みなさんは、「日本酒の産地といえば?」と聞かれてどこを答えますか?

実は山形県は、全国で2番目、県レベルでは初めて日本酒のGI(地理的表示)を認定された、全国屈指の日本酒の聖地なんです!

弱冠22歳の学生記者しゅんが「同世代に日本酒の魅力を知ってほしい!」という思いから始めたこの企画では、学生目線での取材を通して、山形の酒蔵の歴史や魅力を“日本酒初心者”の学生の皆さんにわかりやすくお伝えしていきたいと思います。

「日本酒ってハードル高いなぁ」と思っている人も、酒造りの奥深さ・蔵人のこだわりに思いを馳せて、気軽にカッコよく日本酒を飲んじゃいましょう!

酒蔵紹介

今回訪ねたのは、東根市温泉町にある酒蔵「やまがたの酒蔵 六歌仙」。

羽州街道(県道120号)を東根から村山方面に向かっていると、スーパーの隣に古民家のような建物と酒蔵の看板「杉玉」、大きな酒樽が見えてきます。

ここは、山形市にあった江戸時代の古民家を移築した「六歌仙倶楽部」。

中は日本家屋らしい落ち着いた雰囲気で、日本酒をはじめとした様々なお酒や六歌仙オリジナル商品を購入することが出来ます。

六歌仙のおすすめ商品

まずは、皆さんに飲んでいただきたい六歌仙おすすめの日本酒をご紹介します!

「六歌仙 五段仕込み純米」720ml:¥1,300(税抜)

「六歌仙の酒の中で50年間変わっていない、ロングセラー・ベストセラーです。日本酒を新しいスタイルで楽しんでもらおうというコンセプトで行われている『ワイングラスでおいしい日本酒アワード』で、今年の最高金賞を頂きました。ほんのりとバナナのような香りがするすっきりとした飲み口で、どんな料理にも合う、非常に万能なお酒です。」(代表取締役 松岡茂和さん)

 〜学生記者しゅんが飲んでみました〜

本当にバナナのような芳醇な香りがします! 濃い味付けの料理とも相性の良いしっかりとした味わいで、饅頭やクッキーといったお菓子にも合いますね。」(←実は甘党のしゅん)

 「山法師 純米吟醸」720ml:¥1,400(税抜)

 「現在の六歌仙の看板商品です。4年前に『いっぽん!!〜しあわせの日本酒〜』(グランドジャンプ)という漫画で、「どんな温度でも楽しめる日本酒」として掲載され、話題になりました。日本酒本来の楽しみ方が出来るお酒だと思います。」(代表取締役 松岡茂和さん)

〜学生記者しゅんが飲んでみました〜

「純米吟醸酒らしいすっきりとした飲み口! 米の優しい甘味やフルーティさが感じられます。刺身や天ぷらなどの和食と相性抜群です。」 

蔵元インタビュー

さて、試飲はこれぐらいにして、酔っ払ってしまう前にインタビューです!

蔵元の代表取締役・松岡茂和さんにお話を伺いました。 

Q:松岡さんが酒造りに携わることになったきっかけは何ですか。

 六歌仙は、もともと北村山地域に5つあった酒蔵が合併してできたのですが、そのうちの一つ、村山市楯岡にあった松岡酒造が私の生家です。いつも日本酒がある環境の中で育ち、父や祖父、蔵人たちが日本酒を作る姿を間近に見ていたので、自然と自分もそうあるべきだと思っていました。

やがて、5つの蔵を個々に存続させるか否かという議論になったとき、当時、中学生だった僕は、三者面談でいきなり「酒蔵を継ぐか・継がないか」という選択を迫られたんです。継ぐのであれば、新しい蔵・体制を作り上げる。継がないのであれば、蔵の限界、造り手の限界というところで廃業を見る。父にそう言われて、「僕は酒造りをやるよ」と答えました。それが、この世界に入る覚悟を決めた瞬間ですね。

でも、意外と即決でした。それは、育った環境によるものかもしれません。自分たちが造ったものでお客さんが歓んでくれるというのを間近に見て、共感していました。だから、その伝統を絶やさず未来に繋いでいきたいという思いが人一倍強かったのだと思います。

Q:酒造りを勉強し始めたのはいつからですか。

高校卒業後、東京農業大学の醸造学科に入学して、酒造りを専門的に学びました。それまで、実家での酒造りは、ある種感覚的なものだったのですが、そこにロジックが加わったわけです。醸造学科には、僕と同じような境遇の学生が結構いて、いろいろな蔵のお酒が届けられるので、それらを飲み比べることで自分が井の中の蛙だったことを思い知らされました。同時に、日本酒のいろいろな可能性を感じましたね。仲間と互いに語り合ったことが良い刺激になり、その一つ一つがリンクし合って今の私をつくっているのだと思います。

Q:大学卒業後、すぐに家業を継ぐのではなく、一度大手の酒造メーカーに就職されたそうですが、それはなぜですか。

もちろん実家を継ぐことは決まっていましたが、「他人の飯を食う」と言うように、いろんな人に揉まれて視野を広げる意味でも、他のところで学ぶ機会が必要だと。2年間みっちり宝酒造さんの製造畑で勉強させてもらいました。

六歌仙の酒造り

 Q:六歌仙のこだわりは何ですか。

何十年とぶれず、会社の理念にも掲げているのが、僕らの酒を通じて、美味しさのみならず歓びや楽しさを届けるという事。あとは何よりも、日本酒の無限の可能性にいつまでも挑戦していきたいという事です。それを続けながらいろいろな新しい要素を溶け込ませています。

嗜好品は人それぞれ感じ方が違うので、お客様に歓ばれる味覚を想像して、そのイメージに近づけていくのがすごく難しいところですね。

先代からずっと引き継いでいるモットーが「酒造りは化学ではなく感性」ということです。ここは絶対にブレない。酒造りの基本設計を基にしながら、五感をフルに働かせて向き合うのが我々の酒造りです。

▲蒸米の出来具合を素手で探る様子(写真提供:六歌仙)

Q:スパークリングサケ「ひととき 純米」は、ワインのつくり方を日本酒に活かしたのですか?

