金子麻由子さん

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山形市出身。千葉県在住。大学卒業後、山形県内の企業に就職したのち、結婚で県外へ。人材会社で働く傍ら、山形のワーキングマザーを応援する活動をしている。

 

山形ワーキングマザーの会(愛称:Wginal)共同代表の金子麻由子(かねこあゆこ)です。

「麻由子」と書いて「あゆこ」と読みます。両親が白鷹町鮎貝に住んでいるときに生まれたことが由来です。

 

今日は、私がなぜ県外に住んでいるのに、山形とかかわっているのか、何をやっているのか、これからの思いなどをつづらせてもらえたらと思います。

 

後ろ向きだったUターン就職

私は、高校まで山形市内で過ごし、ほぼ、家から5キロ圏内の“駅西”で生活していました。中学からバドミントン部に入り、家→学校→体育館、だけの往復。今でも、駅東は不得意です。

 

その後、東京の大学に。バドミントンサークルに入り、大学生活を謳歌していました。青春です。戻りたいです。そして就職。文章を書くことはなんとなく好き、そして刺激が欲しいという気持ちでマスコミを志望しました。東京で働くつもりで就活をしましたが、結果、山形新聞にUターン就職。当時つき合っていた、今の夫と遠距離になることもあり、正直、後ろ向きUターンでした。

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山形新聞での記者生活は、ハードな生活でしたが、毎日、新たな現場で新たな出会いがあり、求めていた通りの刺激的な仕事でした。充実した日々ではありましたが、「やっぱり東京で働きたい」という気持ちがいつもどこかにあり、入社4年目の夏に、結婚も決めて退職することに。会社のみなさんに開いていただいた送別会で、「いつか山形に恩返しをします」とお伝えしました。きっと、そこに参加した人たち、誰も覚えていないと思いますが、私の中に、その言葉がずっと残っていたんです。いつか山形に、いつか…、と。

 

 

子供が出来たら、仕事は補助的な内容で当然?

千葉に移り住み、東京の人材会社に転職。転職サイトの編集・マーケティングを始めました。業種も職種もまったく違う、未経験の世界に飛び込み、カルチャーショックにも苦しみました。ただ、就職も、転職も、働きやすさよりも、自分がやりたいことができるか、という基準で職場を選んできたので、必死に食らいついていましたね。女扱いしないでほしい、というぐらいの気持ちもありました。

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そして2年が過ぎたころ、長男を妊娠。つわりがひどくて、それまでのように長時間働くのが難しくなりました。そのときに初めて、「あ、私は異端児なんだ」「女扱いしないでほしいなんて言ってられない」と感じたんです。そのころから、「女性が働くこと」をぼんやりと考えるようになりました。

 

産休、出産、育休を経て復職。まんまと、マミートラック(※)に陥ったのです。当時、部署にワーキングママはいませんでした。時短だし、保育園から呼び出しがあったら帰らなきゃいけないし、妊娠前と同じようには働けない。サポート職で当然。そんな思い込みがありました。上司も、決して悪気があったわけではなく、むしろ配慮してくれたうえでの配属でした。不満も疑問も抱かずに、サポート的な仕事をする日々。最初の1・2カ月はほぼ毎週、保育園から電話があって帰宅する生活で、子どもを保育園に無事に預けて、私は会社に行く、ということだけで精いっぱいの毎日でした。

※「マミートラック」:育休から復職後のワーキングマザーが、昇進に縁遠いキャリアコースに固定されたり、仕事の内容が限定される状態

 

でも3・4カ月経ったころ、生活のリズムもできてきて、そうすると、「かわいい子どもと離れてまで、この仕事がやりたいんだっけ」「この先のキャリアって?」と、だんだんもやもやするように。以前やっていた編集の仕事に戻りたい、という気持ちがふつふつと湧いてきました。それでも、時短であること、保育園から呼び出しがあることに変わりはなく、そんな中で「編集がやりたい」と言って、できなかったらどうしよう、迷惑をかけることになってしまう、という気持ちとの葛藤で、なかなか「やります!」と手を上げることはできませんでした。

 

仕事も育児も楽しもう

そんな状態のまま半年が過ぎ、あるとき、もんもんとした気持ちを上司に伝える機会がありました。すると、上司は、「やってみなよ!」という意外な反応。あれ、自分が思ってたほど大変なことじゃなかったんだ、と肩の力が抜けました。そして、不安はありましたが、編集の仕事に復帰。前のように時間はかけられない、だからこそ、重要度と優先度を意識したり、もちろん上司や同僚にもサポートしてもらって、育児と両立できる自分なりのやり方やペースをつかむことができました。妊娠したころから思うようになっていた、「女性が働くこと」にかかわる仕事もやりたいと、女性向けの転職サイトを立ち上げたりもして、徐々に「女性が働くこと」がライフワークになっていったんです。

 

やりたい仕事ができるようになってくると、段々、あのマミートラックはなんだったんだろう、と思うように。復職する時に、自分のやりたいこと、できることをちゃんと周りに伝えることができていたら、あの時間はなかったんじゃないだろうかと考えていましたね。また、振り返ってみると、私がマミートラックから抜け出せたのは、社内外の先輩ワーキングママの存在が大きかったんです。このやり方はまねできそう、こういう考え方もあるのかと、たくさんのロールモデルからヒントをもらいました。いいとこ取りですね。

 

