マイプロ部in鶴岡・酒田2017に参加した方が書きました。
(マイプロ部とは、県外在住のまま山形県との繋がりを深めていくプログラム。2017は鶴岡・酒田をフィールドに開催。今年度(2018)は、鶴岡市で開催。「マイプロ部in鶴岡」の参加者募集は6月頃からスタートします)
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みなさん、「嫁ターン」という言葉を聞いたことがありますか?
奥さんの地元に、違う土地出身の旦那さんと共に夫婦で移住することを「嫁ターン」と言うことがあるそうです。
筆者(インタビュアー)は鶴岡市出身。
一方、主人が関東人であるため、移住となると「嫁ターン」になります。
「嫁ターン」、実際どうかなのかしら??ということで、鶴岡市に「嫁ターン」で移住された方にインタビューしてきました。
千一珈琲を営む岡部さんご夫婦にインタビュー
山形県鶴岡市山王通り商店街の一角にある「千一珈琲」さん。(千一珈琲WEBサイト)
おしゃれな佇まいのお店は、世界中の厳選したコーヒー豆を丁寧に焙煎するこだわり。
旦那様がマスターとして、奥様はアシスタントとして、ご夫婦で切り盛りされています。
ご夫婦は約2年前、東京から鶴岡に引っ越ししてこられました。
奥様の浩美さんは、鶴岡市出身、一方、旦那様の千信さんは東京生まれの東京育ち。
どうして庄内に移住しようと考えたか
まず気になったのは、「どうして奥様の浩美さんが故郷である庄内への移住を考えたか」でした。
浩美さんは「もう東京に未練ないなと思ったの」とすっきりとした笑顔でのお答え。
大学卒業後、勤めていた会社を辞めアメリカにあるコミュニティーカレッジ(専攻は情報システム)へ留学されていた浩美さん。
帰国後は英語力を生かし、東京で外資の金融機関(証券会社)の市場営業本部のクライアントマネジメント担当として働かれます。
…華々しい経歴ですよね。
ただし、そこは外資企業。
リストラも日常的にあるような環境だったとか。
「東京にいても安定していない。いつリストラされるか分からないという不安。
一方で鶴岡での職探しも、実際どんな仕事があるか、安定した収入が確保できるか不安。
どちらも不安なのであれば、後者の不安に向き合う方が自分にとって良いのでは」
そのように考え始めたと言います。
また、お子さんが産まれたのも、移住を考えるきっかけになったそう。
「子ども自身は、住む環境が選べない。だからこそ親がどうしたいかを含め、選ぶ責任があると思って」
筆者も小さい子供(1歳)を抱える身として、
子育てには田舎の方がよいと考えており強く同感しております。
また、
「東京って若い時は楽しいけどね。でも、年を重ねてくると、飽きてくるよね、東京の刺激に」
こちらも激しく同感。
東京はお店やイベントも多いけど、自然が少ないですし
満員電車とかね…人も多くて…疲れますよね。
移住について旦那様にはどう伝えていったのか
次に気になるのは「鶴岡市出身ではない旦那様が、移住についてどう考えたのか」です。
男性は特に仕事もありますし、しかも土地勘のない場所への移住。
反対はなかったのでしょうか?
すると、
「運よく、移住してもよいと考えてくれる旦那さんだったの」とのご返答。(ちなみに結婚した当初には、移住の話は全くしていなかったそう)
旦那様は東京ではフリーランスのSE(システムエンジニア)で生計をたてられていました。
浩美さんの移住の話を聞いて、旦那さんも同じく東京には未練はないと思ったそう。
2013年に結婚されたお二人は、浩美さんのお父様が当時ご病気だったこともあり、月に2〜3回のペースで二人で鶴岡に帰り、顔を出されていたようです。
月に2〜3回のペースって頻度高いですね(優しいご夫婦で素晴らしい!!)
