2017年9月7日。移住・交流情報ガーデンにて、「特別講座:ローカルキャリアのススメ~地方で見つける”自分らしい生き方”」というイベントが開催されました(主催:LO活プロジェクト)。
ゲストは大手企業から兵庫県篠山市の里山地域に移住し、「ローカルPRプランナー」として活躍する安達鷹矢さん。NHKのU-29でも取り上げられた気鋭の若手起業家です。
この記事は、そのイベントで話した内容を、書き起こした内容です。
地方でキャリアアップするって、どういうこと?
主催者:今日はですね、安達さんから、ローカルキャリアのススメというタイトルで話をしていただきたいと思います。
キャリアと聞くと、都会でバリバリ働いている人というイメージがあると思うんですけど、じゃあ地方でキャリアアップするって、どういうことかと言われてみたら、「よく考えたことないな」と私自身も思っていて、安達さんとお話ししたときに、「実は地方だとキャリアの積み方違うんですよね」という話があって、それがすごく面白いなと思ったので、今日実はこのためにスピーチを作りこんできてもらいました。皆さん楽しみに聞いていってください。
本日は安達さんのお話中心に進めたいと思いますが、まずは自己紹介から。
安達さんがNHKのU-29という番組で取材されていて、それを見ていただくとどんな環境でどんなことをやっているかわかるので、冒頭は10分程度見ていただいて、それからお話に入っていければと思います。
~NHK U-29の動画が10分ほど流される~
(NHK U-29「#007ローカルPRプランナー安達鷹矢」
主催者:
私も何度か安達さんのお宅にお邪魔したんですが、悠々自適に暮らしていらっしゃるんだなあというところを見させていただきました。今の動画にあったような細かいところも今日は話してもらいます。
地方に行きたいけどなかなかいけないという方に、仕事や収入どうすんだという話があると思うんですが、今日の話を聞いて「あ、意外といけるな」と思ってもらえると思うので、安達さん、よろしくお願いいたします。
~会場:拍手~
安達:
初めまして。安達と申します。兵庫県の丹波篠山から参りました。大阪にもともとはいて、そこから楽天に入って、自分のやりたいことと合わなかったので、もともとやりたかったことを探しに、やりに23才くらいで移住して、そこからいろいろ仕事を作ってきました。
今日いらっしゃった方のほとんどが、いずれは移住とか地元に帰ったりしたい、すでにやり始めている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな方に向けてお話しさせていただきます。
仕事のマネジメントというか、生活のマネジメント、田舎だからできる暮らし方の提案なども織り交ぜながらやりたいと思います。
なぜ大手企業を辞め、縁もゆかりもない里山に1人飛び込んだのか?
冒頭で自己紹介を兼ねた動画を見てもらったんだけど、もう一回自己紹介します。
大阪高槻市に生まれ、大学はマスコミの専攻。学生時代、田舎で何を発信しようとうろうろしていたら、100%のオレンジジュースを作ってるおっちゃんに会ったんですよ。本当の100%ジュースってめちゃくちゃ酸っぱいんですよ。で、「うまいだろ」とか言われて、「いやまずいっす」みたいな。
~会場:笑~
けど、酸っぱいものとして飲むと、本当にすごくおいしいものです。こういう田舎にある本当にいいものをもっともっと世の中に出していくことを仕事にしたいと思ったのが大学生の時。
社会人になって楽天に入社したけど違うかなと思って、社団法人入って、半年で契約終わって、1年くらいふらふらして、バーをやって、そのあとテレビに出てたコンサルやって、先月会社を作って、そういう形でPRの代行をする会社をこれからやっていこうと思っています。
今やっていることを少し紹介すると、篠山市の移住促進事業。Webやパンフレットを代行で作ったりしています。企画構成やって、インタビュー行って。隣の丹波市で仕事の移住サイトを作ってくれと。移住する人で、仕事のこととすむとことなどで悩む人が多いので、ハローワークとはまた違う仕事のことを発信するサイトを作ってくれとなって。
あと、動画でもあった日本酒バー。結構準備して立ち上げたんですけど、2か月くらいたって、「飲食やりたくないなぁ」ってなって、今は完全予約制になってます。この前、エルマガジン社の「丹波篠山の本」が取材にきて「(このお店は)いつやってるんですか?」って聞かれて「いや…気分…」って。
~会場:笑~
それでも載せてくれるんですかっていうのはしっかり確認したんですけど、「面白いから載せます」と言われました。丹波篠山の名産品などを販売するサイトや、テレビでも紹介されたECサイトのコンサルティングもやっています。
