱ってしまいがちだ。「この街の住民はまちづくりに熱心な人がいない」と言ったように。しかし、イノベーションの理論では、新しいことに最初に取り組もうとするイノベーター層は全体の2%程度しかいないという。つまり、地域で新しいことを始めようとすると、数十人に一人いる「動き出せる人」を見つけ出すことが大切になる。地域住民を一括りにしていると、可能性の芽となる存在を見落としてしまいがちだ。
一方で、「動き出せる人」は最初から動いている訳ではない。数十人に一人の状況では、同質性が高い地域コミュニティでは、一人だけ違う動きを始めることはリスクが大きい。だから実際に動かないし、口にもしない。口にしても「実現できるの?」と言われたりして、手を引っ込めてしまう。そのように思いがあっても口にしないと、もしかしたら身近に似たことを考えている人がいても存在に気づかない。こうして、思いのある人は孤立していく。
これからの地域づくりに必要なのは、動き出そうという思いのある人が集まる「場」だ。あるべき姿をただ議論するだけ、困り事の要望をいうだけではなく、実際に動ける人が集まり、相互に刺激し、助け合うことで、お互いの背中を押し合える。そんな場が求められている。
鶴岡ナリワイプロジェクトは、主婦の中に「自分の得意なことを活かしたい」という思いを持ち、動き出せる人が集まれる「場」を提供した。地域で動き始めているプロジェクトに参画するという形をとることで、自分だけが浮いた存在とならずに動き出せる環境を整え、その中で、お互いの動きに刺激を受ける場を整えた。そうやって動き出してみると、色々なことに出会ったり、失敗したりする。それを定期的に集まって、ふりかえりを重ねていくことで、一人の時には見えていなかった考え方や地域の資源、顧客のニーズへの理解が深まり、地域の中に自分の活躍できるチャンスを見つけ出すことができる。その結果が、2年間という短い時間で、しかも地域の中でほとんどコストをかけずに、継続的に自分を活かしながら動いていける30人となった。
こうして動き始めたナリワイプロジェクトの参加者たちは「つながりができてよかった」「自分の中にある原石が見つかった」「人生に希望がもてた」と語っている。お金のことも大切だが、それ以上に、地域社会の中での新しい自分の存在意義への手応えを得た人が多い。これは、地域での仕事づくりの持つ社会性を伝えてくれている。
これまでの地域での起業や仕事づくりの議論は「事業規模は?」「いくら稼いだのかのか?」という経済的な議論に陥りがちだった。
そして地域活性化も、特産品が売れるなど、経済の数字が活性化の指標になりがちだった。しかし、それは行政や事業者の視点であり、地域に暮らす人にとって大切なのは、「この街で暮らすのが楽しく、生きていくことに希望がある」ではないだろうか。例え、お金があっても、生きる希望がない街から人は去っていき、希望がなく、諦めている人たちだけが残る街に未来はないだろう。逆に、暮らしの充実と希望のある街には人が集まる。ナリワイプロジェクトにはUIターン者も多数集まった。都市暮らしを経験していた人たちは「鶴岡に戻ると居場所がないかと思っていたが、ここがあって良かった」と語っている。経済性だけでなく、話の合う人の存在や自己実現のできる機会がUIターン者には不可欠だ。
もちろん、希望にはお金も必要だ。しかし、金額の多寡以上に、自分の得意が活かされ、自分の問題意識から誰かに役立つことで得られる「自分自身への手応え」こそが、これからの地域社会には大切だ。「自分自身が動けば、何かが生まれ、お金を得られる」という手応えをごく一部のリーダー層だけでなく、多くの人に広げていくプロセスに価値がある。「大して稼げないなら意味はない」と言っていると、手応えを感じる人は増えない。手応えを感じ、動き始める人が増え、動く人に共感する人が増えてこそ、地域に新しい市場が生まれ、それが個々の人の売上高を伸ばすことにもなる。このようなプロセスを踏まず、ただ外部から工場を誘致しても、持続可能な地域にはならないことは既に証明されている。小さく動き始める人がつながり、自分の価値を見出し、地域で希望を持てる人を増やしていくプロセスは手間暇がかかるが、このプロセスなくして地域社会の未来はないだろう。
