TVで関東に数センチ雪が積もるって大騒ぎしているけど、山形県人にとっては冬に雪が降るのはあたりまえ。
例年だと2月上旬が降雪のピークとなるのだけれども、今シーズンは早くから雪が積もり、12月の積雪は平年同期比の1.5~3倍増。
寒いし、お金もかかる(行政としての除雪費だけではなく、個人的にもスタッドレスタイヤ買ったり灯油買ったりしなきゃいけないもんね)し、やっかいものの雪だけど、でも雪ってそれだけじゃないような気がする。


野菜を甘くする、雪

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山形の在来野菜、赤根ほうれん草って知っていますか?
満天★青空レストランにも取り上げられたりしたのですが、最盛期になると糖度がまし、15度以上(メロンより甘いと言うこと)になるほうれん草。
根っこがすごく太く、大株になるのが特徴なのですが、この甘みが出るのは雪のおかげです。
また、キャベツや人参などの野菜を雪の下で保存する方法があります。
寒河江市の高屋では「越冬だいこん」を生産しているのですが、これは種蒔きする時期を遅らせるのではなく、普通に秋に収穫する大根を少しだけ遅らせて栽培し、一旦収穫したものを畑に並べてワラと土をかぶせる。
その上に雪が積もるのですが、それを雪の中から掘り出して冬に出荷するのだそう。
生産農家の方曰く、冬にスーパーなどに出回る普通の大根にくらべ、柔らかくて甘みが多いのが特徴だそうです。
どうやら雪の中で野菜たちは寒さに耐えて生き延びようと、デンプンを糖に変えるのがその理由のようです。
こんな美味しい野菜を食べることができるのも、雪のおかげ。


環境を作る、雪

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これは以前私のコラムで書いたのでおさらいになりますが、お漬け物の発酵は低い温度で時間をかけて発酵させたほうが良い味に仕上がります。逆に高い温度だと「発酵」ではなく「腐敗」してしまいます。
その為、美味しい漬物は東北や北陸などの寒い地域の名産になっています。雪は冷蔵庫の代わりになる訳ですね。いや、水分を適度にあたえるので、冷蔵庫以上の働きか。
また、前々回の日本酒を取り上げた時にも書きましたが、日本酒も似たような感じですね。
「寒造り」と言われますが、お酒を造る工程で重要な発酵においては一定の低温状態が必要とされ、発酵途中の温度管理の観点からも冬の気候がまさに最適な環境です。
しかも寒いだけではなく、雪は空気中のチリや雑菌を包み込み、空気がクリーンな状態になると言われておりますので、冬の寒さだけではなく、雪もいい酒造りには重要な条件の一つです。
美味しい日本酒が飲めるのも、雪のおかげ。
そうそう、雪の活用と言えば日本酒ではこんな事もやります。


保存するための、雪

IMG_2965最初に述べた野菜の保存ともちょっと似ているのですが、出来上がった新酒を雪の力を利用して低温貯蔵することで、日本酒をまろやかさを増していく「雪中貯蔵」という方法があります。
この写真はちょうど雪の中から掘り起こした時のものですが、雪の山をつくりこんな感じで保存したり、大がかりな施設だと何トンもの雪を貯蔵して、その冷気で保存したりもします。
野菜の時と違い寒いから化学的に変化すると言う訳ではないのですが、雪中貯蔵は、ようは寝やすい環境をつくる、とでも言えるかも知れません。
お酒がまろやかになるのも、雪のおかげ。


土を洗浄するための、雪

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スイカの名産地、尾花沢のスイカ農家さんへおじゃました時の話です。
「この辺は3mぐらい雪が積もるんだ。雪どけが遅くなってスイカの植栽が遅くなってしまう時もしばしばあって、毎年春になると気が気じゃないんだ。ここから少し先に行って橋を渡ればぐっと雪も少なくなるんだけど、でもここでスイカを育てている。
これはあくまでもオレの実感だけど、たくさん積もった雪がゆっくりゆっくり溶けて土を洗浄してくれるので、こんなに同じところに同じ作物を植えても、連作障害(同じ野菜を植え続けると、その野菜に害為す病原菌や有害線虫が多くなったり、土壌の中の特定の養分が不足したりして、野菜の生育が悪くなったり病気になりやすくなったりすること)が起きないんだ。雪でしっかり休んで、雪解け水で悪いものを流してくれる。」と。
その後山形で一番有名な農家であるガールズ農場さんに聞いても、「やっぱり雪が降るところの方が、土は元気ですね」とおっしゃっていた。
大雨だと土が流れちゃうけど、ゆっくり溶ける雪解け水はそうならないから、農作物にとっては無くてはならない存在なのかも知れない。
大地を洗い流し、ゆっくりと寝かせてくれるのも、雪のおかげ。


魅せるための、雪

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今年は2/27〜3/1,3/6〜3/8の日程で開催される予定の、月山志津温泉「六十里越街道 雪まつり 雪旅籠の灯り」。
私は昨年行ってきまして、今年も行く予定です。
月山志津温泉は昔から月山にお参りに来る人たちの宿場町で、豪雪を利用してこの地域にふさわしいイベントをしようと、雪の旅籠を作って昔の町並みを再現したのだそう。
例えばサッポロの雪祭りなど、雪や雪像で有名なお祭りはありますが、この「雪旅籠の灯り」がほかの雪まつりと違う点は、重機で雪を積み上げたり集めてきたりして作るのではなく、自然に積もった約6mという雪を削り、手作りで町並を作っているところ。
人口的に作った雪像であればもしかしたら周囲に何か影響をあたえるかも知れませんが、ここは自然に積もった雪を削っただけですから、イベントあるなしにかかわらずこれまでと変わらない自然の営みによって融け、これまでと同じように水となって月山に溶け込み、伏流水となって寒河江川に注ぎ、私達寒河江市民の飲み水になったりしております。
非常に幻想的なイベントですが、地域の特性を生かした活気あるイベントとして、「第13回 ふるさとイベント大賞」 最高賞の総務大臣表彰を受賞したそうです。
ろうそくの柔らかな灯りによって照らされる町並はとっても趣があり、しかも中はかまくらのような感じなので、ほっとできる空間になっております。
こんなに寒いのに心がホッとするのも、雪のおかげ。

 

まとめ

雪が降ると除雪をしなきゃならないので、本当にやっかいです。
たぶん山形に移り住むと場所によって多い少ないはあると思いますが、切っても切れないものになるでしょう。
でも雪もこんなメリットがあるってわかって頂ければ、ちょっとは愛おしくなる・・・かな?
雪片付けはダイエットにもなるしねw

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この記事を書いた人

後藤 健一郎

さくらんぼで有名な山形県のどまんなか寒河江市に生まれ、大学も就職も山形という山形以外には住んだことがない陸封型山形人。 山形のタウン情報...

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