もっと昔にさかのぼって紹介すると、ぼくは中学生の部活を引退した後に、三国志のゲームとかをやっていたんですよ。マンガ読んで、小説読んで、最後は兵法書まで読むという変な中学生だったんです。
すごい強い敵軍がいるんだけれども、知恵を使って兵力差をひっくり返すという話がすごく面白くて。そういうものにワクワクしていたんです。今の日本って強いやつばっかりで「現世が面白くないな」と変なこじらせ方をしていました。今でも弱者が強者を打ち負かすという構図に魅力を感じているのは、そういう経験や考え方が根本にあるのかなと思います。
高校生の時には文化祭の企画をやって、それまでなかったライブや電車広告を実施したりして、前年の3倍くらいお客さんが集まったんですね。これ、めっちゃ面白いやんってなって、大学はマスコミ系の大学に進みました。
就職の時、地方の体力のない企業や人がちゃんと稼いでいくためには、ITしかないなと思ったんですよ。テレビとかお金がたくさんかかるし。それで楽天に入ったんですよ。入ってみて、確かに地方にチャンスは与えられる仕事なんですが、やっぱり結局は都心にお金を吸い上げているように感じました。
ストレスをためて仕事をしてお金を稼いで、ストレスを発散するために田舎に行ってお金を使って、また都心でストレスの代わりにお金を稼いで…。「これなんなんやろ」と思いました。
そこで出会ったのが、篠山でした。結構な広さの市なんですけど、都市部に人が集まっているから、ぼくが行った本当に山の中の集落なんか15人くらいしか人住んでなくて。その古民家がホテルになっていて、一泊4万円とかなんです。これが成り立ってるのすごいなと思って。それをみた次の日に会社に行って、上司に「ちょっと会社やめたいんすけど」って言ったんです。
〜会場:笑〜
止められたんですけど、自分のこじらせている夢の続きで、お城に住みたいというのがあって、上司に「どっちがお城に住めるかを考えてもらってもいいですか」と言ったら、こいつダメやと思われて、「どうぞ辞めてください」となって、辞めました。
〜会場:笑〜
もともと自分は、静かな都市郊外に住んでいて、学校を出て大きな会社に入りました。都会はシステムが出来上がっていて、その中で生きていける。
その環境とは反対に、田舎は何もない。
けど、道の草を刈ったりとか、生活でやるべきことはいっぱいある。フリーランスのような形で移住したんで、自分で何か仕事を作り出さないと何もできない。収入を作り出すまでの準備も自分でやらなきゃいけない。
そういう環境の違いが、都市と田舎の違いだと思うんです。
行った時には、挫折してアルバイトもやりだして、「なんで田舎にきておれはアルバイトでぎりぎりの生活をしてるんだ」と思った。ちゃんと自分のやりたいこと考えようと思っていろいろやりだしたんです。
それが今回の、「ローカルのキャリアを考える」っていうもののスタートでした。
ライフコストのマネジメントができればローカルで生きていける
ローカルでキャリアアップと言っていますが、目指すのは好きなことを仕事にするってことです。なので、まずは生活コスト(=ライフコスト)のところから。
これ、言ったらちょっとひかれるんですけど、ぼく、お金なくなって、毎日の生活に困窮してた時に、むかついたんで全部寄付したんですよ、お金を。楽天の時の貯金とかも。一回ゼロにしてみよって思って。
〜会場:どよめき〜
そしたら、意外と生きれたんですよ。「あ、お金があるから、使って解決しようとするんだ」って気付きました。お金がないとめっちゃ頭使うんですよ。どうやったら生きれんのかなって。
近所のおばあちゃんに話行って、話の中で野菜をもらうとか、有馬温泉で修業をしてたりしたんですけど、従業員の調理場の人と仲良くしてたら行ったときごはんもらえるとか。
〜会場:笑〜
食事するのにここに行くとか決めてやってた。やった結果、「やっぱりある程度、お金は持っておかないとだめだな。ゼロはやめよう、10万くらいで何とかしよう」と。
そこから必要なお金のマネジメントが始まって、まずは有馬温泉で働く時間を週4日に限定して、これだけやったら、最低限暮らせる。そしたらバイト後の夜の時間と、週に3日は自由な時間がある。その時間をどういう仕事に変えていくかを考えました。
1つめの仕事は、日本酒バー。夜の時間が埋まった代わりにお金も入ってきたので、バイト行く時間が減りました。その後、ECコンサルの話もあって、お金がもらえるようになったので、またバイトする時間が減りました。
