山形県では昨年度より、やまがたの「暮らし」と「仕事」を体験出来る数日間のプログラム『やまがたCAMP』を実施しています。
『やまがたCAMP』とは、山形県外在住の参加者が、地域で暮らす仲間たちと出会い活動することで、「自分らしさ」や「やりたいこと」を発見したり、新たな学びのきっかけにし、これからの自分の生き方・働き方を考えてみるという趣旨のプログラムです。
2019年度も、長井市・酒田市・真室川町・河北町がそれぞれ魅力あふれるプログラムを実施しました。
各市町村ごとに特色を生かして企画された体験プログラムはいったいどんな内容だったのか? 参加者はどんな体験をしたのか? キャンプに同行した未来ラボスタッフが、プログラムの一部をレポートします!
やまがたCAMP2019 in 真室川町(9/20〜22)編
【やまがたCAMP2019in真室川町 】
◆実施日:2019年9月20日〜9月22日
◆参加者:5人(男性3人・女性2人)
◆『やまがたCAMPin真室川』に参加したきっかけ
・山形出身でUターンを検討中。仕事と暮らしを体験できるプログラムを探していた
・他の市町村の移住プログラムに参加し、ほかの市町村を知りたいと思ったから。
◆『やまがたCAMPin真室川』に興味を持ったポイント
・林業体験に興味があった
・雪の下に眠った宝物というテーマに興味があった
・山形県は訪れたことがあるが、真室川町を訪れたことがなく行ってみたいと思った
①農家の仕事と暮らしを知る〜農業&わら細工体験〜
まずは真室川伝承野菜の栽培や、わら細工などの手仕事を行う「工房ストロー」の高橋伸一さんの元へ。
高橋さんは、この地域の1軒でしか栽培されていなかった野菜など貴重な種を引き継ぎ、町で親しまれてきた野菜を作り続けています。
まずは、そんな貴重な野菜の収穫のお手伝い。収穫したものはお土産として持って帰れるとあって、参加者も張り切って作業!
土と植物の新鮮な香りを感じながら、収穫した野菜が入った袋を両手いっぱいに抱えて畑を後にしました。
その後、場所を移動し、乾燥させた稲わらを使ってわら細工に挑戦。
高橋さんの図解付き指導を受けながら、完成の姿が分からぬまま作業にチャレンジ。
「指が痛くなってきた!」「先生の手作業、早すぎる…」とわらを編み込みながら、完成したのは……
ピンと立つしっぽがかわいらしい、ネコでした!
こんな風に、高橋さんはわらじや伝統的な飾りの作成にとどまらず、新しいわら細工もどんどん作り出しています。
これを1日に何十個、何百個も作るという大変さをあらためて感じたという参加者のみなさん。農業や手仕事で成り立つ、農家さんのせわしなくも豊かな日常に触れたプログラムとなりました。
②達人に学ぶ自然の営み。アユ漁見学
続いて山菜の収穫やアユ漁の達人・佐藤昭夫さんに、真室川での暮らしや仕事についてお話を伺いました。
山や川の恵みから、自らの仕事を生み出している佐藤さん。ご自宅で話を聞きながら、参加者は「この仕事を受け継ぐ若者がいない」という課題も目の当たりにました。
▲梁ではピチピチと跳ねるアユを発見!
③地元のおかあさんたちと郷土料理の体験&番楽鑑賞
夕食は、町の農家さんや食品加工に携わる地域の方々に、郷土料理の作り方を教えていただきました。
先ほど梁を見学した、アユの塩焼きにも挑戦。
▲直立不動のアユが並ぶ、美しい光景。
「たくさんけぇ〜(食え)」と食べ切れないほどの料理を勧めてくれる地元の方に圧倒されながら、参加者は、町の食材を使った田舎料理とおしゃべりを楽しんでいました。
▲夕食後、この地に根付く『番楽』を鑑賞。「迫力がすごい!」
※番楽とは…秋田・山形に伝承する山伏神楽
④真室川暮らしの日常を知る。「お茶っこ」体験&山歩き
翌朝は高橋喜久子さんの元を訪れ、町に暮らす人の日常を体験させていただきました。
喜久子さんは、夫・ネコとの3人(匹)暮らし。真室川町では、茶の間でお茶を飲みながらおしゃべりすることを「お茶っこ」と呼ぶのだそうです。
「大したものないけどなぁ」と喜久子さんが運んでくる漬物やくるみのぼたもちは、どれも絶品。
次々に出てくる食べ物に思わず「もう、はらくっつい…(お腹がいっぱい)」。参加者一同、喜久子さんのおもてなし精神に感銘を受けていました。
その後、山菜の取れる裏山へ。
喜久子さんはたびたび足を止め、そばに生えた植物の名前や豆知識を教えてくれます。身近にこれほどの自然はないという参加者たちは、とめどなくあふれる知識の豊富さに感嘆していました。
▲背景一面に広がるのはわらび!煮物にするとおいしいのです。
その後場所を移し、資料館で昔ながらの農業機具や暮らしの道具を見学しました。
⑤芋子汁&バーベキュー
庄司製材所の庄司和敏社長の元を訪れ、最後に山形の魅力いっぱいの豪華なランチをいただきました!
次々に繰り広げられる庄司社長の軽快なトークに笑いながら、芋子汁(芋煮)や山形の肉、お酒を味わいました。
3日間のまとめ。振り返りワークショップ
3日間、地域の人と触れ合いながらじっくり真室川に関わった参加者からは、こんな感想が出ていました。
参加者のみなさんの感想
「今住んでいるところとは文化が違いすぎて、海外旅行に来た感じ」
「受け入れ側でいろんな準備をしてくれていることに感動した。もてなしの文化がすごい」
「地方で採れる伝承野菜を、食材を都会のレストランが高価格で購入しているということを知った。これまで目を向けていなかった地方と都市とのつながりが見えた」
「東京での生活は効率化や時短を求めすぎて、逆に失っているものがあるのではないかと思った」
「本当の豊かさってなんだろう……?と考えてしまった。お金も大切だけど、それだけではないだろうなと思う」
さらに移住者向けの取り組みについても意見を交換し、
「山菜・ぼたもちとか、地元にとっては当たり前だけど私たちにとっては面白い、ニッチなものを軸にするのもいいかも」
「旅行ではなく暮らす体験が必要。せっかく来るなら、長期滞在でゆっくり来たいと思う」
「地域の良い面ばかりだけではなく、裏も知りたい」
といった声が上がっていました。
地域の暮らしや魅力を学ぶ中で、地方・都会のお金の循環、豊かさの概念という話題まで議論が巻き起こった『やまがたCAMP in 真室川町』。農村地帯の人々の暮らしに溶け込み、町の”宝物”を探しながら、それぞれが自分の生き方についてじっくり考えるきっかけともなったようです。
この地ならではの食材や料理、伝統文化、そして生き方。真室川町の情景は、何らかの形で参加者の心の中に残り続けることでしょう。
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