初めての育児は、全く予想のできない未知の出来事の連続です。

子どもの成長に感動したり、驚きの行動にテンパったりしつつ、育休復帰に向けての保活(ほかつ…子どもを認可保育園に入園させるための活動)やら、あれやこれやと慌ただしく過ごす日々の中…、

 

“職場に復帰して、育児と仕事と、ちゃんと両立できるかな?”
“上司や同僚は、ママになった私を以前のように受け入れてくれるだろうか?”
“出産前に携わってたプロジェクトに、もう参加することができなかったら…?”

 

脳裏をかすめる様々な不安は、一体誰に相談したらいいのでしょうか。

旦那さん? 高校時代の同級生? 公園でいつも顔を合わせるママ友?

 

“突然、こんな重たい話をしたら、ひかれちゃうかな…”って心配して、誰にも相談できなくて、胸の奥に仕舞いこんでしまったら、『育児も仕事も、前向きに充実させよう!』なんて、とても無理ですよね(涙)

私もそうでした。

だからこそ、”同じ境遇にいる者同士でなければ、なかなか共感されないこのデリケートな葛藤”を、“ここでは本音で話しても大丈夫!”と安心できる場所で共有・話せれば、明日からまた頑張る活力を得ていくことが出来るのではないでしょうか?

実は、そんな”キャリアも子育ても充実させたい山形の女性のための場”を作りたいと、動き始めたママたちがいます。

『ママになっても”自分らしく働く”を叶えたい女性たち』を応援するプロジェクト、“Wignal(ウィグナル)~山形ワーキングマザーの会~”を発足させた2人の女性にお話をお伺いしてきました。

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▲Wignal共同代表の堀野水希さん(左)と金子麻由子さん(右)

おふたりのプロフィール

 

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山形市出身、千葉県在住の金子麻由子(かねこ・あゆこ)さんは、小学1年生男児・1歳女児のママ。

東京の大学を卒業後、Uターン就職。新聞記者として4年間勤務する。結婚を機に再び上京し、総合人材サービス会社に転職。転職サービスサイトのマーケティング・編集を担当し、第1子の育休後に、女性の転職・求人情報サイトを立ち上げる。第2子の育休後となる2017年7月より、社内新規事業として育休中ママのボランティア「ママボラン」を開始させる。

 

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山形市出身、村山市在住の堀野水希(ほりの・みずき)さんは、3歳男児・1歳女児のママ。

東京の大学を卒業後、1年半のフリーター期間を経て、山形銀行にUターン就職。支店業務に2年半、本部での経済調査業務に5年間携わり、第1子出産のタイミングで退職する。現在は、山形県内の有志らとともに、子育て世代と地元商店街を結びつける活動や、親子向けワークショップの企画運営のほか、高校生向けキャリア教育支援などにも取り組んでいる。

 

 

それぞれのUターン、経歴

ー早速ですが、おふたりのこれまでの経歴や活動内容を教えていただけますか?

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堀野:東京の大学を卒業後、心理学を学びたくて大学院進学のために浪人しました。勉強しながら、大学の先輩をはじめ、いろいろな企業に勤める人達と話しをするうちに、「社会には、面白い人がたくさんいる!もっと広い世界を見てみたい!」と思うようになり、就職活動を始めました。

東京にある銀行や商社を受けたけど、決まらなくて…。山形の企業も受けることにしました。絶対に山形が嫌だったわけじゃないけれど、積極的なUターンじゃないんです。

 

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金子:私も、同じ。積極的Uターンじゃなかったですね(笑)

学生の頃から、今の夫と付き合ってたので、遠距離恋愛になるということもありましたけど、面白い仕事は東京にあるんじゃないかとなんとなく思っていて。それでもマスコミの仕事はしたかったので、山形に帰ってくることにしました…。

新聞記者は、やりたい仕事だったから、とてもやりがいがありました。

それでも、“やっぱり東京で働きたい!”っていうのが、ずっと胸の奥にあったんですよね。

“山形で結婚して子どもが出来て、やりたいこともやっていける!”っていうビジョンが見えなくて。

それを実現してる人もいたんだと思うけど、当時はそれを知らなかったから、“山形では無理”と決めつけちゃってたんですよね。

「就職してから3年は、それぞれのところで頑張ろう」と、夫と決めていたので、3年半、新聞社に勤務してから、寿退社しました。

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▲2人は、中学時代の同級生。バドミントン部でダブルスを組んでいた。

