こんにちは、(株)キャリアクリエイトです!
いつかは山形に戻ろうかと考えているビジネスパーソンの皆さんに、地元で挑戦を続ける山形の企業を紹介させていただいているこのコラム。今回はインターン特別編として、山形大学の学生さんに書いてもらった内容をお届けします。
キャリアクリエイトでは、「山形で活躍する企業に触れて見聞を広げる」「発信する力を養う」を目的としたインターンシップを去年からスタートし、2回目となる今年は、1名の大学生を迎えて実施しました。(昨年の記事① 昨年の記事②)
今回の攻めの会社教えますvol.10は、その大学生が取材対象企業の事前調査からインタビュー内容の検討、実際の記事作成までを行いました。実践的なインターンシッププログラムの成果をご覧ください。(取材のご協力を快諾いただいた高橋畜産食肉株式会社高橋社長、インタビューにご対応いただきました中川様ありがとうございます!)
それではどうぞお楽しみください。
「元気市場たかはし」の会社って?
皆さんこんにちは!山形大学3年(株)キャリアクリエイトインターン生の小野寺杏菜です。
皆さんは「高橋畜産食肉」と聞いて、パッとどんな企業かイメージできるでしょうか? 聞き覚えはありますか?
おそらく、大半の方は首を捻ると思います。私も最初はそうでした。
では、「元気市場たかはし」と聞いたらどうでしょうか。山形にお住まいの方なら「あぁ、あのお店ね!」とピンとくる方も結構いるのではないかと思います。お肉のまとめ買いに利用する方もたくさんいらっしゃると思います。お肉が好きな人なら「蔵王牛」を飼育して加工販売している企業と言った方がわかりやすいかもしれませんね。
というわけで、今回皆さんに「山形県の攻めの会社」としてご紹介させていただくのは、山形県内で「元気市場たかはし」を3店舗運営し、オリジナルブランド「蔵王牛」を展開している「高橋畜産食肉株式会社」さんです。
コンピューターシステム会社から畜産の会社へ
今回取材させて頂いたのは、総務を務めている中川賢(なかがわ さとし)さん。元々はコンピューターシステム会社に勤めており、「高橋畜産食肉」が「元気市場たかはし」を運営していることも入社して初めて知ったのだとか。まだ勤めて1年と少々という中川さんは、主にシステムに関わる業務をしており、現在は新ブランド開発のプロジェクトメンバーでもあります。
小野寺:私の中には『畜産業=過酷』というイメージがあるのですが、どうして中川さんは畜産業に携わろうとお考えになったのですか?
中川:えっとですね、どこから説明しようか悩むところですが、私はそもそもコンピューター会社に勤めてたんですよ。カスタマーエンジニアっていう技術職をしてまして。
小野寺:全然違うところでこれまでは働いていらっしゃったんですね。
中川:全く違うところです。で、正直申し上げると、「元気市場たかはし」は知っていたんですけど、高橋畜産食肉は知らなかったんです。なので、高橋畜産食肉がなんの会社か最初は知らずに実はおりまして(笑)そもそも転職するにあたっての経緯は、ネットショップとか通販のシステムに関わってスキルをアップしていきたいというのがありました。何故かというと、コンピューターのシステム会社さんって基本会社が相手なんですよ。BtoBのやり取りですから、私としては出来ればコンシューマー向けのサービスを提供して、いろんなお客さんの声を知りたいというのがあったんです。なので商品的には特に、お肉ではなくても良かったと言ったらアレですけど(笑)サービス業がやりたいなと思ってたところにちょうど高橋畜産食肉さんから、そういった方向性が合うようなお話があって入社することになりました。
小野寺:なるほど。ちなみにお勤めになってから何年ですか?
中川:1年と3ヶ月くらいです。なのでわからないことがいっぱいあって(笑)
小野寺:結構最近なんですね。所属が総務部でいらっしゃいますが、システムに携わっているわけではないのですか?
