商店街を抜けたその先に――

女子美術大学杉並キャンパスの最寄り駅でもあり、静かな学生街といったたたずまい。それが、東高円寺。東京駅、霞ヶ関駅、新宿駅、池袋駅……東京の中でも主要な街を結ぶ丸の内線の中でもマイナーな駅ですので、降りたことがあるという人は少ないかも? そんな東高円寺駅から徒歩3分。レトロさも感じる商店街を抜けた先に今年8月、鶴岡市出身のシェフによる、フランス料理店「ブラッスリー ルル」がオープンしました。

オープンからまだ4か月。しかも、静かな住宅地の中にも関わらず、すでに常連客が定着しているこのお店。地元民はもちろん、遠くからも「わざわざ」行きたくなるその理由は、本物にこだわる、シェフの「腕」にありました。

 

鶴岡出身のシェフ 世界各地で「修行」

オーナーの齋藤俊一さんは、鶴岡市出身。実家は3代続く畳屋だったそうですが、畳産業が衰退するなか、料理人としての道を志しました。高校卒業後の進路として歩むことになったのは、意外にも海上自衛隊! 京都を拠点に、船に乗って世界各地をめぐりました。大使館関係者や日系人らを招いての会食の場で料理をふるまうなどする中で、和食の基礎を固めました。3年後、調理師免許を取得し、退官。その後は大阪でパティスリーに勤務し、フランス料理に出会います。

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「ブラッスリー ルル」のカウンターに立つ、シェフの齋藤俊一さん

 

日本におけるフランス料理といえば「プロヴァンス風」「ブルゴーニュ風」と、何かと「風」がつきもの。齋藤さんは、自らの料理からこの「風」をなくそうと、つまり、本場の味を追究すべく、たびたびフランス各地をめぐり、腕に磨きをかけてきました。

 

 

フォーラム1階のあのお店が東京へ

齋藤さんは、実は2015年までは山形市内でフランス料理店「ラトリエ ドゥ シャルロット」を営んでいました。山形市香澄町のフォーラム山形1階にあったお店といえば、記憶されている方も多いはず。ちなみに、映画館の建物に店をオープンすることになったのは、齋藤さん自身が、映画ファンということもあってのことだそう。

 

「10年くらいやったら、仙台にでも行こうかな」と考えていたところ、2013年、日本中を駆け巡る大ニュースがありました。2020年の、東京オリンピックの開催決定です。一生に一度、あるかないかのビッグイベントを前に、齋藤さんは東京進出を決めたのでした。

 

東京で最初に店を構えたのは西荻窪でした。15年12月に「セルジュ&ジューン」をオープン。そして今年8月、東高円寺で「ブラッスリー ルル」と名前を変えて、移転オープンしました。

 

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立地条件のハンデも 「腕」と「魂」さえあれば

正直、立地条件がいいとはいえない住宅地の中。どうしてこの場所に……?

齋藤さんはこう答えます。

「最初は大変だけれど、グルメな人はどこにだっているから……。あとはもう、これだね」

と、自らの腕と胸を、バシッとたたいて見せてくれました。

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自慢の腕をふるってくれる齋藤俊一さん

実際、お店はすでに「ずっとここにいてほしい」との声もお客様からいただくほどに、地元民に愛着を持たれる存在になっているそうです。また、山形時代からの常連客が来店してくれることもあるといい、齋藤さんの味への愛の深さがうかがえます。

 

 

 

「うまい」ではなく「おいしい」ものを

「世の中、『うまい』ものなら、そこら辺で安く食べられる。でも、『おいしい』と言ってもらえるようなものを出していかないと」と語る齋藤さん。「どこでも食べられるようなものではなく、自分らしさを出していきたい」。

 

もって菊やエジプト菜、山形さくらんぼ鶏など、山形の食材もたくさん取り入れています。

盛り付けにもこだわりが。前菜のちょっとした一品の盛り付け方にも、ひと手間もふた手間もかかっていて、目の前に出された瞬間、お客様の表情を、ぱっと明るくしてくれます。ついつい写真に収めたくなるような、目でも楽しめる品々です。

庄内豚頭肉とエジプト菜のゼリー寄せ

庄内豚頭肉とエジプト菜のゼリー寄せ(料理の写真はどれもブラッスリー ルル提供)

 

冬の定番 鹿肉のロースト

冬の定番 鹿肉のロースト

 

 

 

地酒、野菜、肉……山形の食材もふんだんに

ほかにも、山形では春の味覚としておなじみの、ふきのとう。食べ方と言えば、天ぷらにするか、「ばんけみそ」が定番ですね。しかし齋藤さんの手にかかれば、ふきのとうはアイスクリームに大変身!

季節によってはメロンや干し柿などもアイスクリームに。庄内浜の塩を使ったアイスクリームと、庄内メロンのジュースにガスを注入したメロンソーダは、夏の定番メニューだそうです。

食後のお楽しみ デザート盛り合わせ

食後のお楽しみ デザート盛り合わせ

 

 

フランスでは空前の日本酒ブームということもあり、山形の地酒も常時5~6種類扱っています。シャンパングラスで、フランス料理とのマリアージュが楽しめますよ。

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ワインは常時50種類ほどをそろえています

 

カジュアルに楽しめる「酒場」

店の名前「ブラッスリー ルル」の「ブラッスリー」とは、フランス語で「酒場」。「ブラッスリー(酒場)」と名づけただけあって、メニューはタパスが充実しています。1品500円~というカジュアルなお値段設定です。

ルル定番のシャルキュトリー(加工肉)盛り合わせ

ルル定番のシャルキュトリー(加工肉)盛り合わせ

 

事前予約制となりますが、コースでも楽しめます。12月24、25日は特別に、1日8組限定のクリスマスディナーを実施しますが、あいにくすでに満席とのこと。

年明け1~2月ごろ、齋藤さんは再びフランスを巡りに行くため、お店はその間お休みに。気になる方は、ぜひ事前にお電話で確認を。

 

 

シェフの「好き」が詰まったお店

ちなみに、「ルル」は、俳優や作曲家などとして活躍したフランス人のセルジュ・ゲンスブールの息子で、音楽家として活躍するルル・ゲンスブールの名前にちなみます。西荻窪時代の店名「セルジュ&ジェーン」は、セルジュ・ゲンスブールと、恋人だったジェーン・バーキンの名前から。いずれも齋藤さんが大好きな人物たちなのです。インテリアには、その「好き」があふれ出しています。

 

齋藤さんの「腕」に加えて、お店のもう一つの名物(?)はトイレ。ある日、山形出身だという女性が来店し、トイレに行ってからひと言。「きゃぁ~! このお店、私山形で行ったことある!!!」と叫んだほどに、齋藤さんのこだわりと、お店のアイデンティティーがつまったインテリアになっています。来店して、ご自分の目で確かめてみてください。

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こだわりのインテリアで飾ったトイレにもご注目

 

 

ヤマガタ未来Lab.会員特典
「ヤマガタ未来ラボを見た」で、ドリンク1杯サービス(2019年1月末まで)

ブラッスリー ルル

住所
東京都杉並区高円寺南1-25-16

https://goo.gl/maps/ZJPBYRBmvD92

営業時間
ランチ 11:30~14:30
ディナー 18:00~22:30

電話番号
03-6304-9939

アクセス
東京メトロ・東高円寺駅から徒歩3分。JR中野駅、高円寺駅からも徒歩圏内。

平均予算
4,000~5,000円程度

定休日
火曜。ほか、月2回不定休