この時点でも、まだいっぱい自由に使える時間があった。いろいろ軌道に乗ってきて、自由な時間使ってまいていた種がお金に変わってきて、バイトしなくてよくなって。そんで飲食(日本酒バー)ももうしんどくなってきて、完全予約制になって、仕事もそこから様変わり。
一日だけ畑作業やってみよう、となったらその分食費が浮くし、店(日本酒バー)の素材も浮いて、生活費が安くなって、さらに働く時間も減ったっていう感じで順番にサイクルが回り始めました。
これからの話をすると、日本酒バー以外にシェアハウスのスペースも作ってます。改修工事も自分でやって。大体工事はできるようになってるんです。自分で準備してやっていたら、できることが増えていく。
都市部にいた時は払わなければいけない家賃を、逆に金が生み出せるものにしていく。義務として働かなければいけないものを消していく。
それが、ライフコストのマネジメントだと思ってます。
都会は競争、地方はシナジー。ローカルでのキャリアは「何ができる?」ではなく「君と働きたい」
こっちがキャリアっぽい話なんですけど、磨くスキルについて。
都市部は競争社会なんです。社内で出世する競争もそうだし、外部のエージェントだとしたら、その分野の中で競合他社と競う。田舎だと競合があんまりないし、競うというよりも自分にはこれができるという強みをつないでいってシナジーを生む。
都会は、大きなパイがあって、出世する、キャリアアップする、外部エージェントとしてそのパイを取り合うっていう環境だと思います。
田舎は違う。
例えば、今日来ているあそこの彼(会場後ろに座る男性を指す)が、酒造メーカーの人なんです。酵母が好きで酒造りで入ったけど、いい酒を造るために営業になったり人事になったり、何でもやれる。人数が少ないからベンチャーみたい。
田舎は、これだけをやってくださいって仕事は、アルバイトとかならあるけど、基本は何でもやっていかなきゃいけない。
ぼくみたいなエージェントはゼネラリストになっていく。ECサイトできますって言っても、それだけで予算ないし。
事業計画も作るし、取材もするし、ディレクションするし、カメラマンの予算も自分で確保して連れて行ったりする。
全方位なんでプロフェッショナルとしての力は全然都会の人が上なんですけど、いろんなスキルに関われるのは田舎なんです。
あと、田舎の仕事は実働レベルで動いている事が、経営者とか上に届きやすい。
例えば、農家の人と卵屋の人がいて、その二人が友達になって実働ベースで、こういうことやってみようかって話が生まれる。
これは趣味です。田舎は趣味から仕事が生まれることが多い。
例えば米を脱穀するともみ殻が出るんですけど、それを卵屋さんの鳥の餌に混ぜたら餌代が浮く。農家の人にしたら、もみ殻のゴミを処理するお金がいらない。その他の効果として、卵がおいしくなったとか、鶏糞を肥料に混ぜたらコメの味が変わったとか。
そういう実働レベルの人の話が経営のトップに伝わるんですよ。小さいからすぐに伝わります。そうすると社長同士もつながりがあったりして、実働の人への評価も上がるし、応援される。しかも、意外と田舎の社長と都市部のトップがつながってることもある。
これが、趣味が仕事になるっていうことです。
ぼくも篠山にいて会った人で面白かった人が、楽天に一番に出店したIT社長とかアイフォンの素案を作った日系アメリカ人とか。
地方の社長のつながりで、どんどん面白い人を連れてきてくれるんです。市長とかも議員さんから連れてこられて、「面白いやつがおるから行く」みたいな感じて来てくれる。
田舎は都会よりパイが少ない。けど、パイが少ないと目立ちやすいから、目立つと上のほうに話が言って、それが都市部の社長とかに伝わる。
もう一回本気で就職活動するとしたら、そういう伝手をぼくは狙いますね。
そうすると、仕事の取り方が「何ができる?」、ではなく「君と仕事がしたいんだ、何を振ったらいい?」ということになってくる。
楽天でやってたのはECやWebの中でもディレクションだけだった。
最初はスキルも大したことなくて、仕事にならなかったけど、「あんたと仕事がしたい」と言われるから、戦略策定、コンサル、政策、デザイン、サービス全部一通りやっていく。
そしたら、やった分だけ、スキルもちょっとだけ上がる。
都市部で仕事になるレベルというのは、もっともっと上だけど、田舎で仕事になるレベルは超えられるようになってくる。
ディレクターだけをやらせるほどの資金的な体力は田舎の企業にはないが、「あいつに任せたら勝手に利益出すところまでやってくれる」と思われれば、仕事になって売れる。
それがちょっとずつ起こってきたのが今なんです。
ローカルでの仲間の見つけ方
ここからちょっと話が変わるんですけど、コラボする相手はちゃんと選ぼうって話。
イノベーター理論って知ってますか?