中川:システムに携わり始めているという感じですね。既存の業務システムがあるんですよ。販売管理システムとか、人事給与財務系のシステムはこれまでの経験からある程度詳しいので、その辺の見直しを図るというのも業務にあって。将来を見据えてどのようにシステムを改変していくかとか。あと、部門が分かれているんですね。先ほど出てきた「元気市場たかはし」以外にも部門があるわけです。それぞれの部門でそれぞれの別システムを使ってるんです。これからお客さんに対してサービスをしていくときには、今後展開していきたいと考えているネットショップもそうなんですけど、高橋畜産食肉として統合化されたシステムの方が、お客様にとってもいいっていう考えがありまして、少しずつシステムを変えていこういうことですね。
高橋畜産食肉株式会社は牛の繁殖・育成から販売までのほぼ全てを自社で一貫して行なっている国内でも珍しい会社。各部門が連携しているように、業務システムも一元化を図ろうとし、その中核を担っているのが中川さんです。
若い力が活躍 「T1」名付けの裏話
愛情を持って牛を育てるところから始まり、丁寧に加工して新鮮で美味しい牛肉を提供する。元気市場たかはしでは、高橋畜産食肉が運営する牧場から産地直送でお肉を買うことができます。間に他の企業が仲介しないため、新鮮なお肉を食卓に届けることが可能となっていて、その仕組みを支えているのが独自の流通体系「T1」。
小野寺:独自の流通体系「T1」というものがあるとのことですが、実際一般の流通と比べてどのくらい合理的なのでしょうか?
中川:まず、牧場の話からしますね。ミルクが出る牛はお母さん牛なので、必然的に子牛が生まれます。その生まれた子牛が市場(しじょう)に出るんですよ。で、牧場から市場に出た牛に対して競りが行われる。畜産業をしている人が買って、育てて売る。基本的にはこういう流れなんですね。ところが、そこにはいろんな企業さんが仲介してくるのでその時々で餌もまちまちに変わりますし、体調管理の問題も出てくるし、そもそも牛はあんまり移動されるのを嫌うので出来るだけ同じところにいて同じところで育っていった方がストレスがかからなくていい。
小野寺:T1は牛にとって優しいシステムになっているんですね。
中川:自社の場合は種付けからしてます。生まれるところからやっている牛もいるんですね。その牛は生まれた頃からその場所にいて、ずっと最後までその場所にいるっていう。実はなかなかこういったことをしている牧場はあまりない。 創業時は販売までしかしていない普通のお肉屋さんでしたが、食肉の加工もやり始めて。さらにその前のお肉を処理するところまで広げたと。で、さらに牧場を始めて、今はさらに種付までしているんです。
[高橋畜産食肉の流通フロー (高橋畜産食肉HPより抜粋)]
中川:T1はもともと「高橋畜産食肉一貫生産体制」という名前なんですが、もっと分かりやすい名前のがいんじゃないって話になって、つい先日「T1」って名前にしたんですよ。
小野寺:最近名前がついたんですか!?
中川:はい(笑)ブランド推進をするメンバーの中でなんかもっとわかりやすい方が聞き馴染みいいよねって。
小野寺:ちなみに、T1の「T」ってどういう意味ですか?
中川:「高橋」の「T」です(笑)洒落気をちょっと出してみたっていう。「高橋って名前をどこかに入れたいよね」とか「漢字よりはでも英語のほうがいいよね」「書きやすいのがいいよね」とかって。これから書くとき、ロゴマークにしやすいかなとかも考えながら。 で、T1ってつけると、多分質問を受けるだろうと思っていたら、今回の質問はまさしく狙い通りですね(笑)「どういうシステムなんですか?」なんて聞かれると思うんです。実は一環システムってこういうことなんですよって流れができると営業担当が説明しやすくなるかなと(笑)
小野寺:色々と考えていらっしゃる(笑)名付けには社長さんも関わったのですか?
中川:社長は絡んでないです。こうなりましたって報告をしただけです(笑)
小野寺:現場の声がすぐ実行されるんですね!
中川:ブランドを推進するにあたって、メンバーは社長に推薦していただいたメンバーです。「ある程度実行権がないと進めないだろう」ということで実行権限があります。従来のやり方通り、縦社会でシステムが動いてしまうと、柔軟な発想で物事が作れないということで集められたプロジェクトなので、だから社長から何か言われようが「いやT1です!」と言えるようになっています(笑)
小野寺:プロジェクトメンバーはどんな方が選ばれたのですか?
