かつては活気あふれる商店街が立ち並んでいたものの、空き物件が目につくようになっていた七日町。

そんな中、空き家となっていた『洋傘のスズキ』をリノベーションしオープンしたBOTA coffee。

今回、カフェ経営について勉強中!のやまらぼインターン生のSatsukiが、山形のリノベーションの先駆者・BOTA coffeeオーナー佐藤英人さんにお話を伺いました。

 

今回の山形で働く人:佐藤英人さん

大学卒業後、東京の大手不動産会社に入社し、その後山形にUターンし山形の不動産会社にて4年間勤務。5年間の不動産業務の経験を生かし、空き物件をリノベーションをし、2014年にBOTA coffeeをオープン。現在はオーナーとして、深煎りにこだわりを持った味わい深いコーヒーを提供している。

 

目次

✔︎いまの物件との出逢い

✔︎BOTA coffeeオープンまでの道のり

✔︎経営していく中で

 

いまの物件との出逢い

空き物件を新たな形に蘇らせ、多くの地域住民に愛される存在となったBOTA coffee。もともとは傘屋さんだったこの場所は、BOTAができるまで3年間、空き物件として手付かずの状態となっていたそうです。そんな物件と出逢ったきっかけとなったのが2014年に開催されたリノベーションスクールだったそう。

 

―このお店との出会いのきっかけであったというリノベーションスクールとは一体どういったものだったのでしょうか?

2014年に山形で初めて開催された「リノベーションスクール」は、講師3人と受講生30人位がいて、主に山形市で事業を始めたい人たちが集まって、空き物件をどのように活用していくかということを実践的に考えていく場です(株式会社リノベリング山形市が提携して開催)。

そこに『サブユニットマスター(講師)』として参加しました。

このスクールでリノベーションして活用しようと用意なったのがこの場所。元々、勤めていた不動産会社の管理物件だったので、大家さんにはリノベスクール前からお世話になっていました。

 

ーもしまたそういったリノベーションスクール が開催されるということになったら、私のような学生でも参加できるんですか?

できますよ。「山形を良くしていきたい!」っていう強い想いがある方であれば、誰でも参加できます。

現在、全国的にも盛んになっているリノベーションスクール、山形でまた開催される機会があれば、ぜひ私も参加してみたいなと思いました!

 

ーリノベーションとはどういったものなのでしょうか?

リノベーションは、リフォームとは違います

リフォームは、『Re➕form』つまり、元の形に戻すこと。だから、もとの物件の壁とか屋根とか全て剥がされて全部きれいなること。

でも、リノベーションっていうのは、『Re➕innovation』だから、元の物件の良さを生かして物件の価値を高めるっていうことなんですよ。

 

ー傘屋さんの看板をそのままにしてあるのも、リノベーションの本質的なところなんですね。

そうですね。それもあるし、ずっとここの物件を管理してくださっていた大家さんの想いを大切にしたかったっていうのも大きいです。

あとは、『傘』っていう漢字の造形が好きだったんです。屋根の下に人が集まって交わっているっていう風にみえません?僕自身、この物件を再生させることで、人が集まる空間を作りたいなという想いを持っていたので、『傘』っていう漢字がなんだかしっくりきたんです

『ボタ』っていうのも雨を連想させる音として使いたくて、まさにここの場所だったからこそ生まれた店名だったんですよね。そうやって、場所の本質を理解して、それを活かしていくっていうのが、リノベーションの本質だと思っています。

(お店の写真。『洋傘のスズキ』の看板はそのままに)

 

雨っていうのも、ネガティブイメージがあると思うんですけど、そういうイメージを払拭できたらいいなと思っていて。僕が小さい頃に、農家をやっていた祖母が、雨が降るといつも喜んでいたので、そういった思い出も今の想いに繋がってるんですよね。

 

(店名の由来ともなったたくさんのお花(botanical)が店内の雰囲気を作り上げている)

 

BOTA coffeeオープンまでの道のり

英人さんは高校生の頃からいつかは自分のお店を持ちたいと考えていたそう。そこで、自分でお店を持つようになるまでの道のりを深掘りし!ここからは、いつかカフェや飲食店を経営してみたいという想いがある人、でも何から始めたらいいのかわからないという想いを抱えている人にとってもためになるかも…?

 

ー英人さんはどうしてコーヒーのお店を開こうと思ったんですか?

