みなさんは、喫茶店やカフェに行って何をしますか?
ドリンクを飲む。美味しそうなメニューの写真を撮る。
それだけではなく、店主のこだわりやその店独自の魅力を知ると、より深く喫茶店を楽しむことができます。
今回は、ジャズ文化を知ることができる喫茶店を学生記者しゅんがご紹介します!
ジャズ喫茶OCTET
今回訪ねたのは、ジャズ喫茶OCTETさんです。山形駅前通りから一本入った所にあり、ビル群の中で静かに佇んでいます。
1971年にオープンし、以来ほぼずっとこの地からジャズの魅力を発信しています。
店内は薄暗く、店主の相澤さんが選んだ曲が大きなスピーカーを通して流れています。
壁には所狭しと、レコードやCD、ポスター、大きな掛け時計が並んでおり、店奥にあるピアノの上には、演奏曲のジャケットや写真が飾られています。
ターンテーブルも間近で見ることができます。私はこれまで本格的なターンテーブルを見たことがなかったので、興味津々です。
コーヒーを注文すると、相澤さんが一杯ずつサイフォンで淹れてくれます。
▲店主の相澤榮さん。相澤さんの後ろにもたくさんのレコードが並んでいます。
メニューはコーヒーやお酒などが揃っており、軽食に便利なトーストセットもあります。私は、ピザトーストセットを注文しました。
▲ピザトーストセット(980円)トーストの他にコーヒーも付きます。
具だくさんでパンが分厚く、男性でも食べ応え十分です!
店主さんにインタビュー
店主の相澤さんにインタビューしました。
Q:ジャズを知ったきっかけは何ですか。
A:幼少の頃、家の前にお部屋を貸している所があって、進駐軍目当ての女性がいたのよ。そこに進駐軍のお偉いさんが来て、電気蓄音機でレコードをかけるんだね。グレン・ミラーとかベニー・グッドマンがかかっていたと思うんだけど、それを物珍しく覗いていて、ジャズが下地として体に浸み込んだと思うのね。
意識し始めたのは、東京の有楽町にある「ママ」というジャズ喫茶へ先輩に連れて行ってもらった時だね。コーヒーやお酒を出しながらジャズのレコードを聴かせるお店で、そこでショックを受けたというのが始まりなんじゃないかな。
Q:お店を始めた経緯を教えてください。
A:ジャズミュージシャンやファンと仲良くしていると、一緒にコンサートに出掛けていたここの大家さんから「お前喫茶店したいって言ってたけど、俺のところ空いたからどうだ」って相談を受けたのよ。そこからやることに決めちゃって、開店の準備に入るわけだ。食材屋さんとか設計屋さん、ジャズファンクラブの基となった人達としょっちゅう集まっていたのよ。
そして店の名前を考えようという時、準備に関わってくれて野次馬のごとく集まっていた人が8人いたので、八重奏という事で「オクテット」にしたんだね。
▲相澤さんが初めて買ったレコード。初任給7,500円のとき、定価1,700円でした。
Q:お店のこだわりや大切にしている事は何ですか。
A:基本はレコードに針を落としてかけるという事だね。1971年にオープンしたんだけど、80年代に入るとCD時代になったからCDも買うようになったのよ。CDは今生きている人が弾いている音しか聴けないけど、昔の人の音はレコードで聴ける。年賀状に毎年書いているんだけれども、「選りすぐりの新譜CDと針で聴くアナログデスク」こだわりというとこれだね。
Q:好きなジャズプレイヤーは誰ですか。
A:やっぱりズート・シムズだな。ズートは二流三流なんだけど一流なんだね。一番スウィンギーであったかいのよ。彼ほどレコーディングで色んな所に参加した数が多い人はいないんだね。この人が参加しているアルバムで駄作が無いのよ。ものすごく良いというのも無い。駄作は無いけど秀作も無い(笑)。可もなく不可もないけど、誠実さがあるんだな。そういうところは山形人と似ているね。
Q:特に好きな曲は何ですか。
A:クインシー・ジョーンズが書いた「イヴニング・イン・パリ」っていうのがあるんだ。店のエンディングテーマとしてかけるくらい大好きなバラードで、ズートの一曲でいったらこの曲だね。「私の考えるジャズ」というレコードに入ってるんですよ。
▲ズート・シムズのポスター。現在、相澤さんはズートファンクラブの会長も務めています。
Q:若者に伝えたい事はありますか。
A:ジャズは本当に深いのよ。でも、今はジャズという言葉が独り歩きしているんだね。ジャズが好きと言うけど、誰が好きですかこの人が好きです、というのがいないのよ。だから、そういう人が来て質問してもらえるとお答えできるから。さらに、それを聞いた人が好きか嫌いか言える人になってもらいたいね。ここはジャズレコードの図書館みたいなものだね。
私の好きなアーティストは、初レコーディングからラストレコーディングまでレコードで揃っているんだね。その歴史を紐解くと、当時のアメリカ大統領は誰だったとか時代背景も分かってきて、そんな面白い事を今も体験しているね。
Shun’s comment
店主さんの深いこだわりが感じられるお店で、ジャズの歴史や知識を教えてくれました。若者には入りづらい重厚な雰囲気のお店ですが、一歩お店へ入ってしまうと、背伸びをした気分で大人になれた気がします。
ジャズ初心者の人も、ジャズに明るい人も、新たな発見ができる喫茶店です。
○住所:山形県山形市幸町5番8号
○開店時間:11:00-18:00(当面の間、時間を短縮して営業中)
○定休日 不定休
○電話・FAX:電話 023-6423805 FAX 023-623-9106
○ホームページ:https://jazzoctet.com/
○Facebook:https://www.facebook.com/jazzoctet