ワインの知識はあまり深くないのですが、製法や基本原理は分かっていましたので、法律の中できる事をやっていこうと思った時に、スパークリングワインの製法を真似る事が一番の近道だと思いました。

何度か失敗もあり、いろいろ試行錯誤しましたが、頼りになったのが当時うちにいた杜氏さんで、助言をもらって試したら想像よりも良いものが出来たんです。その時に学んだのが、自分だけで物事を考えないで、人の意見にも耳を傾けるという事です。

▲日本酒の要・麹を作る製麹機(写真提供:六歌仙)

僕らは、数字を追いかけていないんですよ。例えば、醗酵するアルコールは何度だとか、甘辛のバロメーターである日本酒度数だとかはあくまでも指標です。数値を追いかけることではなくそれよりも味覚的なところを追いかけて造る。その結果、後で調べたらそういう数値が出たという事で良いと思うんです。近代的な設備がありつつも、手作りの良さが活かされているのが僕ら六歌仙の酒造りだと思うし、それを大事にしているからこそ、酒の神様が導いてくれて、スパークリング日本酒を造り上げることができたのではないかと思います。

Q:日本酒を造る際に、変えてはいけない事、時代に応じて変えなければいけない事というのはあるんですか。

酒造りの根幹は不易流行。酒造りは昔から何も変わっていない、というのが僕の本音で。昔の人は本当にすごいんだなと。もしかしたら偶然の一致だったのかもしれないけど、科学的根拠が何もない中で造り上げた。だから変えなくていい部分もあるけれど、一方で、やはり技術革新があって成り立つ伝統だと僕は思っているので、精度を追求してよりクオリティの高いものを造っていきたい。未来に繋がる飲料として食文化の一角を紡いでいければいいですね。

 ▲醗酵に欠かせない酒母(写真提供:六歌仙)

地元愛・地域の再発見

Q:六歌仙さんでは、リキュールも造られていますね。

実は梅も東根の特産で、すごく大ぶりな節田梅というのが採れるので、その梅を原料にしています。そういうストーリーを通して、地域や特産を知ってもらう事に少しでも繋がればと思っています。

▲地元の梅を使った「六歌仙 純米酒で造ったうめ酒」(写真提供:六歌仙)

地元愛をもっと強く持とう、地元の特産をお酒として表現しようという思いが基本軸としてあるので、地域のものに特化しているのが六歌仙の特徴でもあると思います。

Q:六歌仙さんは、東京の八芳園さんとオンライン酒の会を開催したり、イラストレーターの西山寛紀さんとコラボされたりなど、様々な取り組みをされていますね。

一番大事なのが、人とどのように繋がっていくかだと思います。僕が八芳園さんや西山さんと繋がれたのは、やっぱりご縁なんです。こういう企画で僕らを知ってもらえたら嬉しいですし、それが地域貢献につながれば最高ですね。

 ▲西山寛紀さんとのコラボ商品「ひととき 純米シロ・ひととき ロゼ」(写真提供:六歌仙)

変わりつつある社会に向けて

コロナ禍で、さまざまな会合が縮小されていますが、決して人との繋がりが無くなったわけではないし、小規模な人間関係を上手く結び付ける努力もしなければいけない。「酒は人を繋ぐ接着剤なんだ」とよく僕らは言っています。その役目の真価が問われる時期に入ってきているのかなと思います。今の時代、オンライン化やテレワークで希薄化していく人間関係を高める手段を、僕ら六歌仙のスタッフ陣は大事にしていきたいし、それをもっと多くの人に伝える役目を担いたいと思っています。人との出会いを大事にして、人と人が繋がる場にお酒があるといいですね。

 若者へのメッセージ

Q:六歌仙さんは、高校生や学生と一緒にプロジェクトをされていますが、若年層に向けてPRしている事などはありますか。

東京でも山形でも、大学生と一緒に日本酒を楽しめる企画をしたり、一緒に飲んで話したりしています。社会人・企業人として協力できる事を通して、日本酒の新しい価値創造、飲み方・魅せ方を一緒に考えていければいいですね。若い人たちには、難しく考えすぎないで日本酒の世界に入ってきてもらいたいし、楽しんでほしい。普段着で楽しめる形を一緒に創っていければと思います。

Q:学生へのメッセージ

もっと挑戦すれば、もっと楽しいことがある。チャレンジしていろいろな事を見出してください。あなたたち若者が、これからの未来を創るのだから。

取材後記

松岡さんの「日本酒造りは化学ではなく感性」という言葉が印象的でした。近代設備になっても、環境の変化を見ながら手造りで日本酒を造る蔵人の職人魂を感じました。

日本酒はただのお酒ではなく、人と人を繋ぐ「接着剤」。人との繋がりの大切さを改めて知る昨今だからこそ、その温かさを感じながら日本酒を楽しみたいと思います。

酒蔵情報

株式会社 六歌仙

住所:〒999-3702 山形県東根市温泉町3-17-7

電話:0237-42-2777

FAX:0237-43-6074

ホームページ:https://yamagata-rokkasen.co.jp/

インスタグラム:https://www.instagram.com/sake_rokkasen/

お問い合わせ:電話、FAX、HPお問い合わせフォームからお願いします。

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この記事を書いた人

やまらぼインターン

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