今回のやまがたで働く人

狩野恭佑さん(27歳)

造園業

 

「実はこのたび、社長(自分の父親)が脚立から転落しまして入院しているんです。ですので、私が今社長代理を務めています」

狩野さんは、いきなり驚くような告白をしてくれた。社長は三ヶ月の入院を余儀なくされ、狩野さんは日々電話の対応など忙しい毎日を送っているそうだ。「ピンチはチャンスです。いずれ私が社長になるんですから」と頼もしい返事がかえってきた。

 

造園の仕事

狩野さんは地元の工業高校を卒業後、測量士の免許をとるべく仙台の専門学校へ進学。二年間の仙台生活を終えたのち、山形の測量設計事務所に勤めた。就職してから三年後のある日、父親からうちで働かないかと話を持ちかけられた。長年勤めた社員さんが急遽退社しなければならなくなり欠員が出たのが理由だった。そこで狩野さんは家業を継ぐべく、造園の道へ進むことにきめたのだった。

 

狩野さんの一日は朝七時半のミーティングから始まる。

事務所で今日一日の仕事の内容を確認して現場へ出発する。現場は山形市の個人宅の庭が主だが銀山温泉、かみのやま温泉、庄内地方へも足を運ぶそうだ。
仕事の依頼は季節によって変わる。三月から四月にかけては、雪囲いの外し方、植木の消毒が主な仕事。雪囲いとは、縄や細木、竹を使って庭木を雪に押しつぶされないように保護する仕組みのことで、雪国独自の工夫でもある。四月から六月中旬にかけては、庭づくり、植木の移植を行う。六月下旬から十月までは、これは今の時期にあたりわけだが、剪定作業が行われる。剪定とは、伸びた枝や葉を切って整えること。

狩野さんは言う、「木は人間と一緒で生き物なんです。ですので、髪の毛と同じように整えてあげなければならないんです。剪定は害虫にもなるし、何より庭が美しく見えます。鑑賞にも良いですから」

そして十一月から十二月は、雪囲いをして、一月から三月までは除雪を行う。

以上が狩野成高造園の一年の仕事の流れだ。

「インタビュー」

 

ー仕事は大変ですか?

「大変ですね。一日の半分は仕事ですから・・・、忙しい時期になると休みもないし・・・、たまに弱気になっちゃうときもあるんですけれど」

 

ー外での作業が多いでしょうから大変でしょうね。弱気になったときはどうするんですか?

 

 

「その時は自分がいつも励まされる言葉を思い浮かべます。それは、二年前の大河ドラマ「龍馬伝」で高杉晋作が言っていたのですが、『百万の大軍恐るるに足らず。恐るるべきは我ら、弱き民、一人一人の心なり』この言葉を思い浮かべます。弱気になっているときにこのスケールの大きい言葉を思い出すと、ああ、自分はなんてちっぽけなことで悩んでいたのだろう、と励まされますね」

ーどのようなところに仕事の魅力ややりがいを感じますか?

「うーん。難しいですね。造園にしても剪定にしてもそうなのですが、これが完成形であり正しい庭であるというのはないわけで、自分の仕事、自分の仕上げた庭をお客様に喜んでもらえる所は魅力的だと思います。うちの庭をこんなにも美しく整えてくれたんだ!と感謝されるのは本当に嬉しいですよ」

ーそれはある意味芸術家のようなものですかね?

「そうですね。奥が深いし、仕事に美的センスが要求されますから、そう言ってもいいかもしれません」

 

ー狩野成高造園で特別にやっていることはありますか?

 

「そうですねえ・・・定期的に地元の小学校と中学校の植木の剪定を父兄の方々と一緒に手入れしています」

 

 

ー素人の方でもできるものなんですか?

「もちろん我々が教えながらしますが、簡単な刈り込み程度をしてもらいます。脚立で高いところに登ったりはさせず、枝切りハサミが届く範囲内の仕事を父兄の方々にはお願いしています。大木とか松関係は我々プロの出番です」

ー植木といえば、山形で毎年ゴールデンウィーク明けに薬師祭植木市がありますが、それと関連して行っている事はありますか?

「はい。実は山形市には造園業者が幾つか集まって作った組合があるんです。最近植木市で出店する山形の業者が減ってきていましてそのかわりに県外の業者が多く出店するようになったんですね。これではいけないだろうということで、組合が立ち上がり植木市で一つの店を出して商品を売ろうということになりました。その運動はここ二三年のことですが、今年も百万円の値をつけた植木を組合で出しました。でもなかなか売れなくて、最終的には半値ほどで買っていただくことになりましたけどね。」

ー今年植木市に行きましたけどそれは見ませんでした。来年ぜひ見たいと思います。今思ったのですがあれほど大きい植木市は山形くらいなものですか?

「いえ確か薬師祭は日本三代植木市の一つですから、あと熊本市、大阪市でしたっけ、ありますね。」

 

ー先ほど組合の話が出ましたけれど、山形市では組合があるほど造園業者は多いのですか?

「私が住んでいる青野地区では造園業者の数が多いですね。青野地区だけでも十社はあるんじゃないですかね。実際青野地区だけの業者で作った組合があります。組合同士の特殊なやりとりもあって、例えばある業者の職人が怪我をしたときなんかは他の業者の方が手伝いに来てくれたりするんです」

 

ーそうなんですか?すごいですね、助け合いの精神が生きているのですね

「そうですね。やはり職人なので素人では代えがきかないものですから、そこは本当に助け合いの精神です。その業者間のやりとりの中で互いの技術工場に役立ったり、ライバル意識を育んでいます。

 

 

ー次に山形暮らしの長い狩野さんに聞きたいのですが、山形の魅力はどんなところでしょう?

「私が思う山形の魅力は何と言っても、食べ物がおいしいところですね!仕事で個人の御宅に伺う機会が多いので、休憩時間のときにいろいろ料理が振舞われることがあるのです。この間は芋煮をご馳走になりましたし、この前尾花沢にいったときはスイカをいただきました。どちらもおいしくて、山形は食に恵まれたところだなあと感じましたね。山形の家は土地の広い屋敷が多いため、庭も大きい家が多いのですがそこで仕事しててふと山に目がいったときには、ああ山形はなんと緑が豊かなところなんだろう、と感じ入ってしまうくらい自然にあふれた土地だと思います。

ーそんな山形での休日はどのように過ごされていますか?

「忙しいときは休みはほとんどとれませんが、休みの日は妻と温泉に行きますね。行きつけは蔵王温泉です」

ー温泉はいいですねえ。今お子さんいらっしゃらないようですが、男の子が生まれたら会社を継がせる・・・なんてことは考えていますか?

「いやあー、まだ予定がないのでなんとも・・・」
「息子には継いでもらう予定です。(お嫁さん談)」

ー最後に今後仕事でやってみたいことを教えてください

「今僕が考えているのは、日本古来の庭園を守りつつ、時代とともに移り変わっていく新しい庭のあり方とはどういったものであるか、ということです。今若い人が求めているのは、そんなに手入れしなくても美しく見える庭なんです。あとかわいらしい庭ですね。庭の古き良き部分と新しさをどのように取り入れていくか、日々イメージを膨らませながら仕事をしていきたいと思います。

Profile

狩野恭佑さん

出身 山形市
生年月日 1985年7月24日

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