東急大井町線　尾山台駅から徒歩3分、静かな住宅街の中にあるのが「トラットリア・ロアジ」。

鶴岡市の観光大使も任される店主が親子3人で切り盛りするこのイタリアンレストランは、山形県にゆかりのある人なら馴染みのある食材を使った本格イタリアンが楽しめる。

さらには庄内食材を使ったこだわりのコースでもてなす「庄内食材を楽しむ会」も定期的に開催し、山形出身者からの支持も厚い。

庄内の食材だけでなく歴史や産業にも精通し、地元への愛情があふれる「ロアジのおやじ」こと佐藤さんにお話を伺った。

 

 

 

山形から東京、さらにはニューヨークへ。本格西洋料理を極める

山形県温海町（現鶴岡市）生まれの佐藤さんは高校卒業後上京。

20代のときには3年間、アメリカ・ニューヨークの国連大使館で日本料理の料理人として働いた。

「だからアイ　キャン　スピーク　イングリッシュ　ベリー　ウェルなんだよ」と茶目っ気たっぷりに語る。

（いつも笑顔で答えてくれる佐藤さん）

帰国後、東京・青山のイタリアンレストランで本格的にイタリアンに目覚めると料理長を任せられ、その後、渋谷のイタリアンレストランで今の店のベースとなるボローニャの料理を学んだ。

等々力渓谷のイタリアンレストランでの料理長を経て、今の「トラットリア・ロアジ」を開業、20年目を迎える（2019年現在）。

今では地元の人を中心に本格的ながらも温かみのある料理と店主の人柄で多くの人に愛される店になった。

 

 

鶴岡市長にも認められる庄内食材イタリアン。特に魚介を使った一皿に注目

佐藤さんが本格的に地元の食材を使い始めたのは現在のお店をオープンしてから。庄内食材を使った料理で客をもてなすうちにその噂が地元にまで届き、鶴岡市の観光大使に任命された。

「それから、さらに庄内の食材を使うようになりました」

そう語るロアジの看板メニューは「ワタリガニのスパゲティ」。酒田市から仕入れるワタリガニを使ったこの料理は20年前から不動の人気メニューだ。

（ワタリガニのスパゲティ。濃厚な蟹の味がたまらない）

 

「山形は面白い食材がいっぱいある。食材がいいから何を作ってもおいしいんだよ」

「山形には野菜もあるけど、魚がうまいんだよ。魚や果物、そういったものを使って料理をしたいと思ってる。」

そう教えてくれたように、ロアジには庄内の魚介や果物を使ったユニークな料理がそろう。

山形県遊佐市を流れる「月光川」を遡上した産卵後の鮭の身を使って作ったスモークサーモンのクリームパスタや「ガザエビ」という日本海沿岸でしか獲れないエビを使ったパスタ。

サーモンは産卵を終え疲弊しきったいわば”ボロボロの”鮭、ガザエビは鮮度落ちがひどく関東ではなかなかお目にかかれないエビだ。ひとクセある食材をおいしく調理してお客さんに提供するのがロアジ流。

 

（庄内産を使ったメニューがずらりと並ぶランチメニュー）

 

夏になると庄内浜の牡蠣も楽しめる。

日本海の塩を使った「海水ジュレ」を添えた生牡蠣は佐藤さんの子供のころの経験から生まれた。

「子供のころに海を泳いでて、牡蠣を見つけるわけよ。岩にくっついてる牡蠣を釘で取るときにたまに割れて中から白い身が出てきちゃって、もう持って帰れないじゃん。しかたないな、って思ってそのまま海の水で洗ってパクっと食べる。これがね、まためちゃくちゃ美味しかったんだよ。」

 

佐藤さんが子供のころに味わったあの生牡蠣を再現したアイディア料理は今ではロアジの大ヒットメニュー、多くの人に楽しまれている。

そしてもう一つ、一押しが「サマーティアラ」という夏イチゴを使った料理。

酸味の強いこのイチゴは酒田市で生産され、ソースにするとホタテなどの魚介類と相性がよい。

これをロアジでは「庄内食材を楽しむ会」などで提供し、お客さんの評判も上々。（筆者も以前伺ったときにいただきましたが、目からうろこのおいしさ！）

 

さらには庄内の麩を使った料理もおススメ。

酒田の麩メーカーに特別に開発してもらった麩を使ったデザートも絶品。イタリアのお菓子「カンノーロ」を、麩を使って再現、見た目もかわいらしいやさしい味の麩スイーツだ。

庄内麩をピザにつかった「庄内麩～ピザ」も一度は試してみたい一品。

（庄内麩を使ったカンノーロ。サクサクとした触感と軽いたべ応えで食後にぴったり）

 

 

アイディアと愛情がこもった庄内食材イタリアンに会いに行こう

実は取材が始まる前に佐藤シェフにたくさん庄内について教えてもらった。

西郷隆盛と庄内藩、新徴組の話、鶴岡の絹製品、港町として京都の影響を受けた文化。今でも食や建造物、特産品などの形で残る歴史、普段何気なく手に取る、目にするものが実はこれまで庄内地方、山形県がたどってきた道のりの上にあるということに気づくきっかけになった。

地元への人一倍の愛情をもった佐藤シェフが腕をふるう絶品イタリアンを召し上がってみてはいかがだろうか？

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