[sponsored by 長井市 ]

文章:池田将友(長井市在住・作家 著書「弁当男子」

写真:船山裕紀(長井市在住・カメラマン兼 おもちゃ屋kimiオーナー)

 

 

田舎に戻るという選択

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私の故郷である「長井」を詳しく知っている方は、おそらく少ないでしょう。

山形県の南、置賜地方に長井市はあります。いわゆる地方都市。もっと砕けた言い方をすれば田舎です。首都圏と比べて、人口、商店、娯楽施設の数は圧倒的に少なく、それだけ聞くと、若い世代(特に10~20代)の方は退屈な町と思うかもしれません。私も学生の頃は退屈な町だと思っていました。

カラオケが一軒しかなければ、ファストフードの店は一軒もない。テレビや雑誌に載っているような店はなく、カッコイイとは程遠い場所。それが、学生時代の故郷の印象でした。多感な時期だからこそ、ゆったりと流れる田舎の空気感を物足りないとか、ダサいと感じてしまっていんだと思います。故郷に対して、反抗期だったとでもいうのでしょうか。

退屈な町を早く出て行きたい……その一心で、一度は首都圏へと移り住んだのですが、今は故郷に戻り生活をしてます。

昔よりも空き家は増え、人口が減り、公園で遊ぶ子供の姿を見なくなり、すっかり寂しくなってしまったなとは思うのですが、長井を退屈な町だと思っていません。それは、自分のライフスタイルを確立しつつあることも一因だとは思いますが、田舎は何もない場ではなく、様々な可能性がある余剰ある場であるということに気づいたからかもしれません。

仕事、お金、人間関係、田舎で暮らすためのハードルはいくつもあります。故郷であることがプラスになれば、マイナスに働くこともあります。不安に思うことは色々ありますが、不安があるのは行動を起こしていないからであって、実際に動いてみると、それらの問題は案外気にならないことだったりします。だから、田舎に戻ることに関して、ああだこうだと悩んでいたら戻ってこれなかったと思います。

なので、実は悩むことは後回しにして、とりあえず故郷に帰ろうと思い立ち、暮らしていくうちに、田舎の面白さに気づいてきたというのが正直なところです。

 

 

見えてくるもの

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「灯台下暗し」と、ことわざにあるように、身の回りのものの価値に気づけないことは良くあります。かくゆう私も、学生時代には故郷の長井をつまらない町としか見ていませんでした。その意識が変わったきっかけは、やはり、一度首都圏へと移り住み、離れた視点から故郷を見ることができたことにあります。

長井は西と東に山があり、町の中を三本の大きな川が流れる町です。四季を五感で感じられるほど季節の変化に富んでおり、また、町の中心地から、車で五分足らずの場所に、豊富な自然環境があり触れることができます。それが、どれだけ恵まれた環境にあるのかというのは、窮屈な都会暮らしを経験しなければ気付けなかったかもしれません。

初夏になると、市街地の田んぼに水が張られ、辺り一面に鏡を敷き詰めたような光景が生まれます。人の営みと自然が融合した姿です。その水面に大きく聳える山の雄大な姿や茜色の夕陽が映ると、自然が持つ圧倒的なスケール感や奥行きある深い色彩に思わず言葉を失います。本当に、理屈抜きで「ああ、綺麗だな」って、心に潤いを感じます。

自然が身近にあることが、こんなにも素晴らしいということ、心に穏やかさを与えてくれるということに気づけたのは、やはり灯台下暗しで、故郷を離れて生活をした経験があるからでしょう。そんな自然を堪能したく、気づけばサイクリングが趣味になっていました。長井には、程よいアップダウンの山道や、田んぼの真ん中を走られる道路が整備されていて、自然を堪能するのに、自転車がちょうどいいツールなんです。休日の朝や仕事帰りの小1時間をひとっ走りするのが何事にも変えられない贅沢な時間です。

 

 