※注釈:イノベーター理論とは※
モノ・サービスが流行する時の仕組みを消費者行動に基づいてモデル化したもの。新商品が出てそれが世の中に知られる前に飛びつく層を「イノベーター(市場全体の2.5%に該当する)」、その動きを見て早い時期に購入を決める層を「アーリーアダプター(13.5%)」、市場の流行に乗るのが「アーリーマジョリティ(34.0%)」、流行を取り入れるのが遅い層を「レイトマジョリティ(34.0%)」、流行を取り入れない保守的な層を「ラガード(16.0%)」と分類している。
この理論に当てはめたとき、Iターンは「イノベーター」なんです。Uターンの人は、「アーリーアダプター〜レイトマジョリティ」くらいまでいる。地元の方はかなり革新的な人でも「レイトマジョリティ」で、基本的には「ラガード」にたくさんいます。
この「アーリーアダプター」と「アーリーマジョリティ」、「レイトマジョリティ」と「ラガード」の間には、キャズムという溝があって、その溝は超えられない溝なんです。だから、イノベーターの人は「アーリーマジョリティ」よりも右の人に直接影響を与えようとしても、話が合わないし、届かない。
ぼくはかなりイノベーターよりだったので地域にずっといる人っていうのは基本的にターゲットにしない。間にUターンの人を挟んで巻き込んでいかないと、基本的に話が通じないからです。
テレビの例がわかりやすい。さっきのNHKのU-29に出ると、ラガードの地元の人はそれを見ているので、それでやっと、「あいつ頑張っているらしいな」って思ってもらえたりする。だからUターンで先を見ている人といろんなプロジェクトをやっていくと、君と仕事がしたいっていう人が出てくるんです。
ライスワークとライフワーク
ローカルはあんまり関係ないですけど、前提として話しておきたいのが、ライスワークとライフワークの考え方。
ライスワークは、ご飯を食べていくために義務としてやる仕事。ライスワークの中でもストレスをためてお金を稼ぐ人と、ライスワークだけど楽しいことをやっていると感じられる人、満足できる人に分かれます。
ライフワークは基本、楽しいからやるっていう仕事なので、楽しい。この3つのライスワーク(ストレス)、ライスワーク(満足)、ライフワークでは、支出の仕方が変わると思うんです。
■ライスワーク(ストレス)
ストレスをためると消費することで解消しようとするので投資をするということより消費になる。ストレスをためながらライスワークをしている時間も無駄。時間も支出も余暇も投資ではなくて消費になるので、ぼくは3倍無駄だという感覚でいます。
■ライスワーク(満足)
これは、仕事をやってる時間は消費なんですが、やった結果の満足度は高めなので、支出や余暇は投資できるパターン。
■ライフワーク
仕事をやっている時間も、自分の目的に合って学べるものをやっているので投資になる。そこで得たお金を、仕事を得るために支出して投資にしていくという方法で、全部がプラスに回っていく。
働くなら、ライフワークで収入を得ていきたいなとぼくは思っています。
「これかな」というものに手を伸ばしてやっていきたら、やりたいことがどんどんお金に変わってきた。
キャリアっていう視点とは違うんですが、なんでぼくがローカル面白いと思っているかという話をします。
世の中、新しいものが生まれる仕組みって、創造→構築・普遍化→仕組み→→衰退みたいにぐるぐる回ると思うんですね。
衰退してから創造に行くには、革命が必要なんですが、革命を起こすときは必ずそれまでの既得権益の人たちから反対がある。