大学では建築を学んでいたのとカフェ巡りが趣味だったというのもあって、コーヒーがどんどん好きになっていきました。カフェに行くときには、それぞれ空間がどんな雰囲気を作り上げているのかなっていう観点はあったかもしれないです。お店でコーヒーを飲んだときに特別美味しく感じるのって、空間の力が強いと思うんですよね。

ーなるほど。「コーヒー好き」と「建築好き」っていうのは、英人さんの中では紙一重なんですね。

はい。あとは、単にコーヒーといっても、僕は『深煎り』のコーヒーしか出していません。というのも、自分が本当に美味しいと思えるのが深煎りというジャンルで、自信を持って提供できるものしか提供したくないというのはこだわっているところですかね。

 

(英人さんのこだわりが詰まった深煎りコーヒー)

コーヒーの苦味が全くくどくなくて、毎日でも飲みたくなるようなスッキリとした味わいでした。

 

―実際に『独立』はどのようにして実現させたんですか?

「独立する資金を貯めるために働く」というのも一つの手ではあるかもしれないけど、資金が貯まるのを待つのでなく、お金を借りるという選択をとりました。借金をすること」ってなんとなくネガティブに捉えられるけど、実は全然そんなことないんですよ。僕も実際ここをオープンするために800万円の借金をしてます。チャレンジするのに、早いに越したことはないですから。

ただ、段取りは大切だと思います。僕は、会社に勤めている間に少しづつ準備を進めていきました。お金を借りるにも、やっぱり無職だとなかなか信用してもらえませんよね。それに、社会人として経験を積んで、お金の流れを把握したり、社会の仕組みを知ってから独立をするっていうのはベストだったのかなって自分は思っていますね。

 

でも、実際に大学生でも自分の力でお金を借りてお店を開いている子もいますよ。芸工大の後輩で「Day & Coffee」っていうカフェを開業した子がいて、その子はクラウドファンディングで資金集めに成功してオープンを実現させてましたね。興味があればそこも行ってみると面白いと思いますよ。

 

やまらぼインターンの視点

佐藤英人さんが通ってらっしゃった東北芸術工科大学の後輩の方々が経営されているという『Day & Coffee』、気になったので早速調べてみました!
Instagramの投稿だけでなく、オーナーの2人は最近YouTubeでの配信も始めたそうで、私も何本か動画を拝見させていただきました。明るく軽快な2人の話ぶりが、コーヒーをもっと身近に感じさせてくれるようなコンテンツばかりで、これからの投稿も楽しみになってしまいました。
Instagramのアカウントをこちらに貼っておくので、気になった方はぜひチェックしてみてください。
https://www.instagram.com/dayandcoffee/

 

 

ー実際、英人さんは借金をすることに対して不安はなかったですか?

自分への投資という意味での借金ってむしろプラスなことなので、浪費とは訳が違って、価値あるものなので、恐怖心とかはそんなにいらないと思います。

例えば、ある学生が、映像関係に興味があって、いまカメラを買うかどうか迷っていたとします。そして、迷った挙句、その1ヶ月後に購入をしたとして、その1ヶ月って勿体無いですよね。1ヶ月買うのが早ければ、彼は1ヶ月分のスキルを1ヶ月早く身につけられていた訳ですから。頑張ればお金は後から返すことができても、失っちゃった時間はもう戻ってこないですからね。自分への投資は迷わずしていくべきだと思います。

 

 

ー銀行からお金を借りる際に、経営方針をプレゼンをしたとおっしゃっていましたが、具体的にはどのようなプレゼンをなさったんですか?

やっぱり僕の強みは「建築」だったので、空間の話を中心にしましたね。

銀行員の方に「その辺のコンビニでも1杯100円でもコーヒー売っているけど、どうやってその近くにお店作って500円でコーヒー売るの?」って聞かれたときに、「僕はコーヒーっていう商品をただ売りたいわけじゃありません。」って答えましたね。

やっぱり、その場で得る体験だったり、ここの空間でしか感じられない心地よさだったりを売りたいなと思っていたのでそこはしっかり伝えましたね。

それに、BOTAのコーヒーは、どこででも売ってるようなコーヒー豆じゃなくて、きちんと産地にもこだわって出しているスペシャリティーコーヒーだということ、その価値をわかってくれる人も増えてきているから絶対に商売としても成り立ちますっていうことをプレゼンしましたよ。

 

 

ー独立するということに対して恐怖心などはなかったですか?

正直、オープンするとなったら、そんなことは考えている暇はなかったです。実際に、もうお金も借りてしまっていたので、やるしかないっていう状況になっていましたからね。やるしかないっていう何かリスクを負っているっていう状況になれば、人間結構本気出しますから、そんなに心配はいらないと思いますよ。

でも、実際親の説得もあって、もしこの事業で失敗したときにも社会復帰できるように資格をとっておくよう勧められていたので、再就職もできるくらいの資格はとってからやめました。そこはある意味リスクヘッジになりますね。

 