中川:選出にあたって、新たな発想ができる若い力を選んでいただきました。斬新なアイディアが期待されていたので。
小野寺:ということは、現場の新しい世代が活躍しているんですね。
中川:面白いですよね。若い人たちもこういうことができると、やっぱりやりがいにつながってくると思うんですね。若い人に是非そう言った意見をどんどん出してもらって、新たなブランドを作っていこう!ということですね。なので、今「蔵王牛」のブランドがあるんですけど、違うブランド名も作りたい、そういった動きになっています。それを全国展開できたら、若い人も楽しくない?って(笑) 面白くしたいですね。話がちょっと逸れましたが、T1という名称はそう言った思いがあって作られているということです。
小野寺:プロジェクトメンバーって何人ぐらいなんですか?
中川:チームとしては8人です。ブランドを検討するにあたって、人数が多いと意見がまとまらなくなるので人数は絞りました。
小野寺:新しいブランドというのは、牛の餌とか変えていく?
中川:どうするかはまだはっきり決まっていないですけど、「元気市場」と「高橋畜産」と「牧場」が繋がるようなイメージを作りたいと考えています。なので、ブランド推進プロジェクトの意向があれば、
会社ロゴマークの変更だって検討すると、そのくらい社長から大きな期待をいただいている状況です。
現場で働いている若い世代の人たちが、新ブランド開発という大役を任され、自分たちの意見を主張して実行することができる。自らが発案したものが採用されるときの喜び、実際の会社の経営方針に携われる楽しさはどれほどのものでしょう。
自社ブランドをダイレクトで届けたい
小野寺:蔵王牛はギフト展開していらっしゃるとのことでしたが、買うとしたら全国どこでも買えるのでしょうか? 例えば東京でインターネットで取り寄せ可能とか。
中川:インターネットで販売は今していません、買えません。買えるようにするのが私のミッションでして(笑)ショップを立ち上げる準備をしています。一年間経ってようやく色々と固まってきたところです。ただやっぱり先ほどのブランドの話もあったので、ただ単純に通販部門を立ち上げても意味がないなーと思ったので。「高橋畜産グループのイメージを持ちつつネットショップは展開したい」ということで、立ち上げるまで時間がかかったんですね。今後は北海道でも買えるようにします(笑)。今は直接買えるのは元気市場だけですね。ただ、みなさんの知らないところで実は蔵王牛を食してらっしゃっています。例えば近所に美味しいラーメン屋さんもありますけど、お肉は全部うちの方から提供しているお店もあります。あとホテル・旅館・結婚式場などにも納めさせてもらっていますが、私たちは卸業でもあるので、そこには一切名前は出ない。
小野寺:蔵王牛と知らずに食べていることもあるんですね。
[お店で出てきた美味しいお肉、実は蔵王牛かも!]
中川:お客様に直接、ダイレクトで商品を届けられるようにしたい。これが課題ですね。
小野寺:今後の戦略として、今度は海外に出してみるぞ!ということはあるんでしょうか?
中川:確かに、それもあるんですよ。やっぱり「ジャパンフード」は海外の人から見たら「品質・安全性が高い」というイメージがありますし、輸出ができる時が来ればいいですね。なかなかでもこれは法的に厳しいところがあって。出せる場所が決まっていたりとかするのですが、ネットショップのポイントはやっぱりそこですよね。別に日本だけじゃなく販売ができる可能性がある。それでも輸出はまだ難しいですけどね。あともう一つはTPPの問題もある。外から肉が入ってくることになるので、安い肉が入ってきますから、国内畜産業にとって死活問題です。
Twitter、Instagram、Googleマイビジネス・・・広告も強化
小野寺:「元気市場たかはし」とか、「蔵王牛」のTwitterアカウントもありますよね。
中川:よく調査されてますね(笑)そうなんです。実は、中の人は私なんです。元気市場の中の人。力を徐々に入れている感じです。少しずつ(アクセス数が)増えていますね。ただ、どこまでぶっちゃけていいのかがわからなくて。様子を見ながらチラシを広告している感じです(笑)Twitterは、一時期FacebookやLINEに押されて無くなるのかと思いきや、意外と学生さんでもTwitterをやっているケースって多いんですよね。
小野寺:そうですね。私の周りでも10人いたら8人はやってる感じです。
中川:本当に若い人から、中学生や高校生なんかも。情報媒体としては以外と無視できないなって思いますね。 ちなみに、蔵王牛のアカウントは牧場の人がやっています。牧場の写真撮って欲しいなと思って、撮ってもらってるんです。
小野寺:こういった新しいことは中川さんがいらっしゃってから?
