漬物はお好きですか?

今回は漬物の企業を紹介するインタビュー記事である。

おみ漬けにぺそら漬けなど、名前をあげたらキリがないほど山形は種類豊富な漬物大国であるが、実は僕の周りの同年代は漬物嫌いがまあまあ多い。

かくいう自分学生時代は漬物が嫌いだった。

これといって明確な理由はなく、なんとなく匂いそうだからみたいなイメージによる好き嫌いだった。

しかし、いつの頃か自然に美味しく食べれるようになっていて、今では食堂の付け合わせで出てくる漬物は楽しみの一つになっている。味覚が知らぬ間に変わっていたことを実感した思い出である。克服というよりは自然に食べられるようになったという不思議な体験だった。

よく考えたらワサビや辛口カレーも今は美味しいと思って食べている。

だから、子供の頃から漬物が苦手という人、漬物にネガティブなイメージがある人は改めて今、漬物を食べて見て欲しい。

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意外とあの頃の苦手意識が変化しているかもしれない。そして、美味しく食べた時に初めてバリエーションの豊かさと、食事のシーンや飲むお酒に応じた組み合わせの違いも楽しみが広がってくるなんてことも。

好き嫌いを直した方がいいという話ではない。

年齢とともに味覚は変わっていたりするので、いつでもチャレンジしてみて欲しいという話である。歳を重ねれば自身の受け取り方に自然と変化だって生じる。チャレンジとは何も難しいものじゃなくて、そんな変化があるかどうか試してみる、そんな小さな一歩のことだ。

今日この記事を読んだ人が、漬物好き嫌い関わらず、明日ちょっとだけ漬物を口にしたいと思ってもらえたらとっても嬉しい。ついでに言えば、ちょっとだけ口にしてみるにはちょうどいい量で様々な種類の食べ比べ試食ができる壽屋寿香蔵(ことぶきや じゅこうぐら)にご来店いただけたらなお幸いである。

 

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カフェもある漬物店「壽屋 寿香蔵」

山形県東根市にある壽屋(ことぶきや)は販売店である「壽屋寿香蔵(じゅこうぐら)」と併設の休憩喫茶施設「ぬもりカフェ」、製造工場である「壽屋漬物道場」からなる漬物の製造販売会社である。

ぬもりカフェは、囲炉裏付きの土間を使ったテーブル席と、座敷蔵付きの畳敷きスペースが同居する趣ある空間だ。そして何よりも広い。

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通常のカフェとしてだけでなく、団体でくるお客様にゆっくりくつろいでもらいながら、壽屋の漬物の特徴などを聞いていただく学びのスペースとして活用しているそうだ。

壽屋に団体でくるお客様は、農家の奥様たちの旅行や、食料改善委員会(通称・食改)など、食の学びへの興味が高い方が多く、漬物を知って深める観光スポットとしても人気の場所なのである。

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この日は、本店併設のぬもりカフェで代表取締役の横尾友栄さんにお話を聞いた。

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元アナウンサーの社長が伝える「食品添加物を使用していない漬物」

壽屋は、酒蔵を営む家に生まれた友栄さん父・横尾昭男氏が東京の漬物屋での修行を経て山形に帰ってきて創業した。

壽屋の商品の特徴は、「食品添加物を一切使わない」ことだ。

世の中で言う「無添加」という言葉、実はその解釈の自由度は高い。

例えば、漬物を漬ける醤油に添加物が入っていたとしても、原材料の記載は「野菜と醤油」と記載が可能であり、これは無添加と呼んで問題がないことになっている。

しかし、壽屋は自社の中で独自に取り決めを設け、漬物を漬ける酢も食品添加物は使っていない。原材料も食品添加物不使用にこだわっている。

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人気商品のひとつであるりんご酢の場合、材料であるりんごをアルコール発酵、酢酸発酵させていく2つの発酵の段階で、発酵を促進させる添加物を使っていない。

もちろん時間はかかるが、食品添加物不使用へのこだわりは隅々にまで徹底されている。

 

一押しの商品として挙げたのは、地元東根産の完熟梅を自家製りんご酢と砂糖で漬け込んだ「茜姫」。

製造の期間はつきっきりで見守らなくてはいけない手がかかる商品であるが、自信をもってお勧めできる一品とのこと。

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壽屋寿香蔵では、横尾さんは「商品の特徴や思いを知る機会を作り、知った上で選んでいただきたい。」という想いの元、父・昭男氏とともにお客様向けの漬物講座を行なっている。

山形県内に住んでいる方は既に気づいていたかもしれないが、実は横尾さん、地元山形の放送局で16年間アナウンサーをしており、2008年に漬物屋に転身したのだ。お客様に話して伝えることにかけては前職のキャリアが存分に生かされている。