ただこの機会も、旦那様の鶴岡への理解を深めたのでしょう。
そして、このタイミングで昔からの夢だったコーヒー屋さんをやりたいという思いを実現されるのでした。
とはいっても、すぐに開業したわけではありません。
2015年3月で東京での仕事をやめ、4月はまるまる一か月間の引っ越し準備。そして5月に鶴岡へ移住。
そこから、なんと約1年半かけて、開業準備をしていきます。
というのは、田舎では何よりも「人間関係を築いていくことが大切」と考えられていた千信さん。
5月の引っ越し後、その夏から、だだちゃ豆農家のお手伝いを始めます。
お手伝いを通して、鶴岡の文化への理解や土地感を少しずつ深めていかれたといいます。
それだけではなく、町内の消防団に入ったり、町内会に入っては寄合(飲み会)に参加したり、町内でのソフトボール大会や卓球大会へも参加して。
できる限り、町内のイベントに顔を出されました。
「都会育ちの旦那さんにとっては、田舎を完全な異文化だと覚悟してきてくれたみたい」
次第に鶴岡(地元)の人も心を開いていき、人の繋がりが広く強くなっていきます。
そして、この人との繋がりが、今の商売(コーヒー屋さん)にも生きているとのこと。
よくも悪くも田舎は人間関係が命。
田舎では、よそ者がなじむハードルは高い。
しかし、いったん馴染めば、家族のように暖かく接してくれるといった話を聞きます。
逆にいうと、深い人間関係が苦手な人は、田舎で暮らすのは難しい。
というか、深い人間関係という田舎の魅力を十分享受できなくなってしまうのかもしれません。
実際に移住してどうか
ではでは「実際に移住してみてどうでしょうか。」と聞いてみると、
もちろん良いところだけではないけれど…と前置きしたうえで、「改めて良さに気づいた」と柔らかな笑顔で答えます。
まず時間にゆとりがある。
東京では、22時…23時…夜遅くまで働いていましたが、
こっちでは、ご飯を食べて、ゆっくりしてもまだ20時。この後なにしようか?と思うそう。
次に食べ物が豊か。
ご近所さんや親せきから貰い物をすることが多く、
春には孟宗汁が名物の鶴岡では「人生でこんなに筍を食べたの初めてだった」と千信さんは驚いたとのこと
また釣りが趣味の千信さん。海に近い庄内は休日の楽しみが増えたそうです。
移住を希望する人へのアドバイス
実際に移住には興味があるけど、実行まではいかない、という方向けにアドバイスを伺ったところ、「マイプロ部や、鶴岡ナリワイプロジェクトに参加することは絶対おすすめ!」と力強く教えてくれました。
マイプロ部に参加して、鶴岡で活躍している人に実際にお会いすることで、
感覚的に「移住しても大丈夫だ」と直感したそうです。
また、鶴岡ナリワイプロジェクトでは、「様々なスキルを持っている方と知り合えた。地域で輝いている方と知り合えた。」とのこと。
人とのつながりが大切な田舎で、つながりを見つける大きなきっかけになったと教えてくれました。
(マイプロ部2017の様子)
最後に、このような思いも教えてくれました。
これからは東京一極集中から地方に人が流れる時代に代わって来るのではないか。
東京は刺激がたくさんあるが、体験できることは飽きていってしまうこと。
しかし田舎での生活は、毎日の生活が豊かであり、飽きることがない。
とのことでした。
もちろん、人によって様々な考え方があるとは思いますが、
地方では時間や食や自然環境を始め、多くの豊かさがあると私も納得しております。
しかし、旦那さんにとって嫁ターンとは、土地勘もない、友達もいない、奥さん側のホーム(親戚づきあい等)でありハードルがかなり高い状況だと思います。
「奥さんが言うからしょうがなく…連れて来られた」
という受け身のスタンスでは、新しい環境は楽しめないでしょう。
そこで、嫁ターン成功の秘訣を勝手に考えてみました。
嫁ターン成功の秘訣
【STEP1】旦那さんにその土地を知ってもらう行動をする
不安感を軽減していくためには、まず、その土地を知ってもらうこと。
また、その頻度が高いほど効果が高いと思います。
今回の岡部さんご夫妻は月に2〜3回のペースで鶴岡に来られていたとのこと。
その中で、旦那さんは少しずつ、その土地への理解を深めていったのではないでしょうか
【STEP2】その土地に関わる人間関係を創る
始めは、その土地での旦那さんの人間関係は全くのゼロです。
その土地を訪れていく中で、人と知り合いになり、人間関係を創り切り開いていく気概が必要だと考えます。
そのためには、その土地の移住推進課の方とつながったり
その土地に関わるイベントに参加して、同じく移住を考えている方と会っていくことが大切なのではないかと。
岡部さんも、まずはマイプロ部への参加から始められました。
移住してからもその地元の関係に顔を出す等して
新たな関係を創っていく行動力が、豊かな移住生活に繋がるようです。
【STEP3】旦那さんが現状(仕事含む)に違和感を持つ(不満が出る)まで待つ
とはいえ、旦那さんにとっては人生をかけうる大きな決断となります。
「今の現状(仕事含む)に満足」であれば、なかなか現状を捨てて、移住を検討する気持ちにはならないでしょう。
移住という大きな決断を後押しするには、現状に何かしら違和感を持つ(不満がでる)タイミングが重要なのではないかと考えました。
しかしこればかりは人の感情なので、他人が変えることはできません。
旦那さんの気持ちを尊重するためにも、その時が来るのを待つ必要もあるのかもしれません。
まとめ
岡部さんご夫妻、貴重なお時間ありがとうございました!(マイプロ部メンバー)
今年度(2018)は、「マイプロ部in鶴岡」の参加者募集を6月頃からスタートします。
県外在住で鶴岡市・庄内に移住したい・移住するか迷っている・移住はする予定ないけどもっと鶴岡と繋がりたい!関わりたい!という方は、未来ラボをチェックしに来てくださいね!
●千一珈琲WEBサイト
Profile
千一珈琲 岡部さん
地元鶴岡市へUターンして旦那さんと共に、千一珈琲を切り盛りする。旦那さんは東京出身のブラジルコーヒー鑑定士。