 

堀野:そうなんだね。私は、元々は銀行員になりたかった訳じゃないけど、山形銀行に入って良かったなと思ってます。
就職活動の段階では、山形にどんな企業があるのかもよく分かっていない状態だったけど、銀行での業務を通して、山形で活躍する様々な業種の企業や、それまで知らなかったけれど興味深い仕事をしている企業などを回ることができました。

また、個人のお客様に対する仕事もできたことで、営業やサービスの基本を学べましたし、県内経済について分析するという他ではなかなかできない仕事もでき、いろいろなことが見えるようになりました。

その間に、結婚して長男を授かったんですが、自分で子どもの面倒を見たかったのと、子どもがもう1人は欲しかったので、長男を出産するタイミングで辞めました。

 

-“辞めるんじゃなかった…”って、後悔したことはないですか?

堀野:ほぼ、ないですね。経済的なことを考えると、「もしも、続けてたら…。」とよぎる瞬間はありますけど。

今は育児を中心にしたいので、まだ、『本当にやりたいこと』まではたどり着いてないのかもしれない。だけど、興味がある活動の中から新しい繋がりも出来たりして、流れのなかで頑張ることで、良い方向に進んでいるなっていう実感があります。

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▲高校生に、山形で働く大人たちの生き方サンプルを伝えるキャリア教育を行う「ワクイキ!ワクキャリ!」を仲間たちと行なっている堀野さん。

 

-金子さんはどうですか?

金子:私は、辞めたことを後悔するところもあるんです。もう少し続けてたら、“もっと違うことが見えてたのかなぁ?”って。

東京に行っても同じ仕事ができると思ってたんだけど、そうじゃなかったんですよね。結婚後に転職したのは、営業会社の編集職。「取材して、記事を書く」という新聞記者と同じ行動でも、その目的が違うんです。ギャップに慣れるのに、5年近くかかりました。やっと慣れた頃に長男を妊娠して、マミートラック(※)にはまってしまったけれど、それがキッカケで、ようやくやりがいを見つけました。

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▲千葉で開催した“ワーキングマザーの会”にて。

※マミートラックとは…労働時間や労働量など融通が効く働く母親の働き方が、仕事と育児の両立や多様な生き方・働き方の実現を図りやすくなる一方、補助的な業務を割り当てられたり、昇進に縁のないキャリアコースに固定されて、昇進の階段を上がれずに同じ場所をぐるぐる回っている状況のこと。NHKの調査によると、出産・復職後マミートラックから抜け出せずに、仕事にやりがいを持てなくなっていくという女性が多いことがわかってきている。勤労意欲を失い退職していく現実もある。

 

『マミートラック』を防いで、キャリアを諦めずに働くママを増やしたい

ー金子さん自身がマミートラックにはまった経験が、「女性のキャリア」について取り組むキッカケになったのですね。

金子:1人目の育休から復帰したときに、職場の中で「ママ」である私が、「異質な存在だ」と感じたんですね。元々、女性扱いされるのが嫌だったんだけど、そういう質の問題ではない、と。

そこから、周りを見たときに、同じようにモヤモヤしてるママがいることに気がついて。その頃から、“同じような立場の女性のために何かできることはないかな?”って考えるようになって、上司に相談したことが、女性向けの転職サイトを作るキッカケになったんです。

 

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-金子さんの気づきと行動が、会社を動かしたんですね!

