いつかは故郷の山形に戻って活躍したい。自らの可能性を新天地の山形で見出し、精一杯力を発揮したい。そうした想いを心の片隅に抱えつつ都会で頑張っている方は、意外と多くいらっしゃると思います。

株式会社キャリアクリエイトが、そんな“山形が気になる”ビジネスパーソンのみなさんに向けて、挑戦を続ける山形県内の「攻めの会社」をご紹介する、このコラム。

今回は、白鷹町に伺いました。

 

 

扉を開けると、淡い光に包まれた店内には、甘酸っぱいトマトの香りが漂っています。

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ここは白鷹町にあるイタリアン料理 シャッタカ。

 

白鷹町の季節の野菜と、地元のお肉をメインに、本場イタリアの食材を加え、ここでしか味わえないイタリアンメニューを提供しています。テーブルへ登場したのは「ブッラータチーズとセミドライトマトのスパゲッティ―ニ」。

パスタ

オーナーシェフの安達稔さんが目の前でチーズにハサミを入れると、真っ赤なパスタにトロ~リ。セミドライトマトとパスタ、チーズをうまく絡めて口にすると、トマトの甘み・旨みをチーズが優しく引き立て、その美味しさに思わず歓声を上げてしまいました。

 

 

 

心に決めていた、白鷹町で生きる道。想いから繋がった出会いそして、料理修行と探求の日々

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安達シェフは、白鷹町出身。

高校を卒業後、酒田市にある東北公益文科大学で環境について学びました。

一人暮らしを経験すると、子供の頃から興味のあった料理に再熱。度々友人を招いてはご馳走し、喜んでもらえる様子を見つめ、料理人になりたいと思うようになったそうです。いずれは白鷹町に帰りたいという想いから、ただ帰るではなく「生きるための武器」に「技術」がほしいと考えた安達シェフ。

進路について大学に相談したところ、教授の繋がりから山形大学農学部の江頭宏昌教授へ相談、江頭教授からアル・ケッチァーノの奥田政行シェフを紹介いただきます。しかし、卒業時アル・ケッチァ―ノでは料理人の募集をしておらず、奥田シェフの繋がりで千葉県にある洋菓子店へ修行に。1年後再び庄内に戻り、奥田シェフのもと修行をすることになりました。奥田シェフの手掛けた料理に引き込まれ、山形の食材の美味しさに感動、夢中で修行する日々を過ごします。

シャッタカ2

 

 

本場イタリアでの修行と巡ってきた独立の扉

いつも脳裏に浮かんでいたのは故郷「白鷹町」のこと。

そこで自らのお店を出すこと。

6年の修行後、もっと本場を知りたいとイタリアに旅立ちます。当時、世界情勢が悪い時期にあたり、ビザが降りず、3か月という限られた滞在でしたが、少しでも多く知りたいという想いから、イタリア各地で食べ歩いたり、短期間お店でお世話になるなど、非常に濃い学びの時間を過ごせたそうです。

日本に帰国後はすぐさま白鷹町へ。お店設立に向けて準備を始めました。

すると師匠である奥田シェフから「お店を少し手伝ってほしい」との連絡が。頼まれたのは調理だけではなく、フロアのお客様まで。店の状況を考え動き、お客様を満足させるオールラウンダーとして修行することになります。

そして2年後、産直のイベントで偶然出会った白鷹町の方に、空き店舗の紹介をうけ、独立を決意したのです。

店内1

 

 

故郷の味、そして生産者の努力を新たな価値に

「奥田シェフの料理には、食材やそれを育てた生産者への愛情が詰まっていました。またイタリアで感じた、その地域の人々の地元愛の深さ。料理の技に留まらないたくさんの学びが、今の自分に活かされています」と安達シェフ。

そして白鷹町で育てられた四季折々の食材の魅力に惹かれながら、様々なメニューでお客様をおもてなししています。

そもそも安達シェフのご実家は、リンゴやラ・フランス、アケビ、野菜栽培する農家。家族が育てた作物の美味しさが自慢です。

しかし、現実的には育てられた作物の4割がA品として販売され、残りの6割はB品として安く買い取られ、加工へ回るのだそうです。

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B品と言えども、味は確か。

安達シェフは、付加価値を付けて販売する加工に注目。季節の定番となったホワイトソースで仕上げるアケビのパスタを始め、忙しい合間をぬってはジャムやコンポートを手掛け、お客様に提案するようになりました。

 

