夏は暑いし、冬は寒い。山形の四季が嫌いだった。

でも、四季を通してプライベートが充実してきたら、仕事が楽しくなってきた。

中学2年の青木少年は、考えた。

「人間は自然界で一番弱い生き物だ。みんな服を着ないで生活してたら人類は絶滅しちゃう。だって、ハダカでその辺歩いていたら誰もコーフンしなくなっちゃうじゃない。神様は、動物には発情期を、人間には服という画期的な発明を与えた。どうせ洋服着るなら楽しもうよ。」

俺、洋服は完璧だから、原料覚えたら無敵じゃない?!

#001の大江さんに、山形の一歩踏み出している人を紹介して下さいをお願いしたところ、青木さんを推薦頂いた。

待ち合わせのカフェに、営業帰りのスーツケースをガラガラと携えて彼はやってきた。ハイセンスなブランドに糸を提案するアパレル業界に努めているだけあって、さすがオシャレ。胸元にはニットッタイ。つい聞いてみた。やっぱり、洋服が好きなんですか?

「そうですねー。小2くらいから、自分の洋服は、自分で選ばなきゃ気が済まない!という位、洋服が好きでした(笑)高校卒業は、服飾の専門学校行ってアパレルマーチャンタイジング(※)を学びました。なので、どうしてもアパレルで働きたい!って思ってましたね。東京でアパレルのバイトもしていたし。」

※…洋服の原料発注から、お店に並ぶまで、ブランド運営のこと

―同じアパレルでも「糸」の開発製造を行う現在の会社を志望したのはなぜだったのだろう。

「東京で就職活動もしていたんですけど、長男でゆくゆくは山形帰らなきゃというのも、ずっとあったんです。その頃、有名になり始めていた佐藤繊維さん(※)を知り、「ニューヨークや世界に発信している会社があったなんて!」と驚きましたねー。その時にふと、「俺、そういえば原料についてって、何も知らないな」って気づいたんですよ。専門学校の授業でも原料素材論ていう授業があったっちゃあったんですけど、聞いてなかったというか、寝…(ごにょごにょ)まぁまぁ。

※…寒河江市にある紡績企業。珍しい糸を生産し、海外ハイブンドにも採用され、近年では佐藤繊維の糸を使用した「ニナリッチ」のニットスーツをアメリカ・オバマ夫人が着用した事で話題に。

洋服については誰にも負けないっていう根拠のない自信だけはあった僕は、「俺、洋服は完璧だから、原料覚えたら無敵じゃない?!」って勝手に思っていて(笑)そこでちょうど、知り合いから現在の会社を紹介されたんです。「こうゆう、糸作っている会社もあるよ」って。求人募集はしてませんでした。でも、自分は大丈夫、という根拠のない自信と、原料を知りたいという想いと、名前が知られてないだけ、この会社にはポテンシャルがある!と思い、糸を作る会社に応募したんです。」

自信もろくも崩れ去る

「最初の2年間は、工場勤務でした。アパレルのこと知っていると自信満々でしたが、見事に打ち砕かれましたね~。今までの俺ってなんだったのか、と。もう、原料のことイチから勉強です。うちの会社は、ウールの糸を中心に様々な糸を生産してるので、イギリスやオーストラリアなど世界中から糸の原料が集まってくるんです。同じウール一つをとっても、違いを突き詰めていくと原料の違いや、その製法がわかってくる。こんなに様々な原料や糸を見れる工場ってそうそうない。糸を作る機械の音を聞いてるときにシアワセを感じます(笑)」

―その後、営業職となり、いまは様々なメーカー・ブランドに自社の糸を提案している

 

「糸の色数はどこにも負けない自信がありますね。うちの会社の糸のカタログ(カラーブック)って、全部自然を参考にして作るんです。

自然界には沢山の色がありますからね。カラーブックを作るときには、写真200枚位撮影するんです。

単純に色を似せることもしますし、その景色を見て感じる想いを糸の色にすることもあります。例えば雪景色を見て、「こんな寒いときはやっぱり温かい色だよな~」と、暖色系と決めたり。最終的には「着たいか」「着たくないか」の顧客志向ですけどね。うちは、お客様が糸を1キロから購入できるシステムになっていて、便利に使ってもらっています。ただ、主力であるウール糸の業界状況を見ると、ニットの国内総販売量に占める国内生産量は、1%未満なんです。ヘタすると、このまま無くなってしまう業種。だから、異業種とのコラボや、他社とのコラボなど、いろいろとチャレンジしていかなければならない。その中でもやはり、海外に目を向けて行かなければと思って日々動いています。」

雪のアウトドアでヒラメキの回数が多くなった

糸のこと、ファッションのことを嬉しそうに話す青木氏。そんな彼の仕事の原動力は、アウトドア。

特に、雪山でお金をかけずに遊ぶこと。

「最初は、一人で夏山登山とかしてたんです。1人で充実できるタイプなんで、一人で行って自己完結してました。そのうちに、友達に誘われて冬山登山するようになった。そしたら、アウトドアショップの方とか、その知り合いとか、いろんなつながりが出来だした。雪山行くようになってから、本当に、いろんなジャンルのいろんな人とつながりができてプライベート充実してきたんですよ。みんなで本気で遊ぶのが楽しくって。そうやって、本気で遊んでいると、メリハリが出て仕事も楽しくなってくるし。それに、ぼくの場合は、雪山でzipfyというソリに乗ったりして本気で遊んでるうちに、仕事のアイディアが出てくるようになった気がします。雪山行くときにはウールのTシャツ着るんですけど、「うちの糸もこうゆう提案できるなぁ」とか。ヒラメキの数が増えましたね。」

―大嫌いだった山形の冬。だけど、今では四季の中で一番好きなのは「山形の冬」らしい。

「いや、18歳で上京した当時は、こんな田舎いやだー!!って思って出ました(笑)夏は暑いし、冬は寒いし、山形の四季というものが嫌いだった。Uターンしてきて、数年は山形に対して何も特に思ってなかったんですよ。登山とかするようになって、なんとなくジワジワと、山形も良いところだね、って思うようにはなってったような気はしますけど。だけど、雪山で遊ぶようになって、もう完全に山形の自然を愛してますね!!仕事柄、東京出張によく行くから、仮に、東京営業所が出来て東京で働くことになったとしても、土日は、絶対山形の自然に触れたいです!てゆうくらい好きです!東京に戻りたいって思った事はないですね~。」

最後に、一歩踏み出したい人にメッセージを。

「楽しんで!とにかく楽しんでと言いたい(笑)いやなこと程楽しんでほしい。生活を楽しんでほしい!プライベートを楽しんでほしい!プライベートが充実すると、きっと仕事も楽しくなるから。

(楽しみ方がわからない人はどうすればいい?と聞いてみる)うーん、、そしたら、なんでもやってみる!俺も冬嫌いだったけど、今は冬大好きだし!(笑)どうせ山形の冬は雪100%なんだから、楽しんでやろう!ってね。」

Iターンで山形にやってきた若者にも、「仕事ばっかりじゃ行き詰まってしまうだろう」ということで、いろいろと遊びに誘っている青木お兄さん。「山形に若者を増やしたい。Uターンしてきて遊ぶ友達いなかったら、俺に電話してきていいから!電話番号載せていいよ!」とまで語ってくださった。

こんな人が山形で自分の身近にいたら、きっと日常が楽しくなるだろうなぁ。

Profile

青木誠人さん

出身 天童市
生年月日 1982年1月14日
URL https://www.facebook.com/aokimakoto

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