金子:ちょうど「女性の活躍」が掲げられて、盛り上がって来てるときだったから、タイミングも良く。

1人目の育休中は、子どものことで手一杯だったから、私自身が“どんな働き方をしたいのか、どんなキャリアを築いていきたいのか”を考える余裕もなくて、ノープランのまま復帰したんです。
会社には、ママはたくさんいたけど、私の部署には私だけだったんですね。だから、上司も私をどう扱っていいのか分からない状態。「とりあえず、ちょっと負担の軽そうなものを…」と。私も、「まぁしょうがない…、そういうものかな」って受けてたんだけど、段々と違和感を覚えてきて。産休前の編集の仕事に戻してもらったっていう経緯があるんです。

育休中の時間の過ごし方が、ポイントになるんじゃないかと思います。仕事を一旦離れて、自分を見つめ直すタイミングとして、良い時間なんじゃないかと。そのために、会社では【ママボラン】っていう育休中のママのボランティアをマッチングするサービスを作ったんです。
そのうちに、“山形でもやれないかな?”っていう気持ちが芽生えてきたんですよね。

 

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“いつか、山形に恩返ししたい”と思い続けた

-「山形で」と考えるようになったのは、なぜですか?

金子:山形を離れて、ちょうど10年になるんです。「女性×キャリア」っていう自分のやりたいことが見えてきて、今なら、山形に何かできるのかなって。

最終的には、“親孝行のため”っていうのがあるんだと思うんですけど。

新聞記者を辞めるときに、「いつか山形に恩返しします!」って言ったんです。そのことを誰も覚えてはいないでしょうけど、私の中にはずっと残ってて。

「いつか…、いつか…」って思いながら、東京で暮らしてたんです。

それが、今なのかなって。

 

-「女性×キャリア」で、山形への恩返しをしようということですね。

金子:10年前にも、山形では仕事と両立するママは沢山いたと思うけど、自分が目指したいと思える人に出会えなかった。それは、自分らしく働くママがいることを、当時の私が知らなかっただけなんだけど…。

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▲山形の“M字カーブ”の底は浅く、30歳代女性の労働力率は全国で2番目に高い。(出典:『女性の活躍推進に向けた企業実態調査』山形県子育て推進部)

 

金子:山形には結婚・出産しても辞めない人が多いと思います。

辞めないけど、出産前と同じような働き方はできなかったり、やりたいことが本当はあるけど諦めてたり、するのでしょうか?

仮に、マミートラックに乗ってしまっているのに、“ママなんだから、これが当たり前・しょうがないことだよね”と、諦めているとしたなら、すごくもったいないって思うんですよね。

山形の企業で働くママたちの本音をもっと知りたいです。

 

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▲山形の共働き率は、全国平均に比べて高い。
(出典:『女性の活躍推進に向けた企業実態調査』山形県子育て推進部)

 

 山形のワーキングマザーが「自分らしく働く」を叶えるためのプロジェクト“Wignal(ウィグナル)~山形ワーキングマザーの会~”

-【Wignal】は、『WomanもWorkも、ダブルでいぐなる(山形弁で“良くなる”)』という意味とのことですね。

堀野:最終的には、“全ての女性がいきいきと働いている、いきいきと生きている”社会を目指したい。
そのために、まず私達が出来るのは、企業に勤めてるママ達をサポートすること。

 

-具体的な活動内容は?

金子:自分らしく働く先輩ママ達に会って経験談を聞けたり、今後の自身の展開をイメージできる場を用意しようと考えています。

例えば、地域の子育てサークルに参加したとき、“仕事の話題は、相手が引くんじゃないかな?”って不安があると、気軽に話せなくなったりしますよね。

だけど、同じ思いの人たちと集まれば、「ここでは、仕事も頑張りたい気持ちを話しても大丈夫なんだ!」って安心できる土壌があるので、そのつながりはすごく心の支えになるんです。

会社を離れたところで、同じような境遇や似たようなキャリア意識の人って、実はすごく貴重な存在。

 

Wignalは、キャリア・仕事と育児どちらも充実させたい女性同士がお互いに相談し合えて、情報を得て、“私も頑張ろう!”って刺激し合える仲間ができる、そんな暖かい場にしたいと思っています。

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金子:ワーク・ライフ・バランスの取組では、“ワークをいかに縮小して、ライフを充実させるか”って言われるけれど、仕事は別に苦行じゃないですよね。

“仕事は我慢して耐えるもの”ってマイナスイメージを払拭して、仕事も楽しめればいいと思います。

仕事の比率を減らして、例えば“2:8で、生活を充実させるべき”ってことじゃなく、“10:10で、どちらも大事で、どちらも充実させたい”と思っても、良いんじゃないのかな。

