南陽市は、街なかに気軽に入れる温泉があり、地元で採れたぶどうを使った美味しいワインが名産の素敵な街。

ある日の温泉上がり、ふと手にしたスタイリッシュなデザインの「山形代表 ラ・フランス」の缶ジュース。飲んでみるとまるで果実そのものを食べているような味わいに驚きました。

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この「山形代表」シリーズのジュースを製造しているのは、南陽市にある山形食品株式会社。

この記事を見ている方も、一度は目にしたことがあるのではないでしょうか?

そこで今回の「山形の攻めの会社教えます」のコーナーでは、身近な存在でありながら、密かに気になる存在だった「山形食品株式会社」にお邪魔し、商品開発の裏側やこだわりについてじっくりと伺ってきました。

 

 

果樹王国山形に根付いた、果物の加工産業

南陽市の本社で迎えてくださったのは、代表取締役社長の鈴木庄助さん。

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キャリアクリエイト(以下、CCR):早速ですが、山形食品株式会社はどんな会社ですか?

山形食品株式会社 代表取締役社長 鈴木庄助さん(以下、鈴木):創業85年になります。昭和7年に、高畠町で農業団体による西洋梨の加工場として発足しました。

 

CCR:近年、6次加工の重要性が話題になりますが、85年も前から加工に取り組まれていたんですね。

 

鈴木:山形県は全国でもトップクラスの果樹王国です。盆地ならではの昼夜の温度差が、糖度を上げ、色鮮やかな最良の果実を育ててくれる。果物加工をするなら栽培が盛んな場所で仕入れ、すぐに行うべきですから、うちばかりではなく、県外の大手加工企業も山形に目をつけ、その頃に工場を造っています。ですから、山形は昔から加工が盛んな地域だったと言えるでしょう。

当社の事業の柱は2つあって、1つは県内の果物を搾汁して販売すること。そして、2つ目は山形代表を中心とした自社商品と大手飲料メーカーさんの商品製造をすることです。東北でも有数の製造企業として、皆様に支持いただいています。

 

 

果汁100%へのこだわり「山形代表」に込めた想い

「まあ、お茶替わりにジュースでも」と鈴木代表取締役社長が出してくださったのは、ずらりと並んだ山形代表!

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CCR:これは贅沢な味わいですね。

 

鈴木:当社には長年培ってきたくだものの搾汁技術があります。“山形代表”は何も足さない、搾ったままの果汁100%のシリーズなんですよ。私たちは、農家さんが育てた果物の中で、色付きが悪かったり、サイズが小さかったりと、規格に合わず市場に販売できなかったものを材料にしています。

規格外でも味は美味しいものばかり。酸素を遮断し搾汁する技術を用い、1年間その果物を味わっていただき、その魅力を感じてくれた消費者が、旬の時期に思い出してもらえたら、生の果実への興味へも繋がります。巡り巡って農家さんをPRしたいと、様々な商品開発に取り組んでいます。

 

CCR:山形代表のシリーズは年々充実されていて、人気も高まっていると伺っています。

 

鈴木:当社の想いはあくまでも『山形県産の果物のPR』なのです。開業当時から変わりません。ですからパッケージは違っても、以前からオリジナル商品は製造し販売していたんです。ですが、もっと山形を全面にだした商品を強化したいと思って、この“山形代表”を立ち上げました。

味の監修にはアル・ケッチャーノの奥田政行シェフに協力いただき、デザインには東北芸術工科大学の中山ダイスケ学長(グラフィックデザイン学科教授)に協力をいただき、まさに山形ずくしの逸品に仕上がったと言うわけなんです。

 

 

生産者の努力を加工で商品に。

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CCR:これは難しかった、という思い入れのあるプロジェクトはありますか?

