羽黒山伏・大聖坊十三代目 星野文紘氏スペシャルインタビュー

羽黒山伏の星野文紘先達(※先達…修験道で山に入る際の指導者)は、出羽三山の麓である手向地区に400年続く宿坊『大聖坊』の十三代目であり、出羽三山神社の重鎮でもあります。

女性や外国人にも山伏修行の門戸を開き、修行を体験した人の人生観を変えるともいわれる星野先達のもとには、日本のみならず海外からも修行に訪れる人が後を絶ちません。

山伏として各地で講演も行い、迷える現代人にさまざまな気づきを与えている星野先達から、この春、山形で新たな門出を迎える皆さんにメッセージをいただきました。

 

今回のやまがたで働く人

星野文紘(ほしのふみひろ)さん

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1946年生まれ。羽黒山伏(山伏名:尚文)松聖。羽黒山宿坊「大聖坊」十三代目。出羽三山神社責任役員理事。出羽三山祝部総代。

 

山形に戻るべき人は、自然と戻ってくる

――星野先達は、若い人たちが山形を出ていくことについて、どう思いますか?

「思い切って、自分のやりたいことをやればいいんだよ。先のことなんかわからないんだから。山形を出ていっても、帰ってくるべき人はいずれ帰ってくる。そういうもんだよ。喜んで出ていっても、意外と気づくんだよ、自分の求めているものはこれじゃないって。

生まれたところや小さい頃からの暮らし方が大事だと思うね。山形の自然と人に触れて育っていれば、都会のビルの中で生きていても何か違うと感じるんじゃないかな。

若い人たちに山形に残ってほしいなら、その地域で楽しく生きていけるような場を作ってあげればいい。それでも嫌なら嫌でしょうがない。親やまわりが、あんまりがんじがらめにしないことだな」

 

感じるままに、「今」に委ねる

――この春、人生の岐路に立つ人もいると思いますが、新たな道に進もうとするとき、大事なことは何でしょうか。

「頭で考えずに、まずやってみることだね。何かをやろうとしたときに、考えすぎると失敗するんだよ。だから、あんまり考えずにやればいい。自分の心が感じるままに、やってみればいい。やったことは、すべて経験値になる。いずれその経験が自分を後押ししてくれるようになる。

物事は、理屈だけでいかないことも多いんだよ。なぜそうなるのかなんてわからない。きっかけっていうのは、なんでもないところにあったりする。ふとしたきっかけではじめたことのほうが、意外と面白いんだ。現実は、予想しなかったことが起きるし、頭で考えたってしょうがない。つねに『今』を生きていればいいんだよ。今に委ねりゃいいんだよ」

 

失敗してもとどまらず、直感を大事に一歩踏み出す

――失敗したらどうしようと思うと、怖くて動けなくなる人もいると思います。

「失敗したら、そのときに頭を使って考えればいいんだよ。やる前から、こうなったらどうする?なんて、仮定の話をしていてもしょうがないじゃないか。そのときにならなきゃわからないよ。失敗して怖くなって、そこにとどまっていたら自分の許容範囲はそれ以上広がらない。だから、怖くてもそこから一歩踏み出してみることだな。そうしないといつまでもそこにとどまっちゃうだろ。

チャンスをつかむのは直感だよ。ビジネスにおいても、何においても直感が大事。タイミングは自分で感じ取るしかない。そのために、普段から“感じる知性”を鍛えておくことだな。感じることができなきゃ、気づけないだろう?」

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 夢や目標を修正できる柔らかさも大事

――目標に向かって頑張っていれば、道は開けますか?

「夢や目標を持ってもいいけど、それを常に修正できる柔らかさを持つことだね。こう決めたんだから絶対にこうしなきゃと頑なにやる必要はない。力が入りすぎてると、成功にはつながらないね。頑張らなくていい。頑張ろうとすると頭で考えるから、失敗するんだよ。だから、気楽にね。楽しくやればいいんだよ。つねに見えないものを感じ取りながらね。“感じる”というのは開かれている状態だからポジティブなんだよ。考えすぎると閉じられた状態になるから、ネガティブになるんだ。常に感じたまま、やってみることだな」

 

――感じる力を鍛えるためには、どうすればいいでしょう? 瞑想するといいですか?