今の日本って都市部はすごいパワーを持っている。
だから都市部の既得権益も強いし、ストップするパワーも強いので、めっちゃすごい人はイノベーター起こしていっているんですけど、それができるのはほんの一握り。
既得権益層のガードする人の力が強いからなかなかイノベーションは起こせない。
でも、田舎だとそのガードの力がこんなもんです。(お年寄りの絵をスライドに出す)保守的なお年寄りくらい。
〜会場:笑〜
結構楽勝なんです。
言いくるめたら新しいものすぐ作れる。「わしゃわからん」って言って任せてくれる人もいるし、「なんや予約制のバーって!」って怒られたこともあるけど大した話じゃないから何とかなる。
ぼくがテレビに出たら「わしが言ってやったからあいつの店はよくなったんや」みたいに言われたり、それぐらいやりやすい。
改革は辺境から起こるっていう言葉があったりして、組織や社会がおっきくなったところだとなかなか新しいことは生み出せないけど、田舎は新しいことをやりやすいんです。
これまで本当にぶつかりながらやってきました。切磋琢磨する人もいたし。
篠山ってホントに冬寒くて朝マイナス9度とかになって。暖房をつける灯油も買えないのにボランティアしてた時とか、何か意味がわからないんですけど、「これかな」っていうものに手を伸ばして、やっていくと、やりたいことがどんどんお金に変わってきて。
今は楽しくできている。そういうのがローカルでキャリアを作るってことなのかなって思っています。
質疑応答
参加者:
移住する時に、その地域についてどの程度知ってどんなイメージをもって移住すればいいのでしょうか?独立のタイミングはどうやって判断しましたか?
安達:
移住する場所は、どこでもいいと思うんですよ。こういう理由があってここを選ぶっていう基準が決められないというのは、まだ知らない・経験がないから決められないんだと思うんですよ。
ぼくも今は篠山に6年くらい住んでいるので、次に移住するならこんなところかなと思うけど、最初は基準がなかった。特に丹波篠山に縁もなかったので、調べて行ったというより、たまたまさっきも紹介した面白そうなプロジェクトがあったっていうだけなんですね。
用意していっても理想と違うことはいっぱいあるので、それを何とかしていくモチベーションにしたほうがいいと思う。理想をもっても違うこといっぱいあるし。ぼくも本当に何回篠山を出て行こうと思ったか。
それって、会社も一緒だと思う。会社がどうしてくれるって待ち続けても変わらないので、まずは自分で行って、自分はそこでどうなりたいのかどうしたいのかとちゃんと先を見て考えていくのが良いと思う。
一応ぼく、この前独立して会社作ったんですけど、本当は全然会社作る気なかったんです。お金かかるし。行政から仕事を受けるようになって仕事の規模が大きくなると、個人事業主には仕事出せないんですね。だから、それは「会社建てろってことですか」、「まぁそういうことです」みたいな感じになって仕方なく会社建てたんですね。
今自分がやりたいことを、仕事にならなくてもコツコツやっていくと、誰かが喜ぶようになる。誰かが喜ぶとそれがお金になって返ってくる。
会社作るぞってやっても事業の内容って変わるんですよね。またやりたいこと変わるし、得意分野かどうかもあるし。誰かに求められてやりたいことやりながら、実際に事業化しなきゃいけないって言うまでやってみたら。人の役に立っていると、誰かが食わせようとしてくれる。
参加者:
これからどうしていこうという気持ちですか?