遊びはつくるもの

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長井に戻って、一番大きく変化したことは交友関係です。恐らく、その点で不安を持っている方は多くいるでしょう。私も、同級生のほとんどが市外へと移り住んでしまい、親しかった友人があまり残っていないことが不安でした。それに加えて、学生時や社会で学んできたデザインやアートの世界に関して、同じように興味を持っている人がいるのか。共感してもらえるのだろうかということが不安でした。

しかし、人の縁とは不思議なもので、類は友を呼ぶというように、同じような価値観や考え方を持った人とつながっていくということが起こります。私と同様にUターンしてきた人や地元にいながらアートや音楽といったクリエイティブな活動を実践している人など、自然と自分の感性にあった人と巡り会います。これは地方都市ならではのことだと思います。人口の分母が小さい分、巡り会う確率が高いんですね。だから、気の合う友達を作りたかったら、田舎に越してくることが、実は確実だったりするのかもしれません。

そうやって、似たような感性を持った友人が増えると、遊びの質も変わってきます。今思うと、首都圏に暮らしていた頃は、遊びを買っていたような感覚でした。対価を払い、それに見合ったサービスを受ける。そういった施設や物品が溢れているのが都会であったように思えます。田舎にはそういった対価を払って、払った分のサービスを受けれる施設や物品が潤沢にあるわけではありません。ですから、「遊び」を自分たちで生み出していくしかないんです。

遊びをつくる……なんだか難しいことに思えるかもしれませんが、とても簡単なことだったりします。子供の頃を思い出してみて下さい。遊ぶことに困っていましたか? というより、なんでも遊びに変わっていませんでしたか? それに、子供の頃もそうですが、一人では思いつかなくても、仲間が集まってくると自然発生的に遊びが生まれるということがありませんでしたか。これが、大人になって、しかもクリエイティブな発想を持っている人が集まるとどうなるか、それを今、体験しています。

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例えば、私が今取り組んでいるプロジェクトの一つに、空き家になった工場を自分たちの手で改修するというものがあります。言い換えるならば、壮大なDIYです。これも、私と同じようにもの作りが好きな友達がいたから考えついた遊びの一つです。それに田舎であるから、使われなくなった工場があり、それを直すことに協力してくれる人が現れるというのも地方ならではの面白さです。正しいことが前提ですが、何かをしたいと投げかけると、色々な人が応えてくれ、実践できる場がある。そういった環境は、都会にはない魅力です。

食事も遊びに変わります。旬の山菜を採りに行って、それを天ぷらにして食べることも十分に遊びですし、畑で採れた野菜を使ってバーベキューをすることも遊びです。人が集まって、美味しいものを食べたり、お酒を飲んだり、色々なことを語らう。とても充実した遊びです。

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そして、そうやって遊んでいくと、また同じような思いや考え方を持った人たちが集まって、新しい遊びが生まれます。最近では、ボードゲームに詳しい方と友達になり、すっかりはまっています。テレビゲームと違って、一人でできないところがボードゲームの良いところで、次々に新しい友達が増えています。そこで生まれたつながりで、また新しいことが起こる……そう考えてみると、田舎で暮らすことは全く退屈ではありません。

実際に戻るまでは、「やっぱり、田舎に戻っても面白いことはないだろうな」と、ネガティブなイメージがあって、どこか諦観めいた考えでした。でも、悩んでいないで、思い切って戻り、土地の良さに気づき、色々な人と出会えたことで、首都圏で暮らしていた時よりもクリエイティブで、能動的な生活をしているなと思います。

考えることよりも、まず行動。行動することで反応がある場所。それが、長井です。なかったら、自分で作る。それが実践できるのはコンパクトな町ならではだと思います。

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Profile

池田将友さん

いけだまさとも

1983年生まれ
2006年東北芸術工科大学卒業
2010年長井市にUターン
2012年PHP研究所より「弁当男子」刊行
2014年(一財)文教の杜ながい入社

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