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スポットライトがきらめき、長身のモデル達がランウェイを闊歩。ストロボがまたたく中で、デザイナー達がファッションの“今”を伝える。

思い描くアパレルのイメージは、そんなところ。しかし、メディアなどで露出された華やかな世界はごく表層であり、この業界を支えているのは確固とした作り手達の技術。物づくりの力こそが、アパレル産業の本質なのです。

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時代の先端を行くその業種柄、首都圏をはじめとする大都市に集中大都市に集中する傾向にありますが、そんななか、昨年東京から山形県南陽市へと、本社登記を移動した企業があります。

それが『(株)ナカノアパレル 以下:ナカノアパレル』。同社はこれからの時代のニーズを読み、次世代の物づくりに向け取り組みに着手しました。同社の動きは、地方での物づくりに一体どんな変化をもたらすのでしょうか。

 

みんなは地方のために、地方はみんなのために。

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「弊社が南陽市での営業をはじめたのは、今から5年前のことです。それ以前も、ここは別の会社の工場として機能していました。また、本社登記自体も、昨年この工場に移したのです」。

山形工場の工場長を務める加藤ゆみさんはこう続けます。「以前は一般的な受注型OEMが仕事の中心でした。『ナカノアパレル』となってから一番変わったことは、商品の企画提案をはじめ、素材調達・開発から縫製にいたるすべてを行うようになったこと。

積極的なアプローチを行い、また一貫した生産体制を整えることで、単に生産ラインを提供する企業ではなく、メーカーの各ブランドを支えるパートナーになれたことです」。

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以前は女性のカットソーに特化していた同社ですが、今では多方面の事業に着手し、業績を伸ばしている。

聞けば、『ナカノアパレル』が本社を山形工場に移転したのは、同社代表取締役社長 中野憲司氏の夢である“山形発のMADE IN JAPAN” を創るため。山形から新ブランドを発信し、世界へ挑戦するのが目的であり、本社登記移転の最大の理由なのです。

ところで山形は、自然災害が少ないエリアとしても知られています。一連の同社の動きは、大規模災害に対する危機管理にもつながりました。

山形にとっては、地方の産業が盛り上がる。そして、同社にとっては、新しい動きに向けてのブランディングとリスク回避。ここに、双方にとっていい関係性が生まれたのです。

 

 

Uターン組の高橋さんに訊く、仕事のやりがい

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「入社してまだ一年も経ちませんが、どんどん施設が新しくなっていくのです」。生産管理の仕事を担当する高橋惟さんは、新しいマシンが導入されたり、それによって働き方がどんどん変わっていく同社の環境を、ワクワクした様子で話してくれました。

以前、東京でアパレル会社に勤めていた高橋さんは、8ヶ月前にUターンし、同社へと入社。“山形、南陽市でなければできないことをやろう”という中野社長のヴィジョンに賛同したのです。

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計画の展開は予想以上に早く、まずはメンズのファクトリーブランド『we will』を立ち上げ、他にも別の形で新たなブランドを立ち上げる予定。

「山形でアパレルの仕事ができるとは考えていなかったから入社できたことが嬉しい。今は新しいことがどんどんできる職場に、やりがいを感じています」。

これからの展開に期待し、充実した日々を過ごしているそうです。

 

ナカノアパレルの技術力と、それを支えるスタッフ

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副工場長の石田秀喜さんが見せてくれたのが「自動機」。パターンを入力すれば、人間の技では困難な曲線をいとも簡単に縫製してくれるマシンです。

なんと!! このマシン、日本では初導入ということ。

他にも効率的なかたちで生地を自動裁断するマシンや、また縫い目が見えない縫い方などの技術を紹介してくれました。

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「今やらなければならないことは、いち早く取り入れる。時代に遅れを取らないためにも」。石田さんの言葉が印象的でした。

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また、同社には日本はもちろん、ベトナムからの研修社員も多く採用することで、高い技術力を持つスタッフが集まっている。「さらに高品質な物づくりを行うためにも、社員が働きやすい環境を整備することが、今一番求められています」。

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来年4月には同社の隣接する敷地に、社員寮が建てられ、子どもを預けられる幼稚園施設も併設される。そして、同敷地内には研修所として学び舎を設置する予定なのだそう。

すべてが完成すれば、安心して働くことができ、かつ、研修制度によってさらなる技術向上を目指せるようになります。

 

ナカノヴィレッジ構想が現在進行中

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居住施設と幼稚園施設、そして研修施設からなる『ナカノヴィレッジ』は来年4月に完成予定。そこでは定期的に近隣の農家さんの野菜などを販売するマルシェの開催や、またゆくゆくは外部専門学校との協力体制のもとファッションショーを行うなど、さまざまな展開が計画されています。

「ファッションについて地方都市では学べない、できないという現状を変えるきっかけとなれれば嬉しいです。アパレルという仕事にやりがいをもってくれる若い人が地域に増えれば、大都市集約型というアパレル業界の体制も少しずつ変わってくるんじゃないかと思うのです」。

確かに、地方だからという理由でやれない仕事は少なくない。もし今後、同社のような企業が増えれば、日本の地方はもっともっと面白くなるはず。

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地域と連携しながら、次世代へ夢を繋げたい。それが同社が望むところなのでしょう。今後の『ナカノアパレル』の動きから、目が離せません。

 

※この記事は、東北経済産業局「平成28年度東北地域中小企業・小規模事業者人材確保支援等事業((2)事業)」の一環で制作しました。

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