中川:そうですね。入ってからです。
小野寺:改革なんですね。じゃあここ1年くらいで情報発信についてはかなり状況が変わった?
[こんなことをやってみたい、と楽しそうに語る中川さん ]
中川:そうですね。Twitterのアカウントなんかも急激にアクセス数が増え出しています。今やっているのはGoogleマイビジネス、これもやっぱりやった方がいいかなと思っています。例えば、「美味しいラーメン屋さん」ってスマホで探す時に、Googleマップでラーメン屋って探して、一番近いラーメン屋はどこ?って見るわけですね。そこでクリックすると、そこにある口コミ、星三つ!とか、それを見てくるというパターンがどうも増えているらしいので、ちょっとマップ情報をもう少し整理しようかなと思って、今やっている途中ですね。 あとはInstagramですね。これもやりたいんですけど、Instagramはやっぱり写真なので、現場の人に頼まなくちゃいけなくて。
小野寺:そうなると、現場の人の写真センスが問われますよね。
中川:そうなんですよ。センス。センスが一番大事なんですよ(笑)後、ポップですね。あれも学生さんの方がやっぱりセンスいいですよね。手書きのポップとか。若者受けするデザインとか、そういったものですね。
小野寺:そこは是非若い力を。
中川:そうですね。やってみたいですね。私の個人的にやりたいことなのですけど。チラシもなんとかしたいですね。元気市場たかはしのチラシは・・・もう少しなんとかなりますよね(笑)
地元山形への愛
山形生まれの山形育ちだという中川さん。山形への思いも聞いてみました。
小野寺:山形は好きですか?
中川:うーん……(笑)大学は茨城の方に行ってて、戻ってきたんですね。長男だから。でも県外に行くとやっぱり山形の良さってわかりますよね。学生の頃は地域のつながりが嫌だったんですけど、地域のつながりが恋しくなりましたかね。逆に。
小野寺:なるほど。私はまだ(地域のつながりは)煩わしい方ですね(笑)
中川:いや、そうなんですよ。煩わしいんですよ。年齢的にはだいぶ私もあとですね。そういう気分になってきたのは。昨日地域の運動会があったのですが「地域運動会なんてなんでしなくちゃいけないんだ」って、「やめればいいのに早く」って思ってた派だったんですけど(笑)今更ながら実際に参加してみると「あっここの子供はこんなに大きくなったんだ!」とか、ふつふつと、あぁやっぱりこういうのいいなって。昔嫌っていたことも、実はやっぱり根底にあるんでしょうね。ないとダメだなって思いましたね。
編集後記
「高橋畜産食肉」「牧場」「元気市場たかはし」という、それぞれに独立したいイメージを一つに統合する新ブランドの開発に携わっている中川さん。今回お話を伺ってみて、楽しんで仕事をしているという印象を強く受けました。正直な話、最初は「高橋畜産食肉株式会社」という画数の多い名前から、もっと堅い会社を想像していましたが、実際にお話を聞いてみると、縦社会のしきたりにとらわれない柔軟性のある、実に積極的な活動をしている企業さんだということがわかりました。生き生きとインタビューに答えてくださる中川さんの姿に、「私もこういう風に働いてみたいなぁ」と思ってしまうほど(笑)。
最初のうちは雑務ばかり任されて……と言う会社も少なくないようですが、入社してすぐ活躍の場を与えてくれる会社もあるのだと知ることができました。
ホームページも4月に一新し、今年の6月には蔵王牛がふるさと納税の返礼品に選出されるなど、注目される機会も増えてきています。新しい力を活用し、山形から全国各地に向けて、形式にとらわれずに果敢に革新を続けているその姿勢は、まさしく「攻め」と言うにふさわしいのではないでしょうか。
取材協力 高橋畜産食肉株式会社 http://www.takahashi-chikusan.co.jp/
インタビュー:小野寺杏菜(山形大学人文学部3年)
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