「瞑想って、意識があるんだよ。意識がある状態では見えないものを見ることはできない。見えないものっていうのは、無意識のときにふっと気づくんだよ。だから、雑踏の中で瞑想できるようになれば、本物だね。静かな物音一つしないところで瞑想なんかしたって、無意識になれないだろう?

俺は、車を運転してるときにひらめくことが多いね。あとは、誰かと話しているときに、気づいたり無意識に出てくるな。講演会でも、俺はその場で思いついたことを言うんだ。前もって準備したことなんて、話したって意味ないからね。生でお客さんの反応を見ながら話すから、そのときだけの生きた言葉が生まれるんだよ。

感じる知性を高めるためには、とにかく気になったことをどんどんやってみることだな。気になるってことは、何か感じてるってことだよ。なんとなく行きたいなと思ったら行けばいいし、会いたいなと思ったら会えばいい」

 

風と土が混ざりあって風土になっていく

――星野先達の宿坊には、いろいろな人が山伏修行体験に来るそうですね。

「うちの宿坊では、昔から外国人も受け入れてる。外国人だから修行しちゃいけないなんてことはないからね。女性も受け入れてるよ。今、大事なのはそうやってすべての垣根をとっていくことじゃないかな。『うけたもう』の精神ですべてを受け入れること。

風土っていうのは、“風”と“土”なんだよ。もともとその土地に住んでいる人たちが“土”だとしたら、外から入ってくる人たちは“風”なわけだ。だから、その地域の風土っていうのは、もともとそこにいる人と、外から入ってきた人とが混ざり合ってできていく。外から来た人は、最初は地元の人と混じり合わないかもしれない。でも時間とともに、風と土が混ざっていく。そういうもんだよ。風土っていうのは変わり続けていくんだよ。同じものがずっとそこにあるわけじゃない。だから多様性のある地域になる。それは必要なことなんだよ」

 

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“あいまいさ”がつないでいくもの

――UIターンの推進やインバウンドの増加などで、地方も変わりつつありますね。

「時代は150年〜200年ぐらいのスパンで変わっていく。そうすると、明治時代から150年経ってる今が大転換期なんだよ。でも、いきなり変わるわけじゃない。日本には春夏秋冬はあるけれども、春から夏にいきなり変わるわけじゃないだろう? 春でもなく夏でもない、季節が移り変わる“あいまいな時期”っていうのがある。それが、すべてつないでいく。
白黒はっきりさせようとか、ひとつの答えを出そうとすると対立の構造を生むんだよ。だから、あいまいさが大事なんだ。日本人は非常にゆるやかであいまいな民族なんだよ。何でも焦って決める必要はない。そのうち自然と答えは出るんだから、それまではあいまいなままでいいんだよ」

 

見えないものを感じながら、自分の“日常”を大事に

――山形で楽しく暮らしていくためには、何が大事ですか?

「山形県というのはね、この自然が生み出す空気感が素晴らしいんだ。それを肌で感じればいい。そういう日常が大切なんだよ。どこへ行っても、自分がやっていることはすべて日常なんだから、特別なことを求める必要はないし、特別なことなんて何もない。自分の日常っていいなと思えたらそれが一番じゃないかな。

日常の中には目に見えないものがたくさんある。だから、本来自分の中にある“見えないものを感じる力”が大事なんだ。常日頃から自分の感じることを意識して、感じるままに生きていけばいいんだよ」

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山伏と精進料理の里・出羽三山手向地区の宿坊『大聖坊』

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『答えは自分の感じた中にある 清々しく生きるための山伏のヒント』
星野文紘著/家の光協会
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『感じるままに生きなさい』星野文紘著/さくら舎
感じるままに生きなさい

 

 

 

 

 

 

 

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