2021年3月〜7月に開催していた「自分の未来をつくるゼミ」。
山形在住の方に話を聞き(取材)、伺ったお話をレポート記事にして未来ラボに掲載する、という活動を通して山形との繋がりと自分の「山形と関わる未来」を作っていくプログラムです。
ゼミ生の1人、庄内で産まれ首都圏育ち・庄内にある祖父母の店を何とかしたいと考えている高橋さんが、「大阪生まれ祖母が山形県にいて現在は鶴岡市・旧朝日村大鳥地区で地域のおじいちゃんおばあちゃんと距離が近く暮らしている」という共通点が多く、田舎の年配の方々との関わりが多い田口さんにお話を伺いました。
田口さんは、過去にヤマガタ未来ラボで記事を書いてくれていました。こちらもぜひご覧ください。
田口比呂貴さん
1986年生まれ、大阪育ち。法政大学を卒業後、電子部品メーカーに勤務。2013年から鶴岡市地域おこし協力隊として大鳥地区に移住。2016年に協力隊を卒業し、そのまま大鳥地区で暮らす。地域の野良仕事をしながら、民俗調査をしたり、山菜茸の通販「大鳥てんご」の運営、地域づくりや地域おこし協力隊のサポートをする中間支援団体Sukedachi Creative 庄内の活動を行っている。
研究員・高橋:地域の維持を前提として変化していくことを大事にしていると、ヤマガタ未来ラボの記事を見て感じました。ほかに大事にしていることはありますか?例えば断らないで何でもやるなど…
田口さん:自分は入り口が地域おこし協力隊だったので、仕事か仕事じゃないか判別ができなくて、なんでも参加していました。
逆に目的意識(研究や事業など)があって移住するひとほど、地方の「合理性がつきつめられていない」ことなどがしんどくなってしまう様子も見受けられますね(寄合や飲み会、農作業の手伝いあいなど)。
自分の時間を確保したい人は、最低限のことだけやって、自分がやりたくないとおもったことは断っていることもあるようです。
自分のバランスを見つけて、関わり方を見つけるのが大事ですね。
集落の人たちの中には、高齢のため、しんどくなって町内の役割を若い自分に引き継ぎたいと思うこともあるから、よく頼まれてます。でも引き受けすぎるとしんどくなる時もあります。
研究員・高橋:私は移住するかすら考えていない関係人口ですが、そのような人たちがどんなスタンスをもっていると嬉しいですか?
田口さん:都会の論理を振りかざさないことが大切だと思っています。「地方の効率が悪い」や「ダムをつくるのは環境によくない」など、その人たちの歴史のなかでやってきたことを尊重しない態度ではなく、昔のことを語るおじいちゃんおばあちゃんの姿勢を受け入れることが重要なのではないでしょうか。移住しなくても、その土地に本気で関わってくることが見えると「やらないかー」とか声かけてくれるようになります。地域の人たちは打算的じゃなく、心の中を見てくれますよ。
また、地域は多面的でそれぞれの文脈で歴史が違って、太い歴史を見ないと地域の人の言葉がわからないときがあるため、歴史そのものを大事にしないといけないと思います。
例えば田植えに充分すぎる人数が手伝いに来て、逆に効率がわるくなっているときもあるが、それは昔からの付き合い。手伝ってくれた人たちにコメを分けようという目的が裏に隠れていたりする時もあります。
地域の人たちに経営のプロはいません。彼らにとって今までやってきたことを続けていくということが大事だから、てこ入れするところはして、大事にすることは残しておくということが必要だと思います。
研究員・高橋:祖父母は「新しいことをなにかやると地域の人から色々言われる」という風に心配をしています。
田口さん:価値観が合わない人は何か言ったりする場合もあるけど、総和で見ると応援してくれるところはあると思いますよ。
何か新しいことを商売としてそのお店が始めるとき、極論地域の合意は必要ないもの。
例えば「今困っている」ということと、始めることのチラシを配ることで地域の人にアピールしていったら、集落の人たちは買いに来てくれるかもしれない。
おじいちゃんおばあちゃんが「目立つことをやりたくない理由」がほかにある場合や、もしくは思い込んでしまっている場合もあるので、そこはすり合わせていく必要があります。
商店とか酒屋は地域の人のたまり場になっていることが多いです。
大鳥でも酒屋がなくなったことがあったが、そこがなくなってしまうと居場所がなくなってしまった人たちもいました。
小さいイベントが小さく小さく続いていく場合もあるし、古いものが残っているのは事実。
人間関係のアナログさが重要で、時間がかかりますが、逆に時間と手間さえかければ認めてくれる人たちが多いから安心していいと思います。
同席していたコーディネーター井東さんの視点
「目立つことをしたくない」の裏にある根本の問題を探ることが大事。(例えば、困っていることを知られたくないなど)
まずは、地域づくりグループとつながり、場所を祖父母の店にこだわらないで、地元のイベントに年3〜4回出店する、から始めるのもいいかもしれない。
研究者の視点
もともと祖父母の店を何とかしたい、という思いでインタビューさせていただいた田口さん。インタビュー前にブログ等を読ませていただいたとき、地域がやばいから何とかするというより、お世話になったからどうにかしたいという思いが感じられていました。私自身、お世話になったから何とかしたいという思いがあるんだなと感じ、スケールは違えど、目指すところは一緒なのかなと思っていました。
祖父母のお店が再び元気になるには地元の人たちの協力が必要で、その協力を得るためには自分から何かしなければいけない。
また、地域の人に喜んでもらうことをするには、まずは地域を知ること、そして大切にしている歴史を把握することが重要なのかなーと思います。