 

鈴木:やっぱり山形代表シリーズの“かき”ですかね。

 

CCR:かきの100%ジュースは珍しいですよね。

 

鈴木:そうなんです。柿の産地庄内で生産者の方から『収穫期になっても出荷せず木に残っている生産者が多くいるようだから、なんとかならないだろうか』と相談を受けたのがきっかけでした。果汁を搾ってみると、かきは香りが無くて味がうまく決まらない。加えて渋戻りの心配も。加工の方法にも苦労しましたね。

山形代表を監修いただいているアル・ケッチャーノの奥田政行シェフに相談すると、やっぱりプロですね、ぱっぱっぱって柿酢などを加えてとっても美味しく仕上げてくれたんです。ところが農業協同組合からは“山形代表”に加えてほいとの要望が。そうなると柿の果汁以外に加えてはいけなくなってしまって。

試行錯誤の上、フレッシュな柿を使用して、少し干し柿のような上品な甘さを出すことで、風味良く仕上げることができました。試行錯誤で開発には2年かかりました。

 

CCR:庄内柿の旬は短いです。それが1年中楽しめるなんて!これこそ山形にしかない特別なジュースです。

 

鈴木:はい。思い入れとなると、もっともっとあってね・・・販売したい果物の商品はたくさんあって、挑戦はまだ続いています。

 

 

 

すべては山形県産果物・生産者のブランド価値を高めるため

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鈴木:将来的に当社は、ブランド力を上げながら別の商品開発にも力を入れて、山形県の果物の評価向上に繋げていきたいんです。農家さんの果物の価値を知ってもらう、そこが一番ですから。要望があってジェラート事業も立ち上げ、3年になりました」。

CCR:これも気になる商品ですね。

 

鈴木:ジュースとは違った分野で、かなり味にもこだわって作っています。果汁がたっぷりで、贅沢な仕上がりに。ジュースにするほどの量が確保できないけれどもPRしたかったすももは、ジェラートとして商品化されました。季節も限定です。

 

吉田:販売はどんなところで行われているんですか?

鈴木:県内外で、ジュースは海外へも出荷しており、特に香港にあるイオン13店舗で通年販売をしていて、売れ行きも上々なんですよ。

 

CCR:この山形代表が陳列されていると、それだけで山形の果物のPRになりそうです。

 

鈴木:独自の商品開発だけではなく、他社への企画提案もしています。山形県産の食材を使った飲料水、それから販売場所。自社商品で発信するのも、他社商品で『山形県産』と記し発信してもらうのも、目的は一緒。

全ては商品から、果物を知ってもらうため。

うちでできないこともお願いしながら、全国、世界に山形県産の価値を広めています

 

 

とれたて おいしい果物をおいしいその時に搾る

忙しく稼働する現場を案内してくださったのは、生産統括部 次長で、博士(工学)の藤田直樹さん。

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奈良県出身の藤田さんは昔、大手飲料メーカーに勤務していた際、仕事の繋がりから山形食品株式会社を知り、会社の魅力とこれからの可能性を感じ転職し、山形にご家族で移住されたそうです。また、山形食品株式会社で開発をしながら、開発商品に関する知識を深めるためにと、山形大学大学院理工学研究科に入学し学ばれました。

藤田さん(以下、藤田):ここにある機械は、購入してから、当社の製造スタイルに合うように少しずつ改良を加えてもらっています。

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▲伺った2月は、山形では旬の果物がないため、主に他社製品の製造が行われていました。

藤田:当社は果物の集荷から搾汁、製造まで、全ての工程を一貫して自社工場で行っています。そのまま食べてもおいしい、山形の旬の果物をすぐに加工するので、そのままの魅力が伝わる商品ができます。お客様には長年の付き合いということもあるでしょうけれども、私たちのこだわりや、確かな技術を持って、徹底した製造と品質管理を行っていることなどが評価され、ご満足頂いた結果でお仕事をいただいているものと思っています。

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たくさんの工程を見学させていただきながら、一つの商品に対したくさんのスタッフの方が関わり、実に丁寧に作られていることを感じました。

 

 

果物の魅力を伝えるための加工技術

工場見学の後、生産統括部 果汁生産課・ジェラート生産課 課長の佐藤文隆さんをむかえ、作り手の想いを伺いました。南陽市出身の佐藤さんは、大学卒業後に就職して15年になるそうです。入社当時は果汁生産課で勉強し、そのあと品質管理課で13年開発に携わり、再び現場、果汁生産課に戻ってこられました。

 

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CCR:果汁生産課、ジェラート生産課というと、山形代表には欠かせない部署になりますね。山形の果物の美味しさは日頃食べながら感じているんですけれども、形や味の特徴がそれぞれ違いますし、その味をジュースやジェラートにするのは、難しさはないのですか?