 

-『子育てしながら働く』選択をしたときに、「自分はどう働きたいか?」ということを考える機会にもなりそうですね。

堀野:現実には、自分らしく働くことを考えるタイミングすらない方も結構いるのではないかと思います。

例えば、子育てで毎日慌ただしいし、たとえ職場で肩身が狭かろうと「収入のためには、悩んでる場合じゃない!」って考える人もいるだろうし、多世代同居も他の地域と比べたら多いから、その中で「お嫁さんは外で働くものだ」って価値観に疑問を持たない人もいるのかもしれない。

でも、「山形で働くママってこうゆうもの」「これが普通・常識」「山形だものしょうがない」と決めつけるのではなく、「あれ?これって“当たり前”じゃなかったの?」って、まず気付けるようなキッカケにしてもらえたら嬉しいですね。

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-今後の抱負を教えてください。

堀野:『子どもが幸せ、家族が幸せ』っていう大前提の元で、ママ自身の働き方や生き方が、“より良くなるため”に行動できる同志を増やしたい。 “仕事と子育ての両立”の先の未来を、一緒に築いていきたいですね。

 

金子:「ママだって自分らしい働き方を自分の意思で叶えられる」という風土が定着するための一翼を担える存在になりたいです。

 

2017年10月に、初めてのイベントを開催します。

「育児のために一旦仕事を離れてるけど、もう一度働きたい」と思ってるママや、「今はまだ結婚も出産もしてないけど、将来を考えていきたい」っていう女性にも、ぜひ参加してほしいですね。

 

 

 

【Wignal kick offイベント】
~5年後、10年後をイメージ~ 仕事も育児も楽しみたいママたちの交流会

育児も仕事も楽しみたい、
どちらかを犠牲にするんじゃなくどちらも満足にやりたいー。

そんな思いを抱えながら、
でも周りに同じような仲間がいない、
やりたいことをどう実現すればいいのか分からずに、
悩んでいるママたちのための交流会です。

ママだからってやりたいことをあきらめたくない。

同じ思いの仲間とつながって、一緒に、これからの自分について、前向きに考えてみませんか。

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《日時》2017年10月9日(月) 13:00~15:00(受付 12:45~)
《場所》子育てランド『あ~べ』研修室(山形市七日町1-1-1 N-GATE 1階)
《定員》10名
《内容》第1部:自己紹介。仕事と育児の両立についての悩みや不安を共有
第2部:5年後、10年後をイメージしたワークショップ
交流会:お菓子を食べながら、参加者同士の交流を深め、同じ立場・思いのママとのつながりを広げましょう。

《参加費》500円(お菓子付き)
《託児》有(有料・要予約 10月3日(火)まで)
《申込》〈こくちーず〉から
《締切》10月4日(水)
《問い合わせ》mail: wignal.yamagata@gmail.com

《Facebookページ》https://www.facebook.com/Wignal山形ワーキングマザーの会-103259350391172/
今後のイベント情報等は、Facebookページからチェックしてみてください。

 

 

 取材後記

子育てに正解がないように、全ての人の家庭環境が同じではないように、「女性の働き方」にも、百人百様の理想や現実があるのだと思います。

“前例がないから…” “ほかのママだって、我慢してるから…”

そんな理由で、たった一度の人生を諦めてしまうのは、とても もったいないことではないでしょうか。

 

美味しいものを食べながら、ワイワイ会話する時間は、女性にとって必要不可欠なもの。おしゃべりしているうちに、自分の希望を叶える道筋が見えてきた!っていう経験、ありませんか?

「あなたらしく働く」を探し、実現させるために、一緒にがんばる仲間をWignalで見つけてみてください。

仕事も、育児も、どちらも笑顔で楽しめますように。

 

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▲山形市内を一望できる丘の上のレストランESCARGOT(えすかるご:山形市蔵王みはらしの丘)で行った今回の取材。女子&ママトークが尽きることはありませんでした。

 

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山田 貴子

ライター情報

山田 貴子

1978年岡山県生まれ。岡山県生まれ。2004年、山形生まれ山形育ちの夫との結婚を機に山形へ移住。官公庁等でのパート勤務を経て、2014年、ダイエッ...