会社に雇われるだけでなく、「好きなこと」「得意なこと」から自分で仕事を作ってみたいー。
そんな思いから“自分にできる小さな仕事”=ナリワイをはじめたり、ナリワイをいくつか掛け持ちする“複業”という働き方・生き方が広がってきています。
今回は、そんな新しいライフスタイル実現への1歩を踏み出した1人の女性に、活動の様子をレポートしていただきます。
自然に寄り添った生き方を探して
はじめまして。
山形を拠点に、ナリワイのワークショップやイベントを行っている阿部由佳と申します。
私は、2018 年の 4 月から、自分でできることを切り売りする“小さな仕事づくり”=ナリワイをこつこつとやり始めました。現在は、ナリワイのワークショップをしながら軽トラで全国を旅しています。その活動の内容やそこで感じたことをシェアしながら、これからのライフスタイルについて一緒に考えられたらと思っています。ぜひお付き合いください。
そもそも私がなぜそんなライフスタイルに向かい始めたのかというと、大学時代から、環境教育や自然の中での活動に興味があった私は、子ども向けの自然体験活動などの活動を行っている「NPO法人美しいやまがた森林活動支援センター」の活動にボランティアとして参加していました。大学卒業後もNPOの活動を続けている中で、自然に寄り添った暮らしをする方々と出会いがあり、私もそんな暮らしがしたい…!という想いが強まり、考えるようになりました。
自給自足で豊かに生きる
そうして 2017年4月から1年間、栃木県那須町にある非電化工房というところに弟子入りし、 「お金とエネルギーを減らして豊かに生きる」ことをテーマとした自給自足的な暮らしの修行をさせていただきました。
そこでは、畑や田んぼなど、自分たちで食べる物を自給することからはじめます。
農業のほか、素人でも建てられる 2×4 工法などの建築、木を伐っての薪づくりやソーラーパネルの使い方や保存食づくりなど、暮らしの基本的な技術についていろいろと学びました。機械に乗ったことがなくても挑戦。「やってみたらできる」「知っていたらできる」ことって意外とたくさんある、という気づきが衝撃的な1年間でした。
家を建てるワークショップでは、藁のブロックを壁の内側に積んで断熱しました。外側には泥と漆喰を塗るという天然素材の家、その名も「ストローベイルハウス」(※ストローベイル…藁のこと)です。難しい技術の必要な伝統工法ではなく、だれでもできる2×4工法で建築しました。
暮らしの自給率を上げ、暮らしと仕事を分断させない。
そんなふうに自給自足的な暮らしの技術を学ぶ中で、それを「小さな仕事にする」考え方も学んできました。
また、仕事についても自立を目指し、非電化工房代表の藤村靖之氏の著書「月三万円ビジネス」の考え方・その哲学にもじっくり触れてきました。
※「月三万円ビジネス」とは
月に三万円しか稼がないスモールビジネスをいくつか掛け持ちし複業をするというライフスタイル。自給力を高めながら、それを仕事にすることで暮らしも仕事も豊かにしようという考え方から生まれたもの。大きく稼ぐのではなく、小さいからこそできるイイコト・愉しいことがあるのでは…という発想。
2018年4月、非電化工房を卒業し山形に帰ってきて、さっそく自分でも小さな仕事を作るべく、非電化工房で学んだソーラーフードドライヤーをつくるワークショップを開催しました。
こちらがソーラーフードドライヤー。太陽光の光を集めて乾燥させます。
初めてのワークショップの主催はドキドキしましたが、山形で以前からお世話になっていたNPOの皆さんのサポートや、企画していく中で新しく出会った方々の支えのおかげで、イベントを企画・運営する経験を積むことができました。挑戦する中で、これまで繋がりのあった周りの方々から助けていただいたり、「面白そう!」と活動に興味を持った方から声をかけていただいたりして繋がりが増え、どうやったらワークショップを開催できるのかということが少しずつ分かってきました。
1つ挑戦するたびに、仲間が増えて、できることが増えて、また新たに挑戦できることが増えている、そんなことに喜びを感じています。
現在、その経験を活かして、ソーラーフードドライヤーやタンドールをつくるワークショップや、「月3万円ビジネス」をみんなで考えてみようというワークショップなどを行っています。
地域で仕事を作ることの重要性は今あちこちで叫ばれていますが、「お金とエネルギーを減らしても豊かに生きられる」というライフスタイルを考えるときに大切なのは、暮らしと仕事を分断させないこと。
暮らしの自給率を上げることが仕事になり、仕事をすることで暮らしの豊かさがちょっと増していく。そんなライフスタイルを目指しています。
私は、最終的には「暮らしをみんなで愉しく考える場」になるようなコミュニティカフェを作りたくて、それに向かって活動中です。
小さな仕事で地域をちょっとだけ面白くする
今の働き方に疑問を持ち、「自分の好きなことで仕事をつくりたい」「小さいからこそできるイイコトを仕事にしたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。
山形でもマルシェが様々な市町村で定期的に行われたり、気軽に利用できるコミュニティスペースも増えて、市民が積極的に前に出られる場があちこちにあります。
自分も何か始めてみたい…!という人にとっての土台は今まさに整ってきていて、始めやすい環境が作られつつあるのではと感じます。
小さな仕事のいいところは、ノーリスクではじめられて、良い方向に少しずつ変わっていけるところ。自分は特別な人間ではないからと言って始めないのは損! 私のように「特別でない」普通の人間が自分の好きなことや得意なことを活かして小さな仕事を作っていく社会、イキイキと働く大人が増えた社会はきっと面白くなっていく気がします。
小さな仕事を作るということは、自分のためだけでなく、地域をちょっとだけ面白くするということ。そして、小さな経済を回していくということ。でも、一番大切なのは何よりまず自分が楽しいと感じるかどうか。今は、難しい理由よりも楽しいことや目指しているライフスタイルを全力でやってみたい。その中で人の役に立てることを小さな仕事にしていけたらと思います。とはいえ、今はまだ色々な方々に支えていただくことの方が多いのですが…。
ちなみに今私がやっている小さな仕事は、
・ソーラーフードドライヤー製作ワークショップ
・タンドール作りワークショップ
・小さな仕事づくりワークショップ
・コーヒーの自家焙煎ワークショップ
・さくらんぼ遊撃農家
と、複数の仕事をしています。
できることから無理なくこつこつと、これからちょっとずつ増えていく予定です。
一つひとつの詳しい内容は今後のコラムでご紹介させていただけたらと思います。
まとめ
今回は『ナリワイ』という複業で暮らすライフスタイルについて簡単に紹介させていただきました。
興味を持っていただけたでしょうか。ご感想やご質問もお待ちしております。
次回は「モバイルカフェで旅に出る!」です。お楽しみに〜!
◆月3万円ビジネス/藤村靖之著(晶文社)
鶴岡ナリワイプロジェクト http://tsuruoka-nariwai.com/
山形ナリワイプロジェクト http://yamagata-nariwai.com/