復職から3年後に長女を妊娠。2度目の育休に入りました。1度目の育休中は、育児に手いっぱいで、仕事のことなんてまったく考えられなかった。だからマミートラックになってしまった、という思いがあったので、2度目はあちこち出向いてみました。そして、「仕事も育児も楽しみたい」というたくさんのワーキングママ仲間ができたんです。

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マミートラックを抜け出せたのも、仕事も育児も楽しもうと思えるようになったのも、同じ思いのワーキングママ仲間がいたから。ハッとしました。私が山形を離れた理由は、そこだったんじゃないだろうか、と。Uターンが後ろ向きだったのも、東京で働きたいと思っていたのも、山形で、結婚して子どもが生まれて、いきいきと仕事をしている自分をイメージできなかったからだ、と。当時も、仕事も育児もいきいきやっているママはいたはず。でも私は出会うことができなかった。ロールモデルを見つけることができなかったんです。知らなかったから「山形では無理…」と決めつけて、山形を離れたんです。きっと今も当時の私と同じように思っているママがいるんじゃないだろうか。

そして、送別会の時の言葉を思い出しました。「いつか山形に恩返しをします」。

 

山形ワーキングマザーの会「wignal」を立ち上げる

Wignal(キャリア・仕事も子育ても充実させて自分らしく働くを叶えたい女性のコミュニティ「山形ワーキングマザーの会(Wignal)」)を始めた2017年は、私が山形を離れてちょうど10年になる年でした。

「女性が働くこと」という自分のテーマも見つけた。今の私にできることがあるんじゃないだろうか。「山形で、仕事も育児も大好き!って言えるママを増やしたい」。「私ができること」「恩返し」この2つがピタッとはまった気がしました。

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気づけば、みずきちゃん(Wignal共同代表)に連絡していました。みずきちゃんは、中学のバドミントン部のダブルスのパートナー。卒業後、SNSでつながってはいましたが、ほとんど会うことはなく、Wignalを始める前の年に、お互い子どももできたし、久しぶりに会おうとなって、会ったのがきっかけ。山形で活動するならみずきちゃんしかいないと思って声をかけました。

 

Wignalの由来は、

・Woman

・Work

・仕事と育児のW(ダブル)

と、「良くなる」の山形弁「いぐなる」を合わせた言葉、です。

山形のワーキングマザーを取り巻く状況が「よくなる」ことをイメージして命名しました。

Wignalでやりたいのは、山形で、いきいきと、自分らしく、仕事と育児を両立するワーキングマザーを増やすこと。山形で、仕事も育児も欲張りに。「山形だからしょうがない…」「子どもがいるからしょうがない…」こんなふうにあきらめてほしくない。山形で、仕事も育児も前向きにがんばりたい、そう思っているワーキングマザーがいます。周りにやっている人がいないからできない、と思ってしまうのはもったいない。そんな同じ思いの仲間をつなぎます。

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具体的には、

・「上下」ではない、ワーキングマザー同士の“ななめの関係”をつくること

ななめの関係というのは、お互いがロールモデルとなり、理解・刺激し合える仲間のこと。たとえば、職場にワーキングマザーがいない、育休を取るのが初めて、ワーキングマザーはいるけどバリバリ過ぎて私はあそこまではできない、というような不安や悩みは、山形のワーキングマザーから多く聞きます。ロールモデルは必ずしも、同じ職場の先輩である必要はありません。この人のここはいいな、ここはまねしてみよう、と、たくさんのワーキングマザーのいいとこ取りをして、自分らしいワーキングマザーを描いてほしいと思います。

 

もう1つは、

・単に、「仕事と育児を両立している」のではなく、どちらもあきらめずに、納得できているワーキングマザーを増やすこと

山形は共働き率が全国2位(「統計でみる都道府県のすがた2017」より)で、働くママは多くいます。でも、私が山形にいたころのように、「ここではやりたいことをかなえるのは無理…」とあきらめているママもいると思うんです。「いきいきと、自分らしく、仕事と育児を両立する」こと、これはもちろんママ自身のためでもあるのですが、何より毎日、保育園や学校でママたちを待っている子どもたちのためだと思っています。

ワーキングマザーは平日の大半は子どもと離れて過ごします。育児は「量より質」とは言われるけど、「もっと一緒にいてあげたい」という気持ちはみんなどこかに持ってるはず。だからこそ、「ママはお仕事も楽しんでるんだよ」と言える自分であってほしい。私自身は、会社が大変、両立が大変、という姿を見せるのは、子どもに失礼だなと思っています。私が仕事を思いっきり楽しんでいる姿を見せて、大人って楽しいんだよ、仕事って楽しいんだよ、っていうことを伝えていきたいです。

 

県外から山形に関わって私が出来ること

県内外、両方で仕事をしたから伝えられること、今東京で仕事をしているからこそ伝えられることがあると思っています。とことん等身大で、とことん寄り添う。そんな存在でありたいと思っています。

ワーキングマザー個人が前向きになることはもちろん、企業、行政、地域も変わらなければならないと思っています。Wignalを始めてまだ半年ほどですが、ありがたいことに、参加していただくみなさんの期待を感じますし、企業や行政を含めて応援していただいている方がたくさんいます。

期待に添えるように、ママ、そしてパパも、「仕事も育児も大好き!」と、堂々と言えるような山形にしていきたいと思っています。

 

●山形ワーキングマザーの会(Wignal)

●キャリア・仕事も子育ても充実させて自分らしく働くを叶えたい女性のコミュニティ「山形ワーキングマザーの会(Wignal)」

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