地域への影響力という点で、まだ鶴岡ナリワイプロジェクトは道半ばと言える。先にあげたイノベーションの理論では、イノベーター層を見て自分も動き出すのはアーリーアダプター層と呼ばれ、それは約13%を占める。イノベーター層とアーリーアダプター層を併せた約15%のあたりにキャズム(大きな溝)があり、それを超えるとメジャー層が動き出し、変化は加速する。今、プロジェクトは、動き始めたイノベーター層、公開講座に参加するアーリーアダプター層に広がってきているが、キャズムを超えるかどうかが、今後の流れを決めるだろう。ただし、ナリワイには希望がある。従来のまちづくりに熱心な層は閉じたコミュニティとなりがちだが、ナリワイは仕事であるがゆえに、顧客=メジャー層に働きかけ続けていくからだ。ナリワイを始めた人を見て、「私にもしてみたい」「できるかも」と思う人が現れ、その人が動き始めることができれば、この取り組みは、地域の、特に女性たちの生き方を大きく変えていくだろう。
そのためには、ナリワイを始めた人が相互刺激しあい、成長していく意欲を持ち続けていける場と、新しい人が始めたいと思った時に動き始める機会にアクセスできる環境が必要だ。この場や機会を継続していけるような仕組みを整え、担い手を増やすことは、残された課題だ。
鶴岡ナリワイプロジェクトが証明したのは、地域には能力やスキルのある人はいるが、手をあげるチャンスと支えあえる仲間に出会えていないがゆえに、その力は潜在化しているということだろう。主婦、高齢者、会社員と一括りにせず、一人ひとりの可能性に寄り添う人がいることで、自分の得意やしたいことを口にする人は増える。その人たちが自ら動いてみて失敗や苦労したことをふりかえって学びにし、お互いの動きから刺激を受け、応援しあえる仲間がいると実感できる「場」があることで、人は可能性を発揮できる。
小さな活動の示す可能性を、どう展開していけるのか。それが地域の実力となっていくのだ。
2017年ナリワイ実践講座
鶴岡ナリワイプロジェクトでは、”「好きなこと」と「身近な困った」をかけ合わせ、小さく起業するナリワイ”を始めるための実践講座を、実施します。
現在若干名の空きがあるため、期間限定で追加募集をしています。
「参加してみたい!」と思われる方は、
なぜやりたいいのか、思いを100文字程度にして
nariwaikoubou@gmail.comまでお送りください。
折り返し事務局より連絡いたします。
締め切りは4月5日(水)です。
鶴岡ナリワイプロジェクトは、2015〜2016年度、
公益財団法人トヨタ財団様の国内助成事業採択で誕生しました。
2年間で約30名起業講座修了生、公開講座900名にご参加いただきました。
2017年3月末で助成期間は終わりますが、
2年間の実践で見えてきた
「普通の人がちょっと頑張れば起業できる仕組み」
を社会に広げていくことが、重要との思いに至り、
2017年度も講座を実施することに致しました。
人口が少ない地方では、いわゆる起業講座は
ビジネスとして採算に乗りにくいため、
ほとんど公的機関が実施しています。
そんな中、事業として成立させるにはどうしたらいいか、
という「なぞなぞ」の答えは、参加者を少なくして
実施することでした。
2年間の経験・ノウハウをおしみなくお伝えし、
やりたい人がスタートを切れるよう全力で応援してまいります。
私たちと仲間になってくれる、
本気の方のご参加をお待ちしています。
鶴岡ナリワイプロジェクト チームリーダー 井東敬子
◆事業目的
「好きなこと」と「身近な困った」をかけ合わせ、
小さく起業する人を増やす。
これにより、地方都市での働き方の選択肢を増やし、
自分らしく生きられる地域を目指す。
◆講座の特徴
1、講座中、実践の機会がある。
起業で最もハードルが高い、最初の一歩を踏み出しやすくするため、講座参加中に、全員でテストイベントを実施します。
2、起業実践者による講義
3、少人数制のため、講師に気軽に質問・相談が可能です。
4、参加者同士のミーティング
互いのアイディアや経験から、
生きた学びを得ることができます。
通常、起業してから起動にのるまでの悩みを共有できる
仲間がいなく、孤独で挫折するケースが多い中、
最初から仲間ができるのでお互いに励まし合い、
助け合いながら楽しく起業を進めてゆくことができます。
◆講師
「井東敬子」鶴岡ナリワイプロジェクトチームリーダー、
リードクライム株式会社取締役
「黒澤由希」amber trunk代表ジュエリーデザイナー、
セールスパーソンインストラクター
◆スケジュール/毎回宿題あり
1回目 4月15日(土)9時30分〜12時
*オリエンテーション・顔合わせ
*自分の源泉をみつける思い掘り下げ、
やりたいイメージを明確にする
2回目 5月13日(土)10時〜12時
*自分のビジネスをブラッシュアップ
3回目 5月27日(土)10時〜15時
