東京生まれ東京育ち。大学卒業後、国の天然記念物 東尋坊(とうじんぼう)で有名な福井県・三国町に2年、国立公園になっている福島の裏磐梯に半年。それから中沢さんは何かに導かれるように、井上ひさし氏(山形県川西町出身の劇作家)が設立に関わったシベールアリーナ(山形市)にやって来ました。
今回のやまがたで働く人
シベールアリーナ 事務局スタッフ
中沢花織さん
井上作品との出会い
国語の教科書に出ていた井上ひさし氏の作品にはじまり、中学生の頃には出版されている文庫本を全部読むほどのファンに。中学の国語の先生がこまつ座(井上作品を上演する劇団)が好きだったこともあり、太宰治や宮澤賢治の評伝劇を舞台で観るように。
「太宰や賢治の作品を読み、井上作品を読み、農業や米の話が出てきて、自分の興味と井上先生が書いているものがシンクロしていきました」と中沢さん。
大学生のときに山形県川西町で行われていた井上ひさし氏が校長を務める「遅筆堂文庫生活者大学校」に参加するはずだったのが、怪我のために行けなくなり、その参加者資料が欲しいと手紙を書いたのが、こまつ座職員の目にとまり、こまつ座でアルバイトスタッフとして働いたことがありました。
前職は絶景の中での勤務
大学時代は、文学部で演劇映像を学びながら、劇団でアルバイト。その傍ら森林ボランティアや農山村の体験実習などをしていたなど、「演劇」「自然」という複数の興味を同時進行で深めていました。
大学卒業後、最初に働いた場所は福井県の東尋坊。断崖絶壁があって日本海まで歩いて5分。次が福島の裏磐梯の標高800mのウォーキングコースの中。
「すごい環境の中で仕事をしていました。裏磐梯に来て半年が経つ頃、シベールアリーナからの誘いがありました。開館と同時にお誘いをいただいていたのですが、すでに就職先が決まっていて、行くことができなかったのです。福島から次は山形へ行こうかという感じでした。」
会社からの辞令で全国どこへでも行く自分に驚きつつ、見ず知らずの土地ではあっても、もともと東京にいる気はなかったのだそうです。
「仕事があったから来られたんですが、むしろ山形で暮らしてみたいという思いが先に立ちました」。
シベールアリーナでの仕事
大学時代に築いた縁がきっかけとなり、声がかかって、2010年に芝居、講演会、コンサート、企画展示などの活動を行う、多目的イベントホールであるシベールアリーナの職員となります。
ここでの仕事は公演の宣伝になることすべて。出演者に会い、一緒に運営していく方々、チケットを買いに来てくれ、ホールに通ってくれる人たちに、作品や講演者の魅力を知ってもらうことです。
中沢さん自身の人生を決めたのが、舞台との出会いであったように現在の仕事には、人生が変わるんじゃないかと思う瞬間がさくさんあるのだそうです。
「月に2~3回、貴重な話が聞けて、得難いものを自分も得ている、贅沢だなと思います。イッセ―尾形さんの舞台では演じてる職業や一人ひとりへの尊敬があって、演じているのがわかりました。自分も周りのひとを見る目が変わってきました。ヒロシマとナガサキに落とされた原爆で父母や子どもを亡くした方たちの手記を朗読する女優さんたちや、歌手の加藤登紀子さん、永六輔さんなど、自分の何倍も様々な経験を重ねた方が同じ場所にいること、その言葉の一つひとつに感動しています」。
プライベートの過ごし方
仕事を終えてスーパーなどで買物をし、午後7時には住まいへ戻りゆっくり夕食を作ります。
「TVはほとんど見ません。いただいた野菜の下処理とか時間がかかるじゃないですが。今回のイベントのポイントはここだったなと、ほぼ毎日メモを書いていたり。今日することがあるというのはうれしいんですよね。余計なことで気が散らないのがいい」。
休みの日は福井ナンバーの車でいろんなところに行くのだそう。住まい近くの上山クアオルトウォーキングとか、泊まりがけで体験してきた関川のしな織り、前職では登山ツアーをやっていたそうで、羽黒山、蔵王へも行き、機会があればいろんな山を登りたいそうです。
手仕事が好きで、鶴岡のしな織を体験したことも。置賜エリアでは小野川温泉、南陽市のさくらんぼ農家で摘果(てきか)作業の手伝いなど。高畠町は有機農法の星寛治ざんのいるあこがれの地だそうです。
将来の夢は、自分の家を自分で作ること
「ここの景色いいんですよ」とか言ったりするの好きなんです、と、中沢さんが連れてきてくれたのは、展示室の最上階。晴れた日には月山が見える。
「前の仕事でも、その地で遊んだ経験、あそこいいですよとか、花が咲いていますとか、お伝えするのが好きでした。アリーナでの仕事も思いは一貫しているつもりです。芝居や音楽、講演の世界に、いろんな方を連れていきたいですね」。
将来は自分の家を自分で作りたいのだとか。食べ物や洋服なども。
「自分の思いと見えざる力を信じているから、もしいつか山形を離れることがあったとしても、落ち着いていられます」。
Profile
中沢花織さん
出身 東京都
生年月日 1985年生まれ
URL http://www.gen.or.jp/