安達:
10年物と20年物があるんですよ。
〜会場:笑〜
オーディエンス:
どっちも知りたいですね。
安達:
10年間はコンテンツ作りしようと思っている。
ぼく、やりたい仕事を選択できないという不条理がむかつくんですよ。自分はある程度それが自由にできるようになってきたけど、それを横展開したいなと思っていて。衣食住、教育、エネルギーなど生涯に絶対かかるコストをできるだけ下げて、それをAIでできるだけやってくれる、作ってくれるという仕組みを作って、自分は好きなことをやっていく。これをマネタイズしていきたいです。
うちの村も1000人くらいしかいなくて。半径15キロ?30キロ?くらいの小さな集落だと、40人くらい。10年後5人くらいしかいないと思ってて、そうしたら、そこに面白い人を住ませて村を作っちゃう。5人なら村を牛耳れるかなって。
〜会場:笑〜
コンテンツを10年作る。そのあと、お城の上でそれを10年。
今から15年くらいたったら、国がもうお金がありませんとなるかもしれない。その時のために、海外にお金を持っておいて、「うちの村は国がだめになっても、お金は全然大丈夫です」みたいな。その準備をちょっとずつしていっている感じです。
城に住むって目標は諦めていません。
参加者:
例えば多拠点って言葉がはやっていると思いますが、安達さんは興味があるかっていうことが聞きたいです。あと最初に篠山に持っていたイメージがどういうものか分からないですが、つらいことがあった時に、何をモチベーションに、何をよりどころに頑張って、そこに居続けることができたんですか。
安達:
多拠点は興味ある。なぜかというと篠山って冬が寒いのであったかいところに行きたいと思っているからです。寒い3か月の間、固定費を落としながら仕事をもっていけばいいだけなので、それはやろうと思っています。
もう一つの質問は、それはすごく良い質問ですね。
そもそもぼくはあまり準備をしないタイプだということはあるんですね。準備をするよりも現場で何とかやって成功体験を積むということもすごく多い。
6年も篠山を離れなかったのは面白い人がいたからですね。一緒にやっていく仲間というのができたんですよね、たくさん。そのコミュニティの中で途切れることなく新しいことが生まれて行って、それが面白いし、自分のコントロールできることが増えて行って、自分がまだまだ新しいことが仕掛けられるので。ここにいなきゃいけないっていうのはあんまりなくって、面白いことがあるからいる。
家も買ったし、家をいじって遊びまくってるし。100坪くらいあるんですよ。裏庭にめっちゃ馬鹿でかいウッドデッキとか作って、秋になったらビールサーバー、炭火焼とかして、「これ東京とかでやったら4万くらいかかるな」とか思いながらにやにやしながら一人でやってる感じなんで。
参加者:
地域格差を感じていて、住民の風土によっては移住者を受け入れづらい風土があると思うんです。例えば、東北とか。先ほど安達さんが言っていた横展開という観点で、そんな風土の場所でやろうとしていることはありますか。
安達:
実は、福島で今やろうとしていることがあるんですよ。
彼女が福島の白河市の近くの棚倉町出身で、まだ結婚していないがよく行ってます。彼女のお父さんが教育長さんなんです。そこでいろんな話があって、きっかけも教育長さんからもらっていて。
うちの彼女はセラピーを個人でやっていきたいと言って頑張っているが、セラピーって一つの場所でなかなかやっていけるマーケットもないので、複数拠点を持ったほうがいいよね、と話しています。
棚倉町の実家の2階をぼくがリノベーションして、彼女がそういうこと(セラピー)をできる場所にしたんですよ。それで、彼女が年に何回かそこで仕事するようになったのでぼくも何かできるといいなと思って。
「WebについてやECの構築から運営まで一通りできるのでニーズないですか」と聞きに、その地域の若者が集まるスペースで勉強会やらせてもらいました。そこのコミュニティ使って人集めてもらったら需要が出てくるんですよね。
おとうふ屋さんと眼鏡屋さんで商店街の青年部をやっているんですが、人が減っているので何とかしなきゃと思っていたところだったみたいです。
「いくらだったら出せますか」という話をまずしました。「出せません」と。「そうですよね」っつって笑。
じゃあ毎月3000円だけ出してくださいと。それだったら出せますよね。そういう人を20人集めてくださいといったんです。そしたら6万円になるので、それでできる範囲でECサイト作るので、その商店街のECサイトを作ってビジネスが回る方法を模索しようと思っています。その6万円プラス、売り上げに対する成功報酬とで収入を得ていく。
地域によって閉鎖的なとこもあるけど、基本的にはさっきお話したように、イノベーターを見つけて、そこにコンテンツを突っ込むと人が集まって来る。その小さいコミュニティ、ユニットの単位で広がっていけばいいなと思う。
別にぼくがやってるって話は出なくてもいいんですよ。商店街のお兄さんたちが頑張っているという見え方で良くて。でも東京の地域創生に興味ある人とかが、あの商店街盛り上がってるな、なんでだろうとなったらぼくの名前が出てくる。そこから他の地域に展開できて行けばそれでいいかなと思っている。
主催者:
安達さん、本当にありがとうございました!
〜会場:拍手〜
取材協力:LO活プロジェクト
Profile
安達鷹矢さん
1987年大阪府高槻市生まれ。関西大学卒業後、楽天株式会社入社。ECコンサルタントとして活躍後、退職し篠山へ移住。古民家再生を手掛ける社団法人、地域PRのNPOなどを経験し、現在はローカルPRプランナーとして篠山市・丹波市のPRなどを行っている。2017年7月に株式会社Local PR Plan設立