*「ミニ実践」自分の事業を20分で他のメンバーに伝える
*ミニ教室をふりかえり、すべきことを明確にする
4回目 6月10日(土)10時〜12時
*価格設定とセルフブランディング
5回目 6月24日(土)場所未定 終日
*イベント実施
*イベント実施ふりかえり
6回目 7月8日(土)10時〜12時
*事業計画を発表
◆こんな人に来て欲しい(男女問わず)
・子育ても大事にしつつ自分らしく働きたい方
・やりたいことはあるが、最初の一歩が踏み出せない方
◆参加条件
①本気で、ナリワイ起業する意思があること。(起業一年未満の方)
②すべての回に参加する意思があること。
③フェイスブックを利用できること。
④パソコンがあり、使えること。
⑤「月3万円ビジネス」藤村靖之著を読んでいること。
⑥規約を守れること。
◆場所:鶴岡市内(参加が確定した方にお知らせします)
◆募集人員:6名(最小催行人数3名)
◆参加費:3万円(*補助金・助成金ははいっておりません)
*参加費は、1回目の講座の際(4/15)、一括でお支払いください。
*途中でやめても、返金いたしません。
◆締切:3月31日(金)正午
【こちらは締め切りました。追加募集の締め切りは4月5日(水)です。】
◆参加者特典/3つ
1、2016ナリワイ卒業生で作る会の毎月1回開催のミーティングに参加できます。
2、井東または黒澤いずれかの個人コンサル、延べ3時間を受けられます。(7月31日まで)
3、あなたの1回目募集告知広報文の添削と1回目の事業の広報協力をいたします。
◆参加者の声
*「失敗を恐れず、チャレンジしてみようと思うようになりました。」
*「自分では当たり前と思っていた自分の知識や技術、センスはたいしたことないと思っていたけれど、たくさん褒めてもらえたことに驚きました。これまで出し惜しみしていた部分が多かったんだなぁ。」
*「自分らしさを捨てずにむしろ磨いていくことで、どんどん付加価値がついていく。自信にもつながっていく。どんどん先のことが楽しみになりました。」
*「一人でやるのも、それはそれで良いのですが、仲間と何かやる方が、また別の意味で大変な分、感動や喜び・絆も生まれることを知りました。」
もっと知りたい方は、ナリワイインタビューへ
◇申し込み手順◇
1)『メールでお申し込みください』
メールのタイトルは「2017ナリワイ講座 参加希望」。
送信先:nariwaikoubou@gmail.com
お名前/メールアドレス/携帯電話番号/現在のお仕事/どんなナリワイをやりたいか100字程度/参加の動機100字程度をお送りください。
後ほど返信メールを送ります。
(※面接時間は20分)
2)面接を受ける。
↓
3)合否判断をメールでご連絡
↓
4)1回目の講座で、申込書記入・支払い
<面接をする理由>
主催側と参加者の認識にズレがないか確認するための面接です。(所要時間:約20分)
1、お互いの意思確認
・求めているものに大きなズレはない?
・参加希望者の不安解消のため。
2、やる気&コミュニケーションを確認するため。
3、ルール確認のため。
・参加する際のルールをこの場でお話しします。
◆ナリワイってなぁに?
それは、自分の「好きなこと」と「身近な困った」をかけ合わせ、月3万円の利益を目指す小さなビジネス。
(具体的にはこちらをご覧ください。)
ナリワイは、暮らしの中から生まれます。
自分・家族・友だちが、ちょっと不便だ、
困ったと感じることを、
好きなこと・得意なこととかけ合わせ
知恵を使って小さなビジネスにします。
1人でやるより
気の合う仲間とやると
どんどん広がっていき、わくわくもアップします。
かれこれ4年、ナリワイ起業家育成をしているので
山形県庄内地方には、すでにたくさんの仲間がいます。
長岡・柏崎・埼玉はじめ、全国にもたくさんの仲間がいます。
その人たちとつながれば
もっと、わくわくが広がります。
小さいといいこともたくさんあります。
売れなければすぐに軌道修正できます。
だから、金銭的にも精神的にも痛手が少ないです。
それから、
時間に縛られないのでいろんなことと掛け持ちができます。
子育てや介護、農作業やアルバイト
大きなビジネスを否定しているわけではないです。
十人十色、それぞれに合った働き方の選択肢を増やしたい。
と思っています。
小さくていいから、やりたいことを仕事にしたい。
人の役に立つ仕事をしたい。
自分らしく生きたい・働きたい。
気持ちいい仲間がほしい。
そんな思いの方お待ちしております。
欲しい未来は自分で作ろう!仲間と作ろう!