漬物講座を行ったり、カフェを漬物についての学びのスペースにしているのは、お客様に、壽屋の商品を理解してもらうためだ。

食に対する考え方は、人それぞれだが、「伝える」ことでお客様が「知る」、そうすると、美味しく味わってもらえるようになる。

そう信じ、日々努力を続けている。

話して伝えるだけでなく「読んで伝える」ことにも力を入れており、壽屋発行のカタログ「大欅の詩」は、コラムなども充実した読み応えがある冊子になっている。

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これからは、直接想いを伝えることが出来る「店舗にいらっしゃるお客様」との接点と作るために、WEBを使った発信に力を入れていきたいと語り、WEBが得意な人との出会いを求めているそうだ。

 

 

創業者のこだわりが詰まった漬物工場ならぬ「漬物道場」

裏側を知るために、東根市内若木地区にある漬物製造工場にもやってきた。

その名も「壽屋漬物道場」。

漬物の製造から梱包、商品開発まで行っている壽屋の心臓部だ。

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漬物道場という名前は、壽屋の漬物業の創始者・横尾昭男氏(漬物師範・友栄取締役の父)によるものである。

漬物を作るだけでなく、その製法を教える座談会を主催するなど、漬物を文化として伝えている会社のスタンスが色濃く現れた名前になっている。

食品添加物不使用を貫くゆえに、発酵時に材料が痛むリスクが高くなりやすいので、ここでは貨物輸送用の冷蔵機能付き大型コンテナを利用し、温度を保ちながら発酵を管理している。

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壽屋の心臓部であるこの工場の責任者が、取締役工場長の丹野秀夫さん。

実は丹野さん、もともとは時計などの製造工場に勤務していたが、知人の勧めで漬物道場に転職。

イチから漬物を学び、現在は取締役工場長となった。

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製造工場というと、同じ仕事をずっと行うイメージを持ちがちだが、漬物道場ではスタッフ一人一人に託される仕事の種類が豊富である。

「年間通して本当にいろんな種類の仕事と関われることになるが、それはが自分には合っていた。毎日変わっていくからこそ、飽きの来ない職場であることがこの仕事の魅力。」と丹野工場長は語る。

工場では、男女6名が働いているが、完全分業ではなく、旬の商品にあわせて、製造も梱包も様々な仕事を受け持っている。

漬物道場では、製造技法を習得する次の担い手の育成が必要となっている。

漬物興味があり、創業者・工場長の想いと技術を引き継ぎ、壽屋らしい漬物文化を創り上げる仲間と出逢いたいと工場長の丹野さんは語っていた。

 

 

 

 

派手さはないけど着実にじわりと進む壽屋のチャレンジ

壽屋寿香蔵では、漬物やりんご酢などの試食はもちろんのこと、ぬもりカフェでは茜姫のアレンジスイーツも楽しめる。

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新しい商品をカフェで実験的に提供するのはスタッフから発案で、カフェを使った様々なチャレンジが日々生まれ形になっている。

コンポート(砂糖漬け)もいわば山形らしい漬物のひとつだが、最近は地元で採れる豊富な果物を使ったコンポートを壽屋のまかないスイーツとして提供しているのが、これも大好評だそう。

最近は手作りの工芸品なんかを置くスタッフも出て来たとか。

「自然といろんなチャレンジしたくなる、働く人が燃えてくる空間なんですよここは」と横尾さんは笑っていた。

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横尾さんの次なるチャレンジは「ギフト」。

贈り物として人を喜ばせることができる新しい漬物文化が少しずつ親しまれていけば、ハレの日(特別な日、お祝いの日)のメニューとして漬物が食卓を彩るという新たな漬物の未来展望が描けるからだ。

最近は、お土産としてだけでなく、内祝いや結婚式の引き物など、贈り物として活用してくれるお客様がいることが大変嬉しいと語る。

山形の日常の食品として見られている漬物。

しかし、テレビの中の食卓で漬物が食卓に上るシーンを見ることは少ない。

時代と変化とともに食卓の上の風景も変化していくのは仕方のないことだ。

だからこそ、茜姫のようにギフトにもなる漬物は大きな可能性を秘めている。

 

 

アイデアでほどよく進化する会社

漬物を作り、美味しく食べるという文化を大切にするために、変化もほどよく取り入れながら進んでいく壽屋。

そういえば「ちょうどよく」に相当する「やんばい」の語源はいい塩梅。

梅を漬ける際の適当な塩加減から来ている。

漬物が醗酵してしていくようにじわじわと、いい塩梅に未来に向けて進む会社が、そこにはあった。

 

 

※この記事は、平成29年度「東北地域中小企業・小規模事業者人材確保・定着支援等事業」として作成しました。

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