研究員の視点
英人さんは日本では「借金はリスクが高い」「独立・開業はリスクが高い」というような考えが固定化されすぎているということをおっしゃっていましたが、大学の講義でも同じような話を聞いたことを思い出しました。実際に、スタートアップランキング(世界各国の起業数ランキング)で日本は21位という結果でした。先進国の中で、比較的低い順位となっていることからも日本は新しいことにチャレンジすることが苦手な傾向にあることは明らかですよね。しかし、日本がチャレンジしにくい環境というのも、あくまでそういう傾向にあるという話でしかありません。実際に英人さんのように、自分の信念を貫き通して、投資をして独立を果たしている方に話を聞いてみると、チャレンジすることでリスク以上に、得られるものの方が多いように感じました。

 

経営していく中で

ーもし何か英人さんが思う経営のコツなどあれば教えていただきたいです。

1番は、無理をしないことですかね。オープン当初はやっぱり何にでもこだわってしまっていて、食材も全て山形のものでやっていこうとしていたけど、コストもかかってしまうし、値段に見合ったパフォーマンスもできていなかったんですよね。お客さんが出してくれる金額に見合ったサービスができていないと結局意味がないし、そこまで求めているお客さんって果たしてそんなにいるのかってっていうところを考えてみると、無理しなくてもいいんですよねそれからは、自分が自信を持って出せるBOTAコーヒーに力を入れるようにしましたね。

 

 

ー経営していく中で、一番大変だったことはどんなことでしたか?

やっぱり、お金が払えなくなってしまったら強制終了っていう世界なので、そういう状況に陥らないためには日々の積み重ねしかないですよね。なので、もちろん不安にはなります。オープン当初なんかは数人しかお客さんがこなくて、過去最低の日は1日の売り上げが3,000円だったこともありました。なので、そういう時の不安に耐えられるメンタルはやっぱり必要かなって思いますね。

 

 

ーこのコロナ禍で飲食店はかなり影響を受けたというのをよく耳にしますが、実際のところコロナの影響はどうでしたか?

それでいうと、逆にこのコロナがあったことで、自信がつきましたね。休業しなきゃいけない時期は多少ありましたが、以前から来てくれていたお客さんは変わらず来てくれるし、従業員へのお給料も家賃も払えているし、しっかり借金も返せているので、コロナの影響は他に比べるとない方だったのかなと思います。

それに、このコロナ禍で人のお金の使い方が変わってきた印象を受けていて、どうせだったらいいものにお金を落とそうっていう傾向も強まっているので、ここを乗り越えられたっていうのは逆に自信に繋がりました。

 

ーリアルな声が聞けてとても参考になりました。最後に何か一言あればお願いします。

やっぱり、自分の好きなことで生きていくのって、ある程度逆風があるかもしれないけど、自分が好きじゃないことをやって生きていくのもリスクが高いことだと僕は思います。自分が自信を持って提供できるものを突き詰めて、そこに集まってくれる人が数人いて商売が成り立つのであれば、その形が自分にとってもお客さんにとってもベストな形なのかなって思っています。大切なのは、無理をしないことなんでも屋にならないということだと思います。

 

英人さん、取材にご協力いただきありがとうございました。
開業・独立を考える若い世代への希望となるようなお話が聞けてとても刺激になりました。

 

やまらぼインターン生・Satsukiのあとがき

新しくて煌びやかな建物も、古い建物を取り壊して新しく建て替えてしまうことも悪いことだとは思いません。しかし、BOTA coffeeのように、あるひとつの物件に真剣に向き合うことで、もとの空間の魅力を活かすというリノベーションは、建築が大好きな英人さんだからこそなし得ることなのかなと感じました。空間・場所にはそこにいた人たちの想い、歴史、さまざまなものが詰まっています。そういった目に見えないものを大切にしていくことは、どんな仕事においても重要なことなのではないかなと改めて感じました。

 

また、将来カフェを経営したい、独立したいけどどうしたらいいのかわからないという人の多くは、金銭的なことが一番の悩みなのではないかと思います。この記事を読んで『借金=ポジティブなこと』という方程式をすんなり受け入れることは難しいかもしれません。しかし、本当に自分が好きなことを仕事にして生きていきたいという気持ちがあるならば、ちょっと一歩踏み出してみることで、新たな世界が見えてくるのかなと感じました。

 

好きなことを仕事にしていきたい、でもチャレンジすることについ臆病になってしまうといった人の背中を少しでも押すことができていれば幸いです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

記事をシェア



友だち追加
ヤマガタ未来ラボ LINEの友だち登録でおすすめコラム・求人情報をお届け!


やまらぼ

この記事を書いた人

やまらぼ

『やまらぼ』は、学生が「山形で働く・暮らすこと」や「自分自身」について知っていける場です。

▶︎やまらぼトーク、やまらぼインターン、やま...

副業・兼業・体験・インターン・プロボノ・なんかやりたい
【完全無料】実績500人以上!山形特化の転職支援サービスを利用する