食材、料理へのこだわり

とある日の朝、白鷹町内の産直にて。開店を待つお客様の列に、安達シェフの姿がありました。

「最上川の河岸段丘で肥えた白鷹の大地から、風土を活かした様々な特徴を持つおいしい食材が生まれています。少量で様々な品種の野菜を手掛ける生産者が多く、産直は早く行かないと出会えない食材もあるんですよ」。

生産者と直接ではなく、産直を通して仕入れを行うのには、生産者同士のわだかまりを防いだり、生産者と料理人が平等に努力をし合い、より良いモノを提供していきたいという、想いがあるからだそうです。

シャッタカのメニュー表には訪れる度に変化があり、お客様を飽きさせないという魅力も。特産のミニトマトをはじめ様々な野菜・果物、米沢牛や馬肉、たくさんの食材が安達シェフの世界観と共に満足の一皿となって登場します。

「季節によって食材が異なるのはもちろん、ないモノは出さない。でも、ハウスで栽培している生産者の方もいますから、冬でも野菜が途切れることはありませんよ」。

お店の周りではバジル、セージ ミント タイムなどのハーブを育てていて、旬の時期にはドライトマトも手作り。

「生のミニトマトをたっぷり使ったパスタも人気です。天日でじっくりと乾燥させると、甘みと旨みが凝縮されてさらにおいしく。それを冷凍して使ったりもするんです」。

セミドライトマト

お客様の中には、料理を食べたあと、食材に興味を持って尋ねられることも多いそう。

「食材の良さは調理しすぎることなく、そのままお客様に伝えます。食材を育てた人、そして白鷹町の良さをその料理からも感じてもらえたらうれしいですね」。

 

白鷹町での飲食店経営

お店は今年5年目に突入。

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オープン時は期待感からか、大勢のお客様が来店しましたが、2年目からは一時的にお客様が減少。

ここから様々な工夫を重ねてきました。

白鷹町内のランチといえば主流はラーメンやそば。値段の違いを感じられないように、コストパフォーマンスも考慮。本日のパスタは1000円から食べられ、値段が上がるメニューほど食材にかかるコストは店が負担しており、お客様はお得に食べられるようになっています。

趣味のカメラを活かし、食材や料理を撮影、facebookなどのSNSで、イベントや季節のメニューを発信することで、毎年県外から旅行を兼ねて来店する常連さんも獲得。

白鷹町の宿泊店との連携も開始し、4年目の昨年は再び開業当時の売り上げに戻しました。

 

 

「シャッタカブランド」で白鷹町を発信したい

シャッタカが手掛ける料理から、白鷹町がもっと元気になってほしい。そのためにシャッタカはもっともっと成長したい!

安達シェフが次なる課題として上げているのは、効率の悪さから実施できないでいる「ランチからのピザの提供」と、「食材の加工」、そして「イベントなどでのPR販売」です。

店内は23席。ゆっくり会話を楽しんで食べてもらうとすると、一日に来ていただけるお客様の数には限りがあります。「もっと白鷹町の食材を発信するために、食べた人がシャッタカに興味をもってくれるよう、お店以外の場所で加工品を販売したり、真空調理したもの、ソースなどの加工品、お土産や贈答用商品も手がけていきたい」と安達さんは展望を語ります。

2016年夏に米沢で行われた野外イベント「Y-1グルメグランプリ」ではカルツォーネの販売に挑戦し、開始からわずか2時間ほどで500食を完売。確かな手ごたえを感じています。

 

そして、今後の新しい展開を仕掛けていくのに必要だと考えているのは「仲間」。

 

食いしん坊で、溢れる情熱と食への探求心を持って、わくわくしながら共に料理をしていく仲間との出会いを心待ちにしているそう。

店内2

「白鷹町は良い食材が安く、山形市内にも比較的近いですし、県内でも雪は少ないので暮らしやすいです。また実家は農業を営んでいるので、栽培についても学ぶことが可能。私にはイタリアやアメリカからの輸入業者との繋がりもあるので、ここで料理をすることで得られるものは多くありますよ」。

 

 

安達シェフの想いに新たな力が加わったら、白鷹町の魅力が詰まったご馳走がもっともっと増えていきそうです。

更なる展開が楽しみです。

 

 

※この記事は、東北経済産業局「平成28年度東北地域中小企業・小規模事業者人材確保支援等事業((2)事業)」の一環で制作しました。

Profile

イタリア料理 シャッタカ 安達稔さん

大人も子供も居心地の良い場所で、かしこまることなく料理を楽しんでもらいたいと、店内にはユニークな雑貨がちりばめられています。

【イタリア料理 シャッタカ】

〒992-0832白鷹町荒砥乙553-1
Tel.0238-85-0910

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