 

佐藤:様々な果物がありますけれども、形や繊維の質も違いますからね。りんごなんかは搾ったらすぐ果汁がでますが、柿は少ない。それぞれの果物にあった搾り方でさまざまな機械を駆使してやっています。

 

CCR:柿は確かにりんごに比べて果汁が少ないですね。同じサイズの缶ですけれど、ひと缶に柿は何個くらいはいっているものですか?

 

佐藤:柿1個100gとしたら、3個ほど入っています

 

CCR:そんなに入っているんですか!?本当に贅沢なジュースなんですね。

 

藤田:私の故郷でも柿栽培が盛んなんですが、柿100%のジュースなんて見たことありませんよ。開発の苦労を聞かれたようですが、なかなか柿をジュースにしようと挑戦される方は少ないのでしょう。

 

佐藤:山形代表はうちの会社でしか作れないジュースだと思っています。ビタミンC無添加でここまで果物の味を引きだすことができる。土地柄もぴったり、こんなに果樹の種類がある県はなかなかありません。

それぞれの果物の特徴を活かした搾り方、加工の技術はどこにも負けませんよ

ラ・フランスジュースを飲んでもらうと分かると思うのですが、ジュースと言ってもとろみがあって、ラ・フランスならではの質感を出しています。私たちが培ってきたこれまでのノウハウと加工技術があってこそのことです。

 

CCR:搾汁機械は何種類ぐらいあったりするんですか?

 

佐藤:搾汁機は4台。そのほか、裏ごし機やいろんな機械があって、それぞれをうまく使いながら特徴を出しています。それはまた、地元で日ごろ食べている山形の果物の美味しさを知っているからこそのこだわりですよね。

 

 

こだわりの先にある山形愛と、生産者の笑顔

藤田:今、農家の高齢化が進んで、生産者はどんどん減り、果物の生産量は減っているのです。全国を見てみても、産地でありながら生産量の減少から、ジュースにするほどの材料が得られない地域も出てきています。農家さんの収入が増えなければ、担い手も増えず、市町村も潤わない。

私たちは、ただジュースを作るだけではなく、果樹生産全体を助けるために、これからを見出していかなければならない。もちろん県や市町村と一緒に考えて行かなければならないことです。

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CCR:では、これからの目標について教えていただけませんか?

 

佐藤:私は果物をもっと美味しく搾ること、ですね。山形代表はビタミンc無添加で作っているんですけれども、これだけで終わりではないと思っています。さらにおいしく絞れる方法をとことん追求していきたいです。

 

CCR:山形代表がもっと美味しくなる、それは消費者としても楽しみですね!

 

藤田:私の夢は山形のみならず、日本代表シリーズを作ることです。例えば桃の産地、岡山、和歌山、福島、山形の桃から、ジュースに。全国の桃ジュースを飲み比べできます。飲む方も楽しいですし、きっと全国の農家さんの力にもなれると思うのです。

 

佐藤:今でも県外から果樹の加工の依頼を受けることがありますが、どこでジュース作ってもらおうかなと思った時には『山形食品に頼みたい』そんな風に依頼いただけたらうれしいですよね。

 

CCR:山形食品株式会社の技術を持って、全国の果物が山形に集結すると思うと、本当にワクワクします!

 

藤田:全国分、搾りきれるかな(笑) 面白いこと、もっとしていきたいですね。

 

◆編集後記

取材の中で様々な開発秘話を伺ってきました。山形代表を開発する時には、実際にトマト栽培に挑戦し、朝の4時から収穫作業をしたこともあるそうです(現在は農家さんのものを使用しているそうです)。

全ての努力は山形の果樹・野菜をPRするために、そして生産者がより輝くために!

山形代表というジュースから「山形の果物を食べたい」や、「一緒に私もジュースを開発したい」「ジュースの材料となる果物の栽培をしてみたい」そんな気持ちが生まれたら、と私も胸が熱くなりました。

 

●山形食品株式会社HP

 

※この記事は、平成29年度「東北地域中小企業・小規模事業者人材確保・定着支援等事業」として作成しました。

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