喜び、やりがいを感じる日もあれば、無力感に襲われ、切なくなる日もあるけれど、毎日続いていく『働く日々』。そんな、私たちの毎日の「働く」を応援する本を、山形在住ブックコーディネーターのえりさんがご紹介します。
今日の1冊 『パラレルキャリア』
ナカムラクニオ 著
出版社:晶文社
最近「パラレルキャリア」という言葉をよく聞くようになりました。
「パラレルキャリア」とは、ピーター・ドラッガーが提唱しているこれからの働き方のひとつ。「本業の仕事をこなしながらそれとは別に自分のやりたい夢の仕事を実現し、互いの相乗効果で生きがいを感じる働き方」のこと。いくつかの仕事を掛け持ちながら働くこととされています。
自分の今の仕事がこれからずっと存在するのか?という不安もあるし、人生100年時代といわれる昨今、定年退職後の生活・仕事への不安もある。そして会社や組織に縛られず「楽しく働く」という価値観も広まってきている。企業の間では副業を解禁する動きが広がっている…そんな時代だからこそ新しい働き方に興味を持つ人が増えているのではないでしょうか。
この本は、「パラレルキャリア」を自分に引きつけて考えさせてくれます。
読んでいて驚くのは、世の中にはパラレルキャリアな働き方を実践している人が、知らないだけで実はたくさんいたこと。多くの著名人が本書には例として登場しています。
たとえば作家なら…
『火花』の又吉直樹さんはお笑い芸人、『不思議の国のアリス』のルイス・キャロルは数学者、『星の王子様』のサン・テグジュペリはパイロット、『坊ちゃん』の夏目漱石は英文学者で教師、『舞姫』の森鴎外は医者で翻訳者など。パラレルな仕事をすることで、相乗効果が出るメリットがありそうですね。
もうひとつ面白いのは、本書に登場することば達。自らパラレルキャリアを実践する著者の造語が多く軽妙に飛び交います。
目次からいくつか拾ってみると…
・【福業(HAPPY WORK)】を見つける
・【0次産業】で人生の予行練習
・【ラノベーション(軽い変革)】を起こす
・人生を【二期作化&二毛作化】する
・【趣味レーション】で人生を試す
・【スキスキマーケティング】を実践する
・【勝ち組】ではなく【価値組】になる
・【ツッコミビリティ】を大事にする
など。
こういったことば達と一緒に、堅くなく、楽しい気分で読むことができるのもこの本の良いところ。
このようなことばを多く生み出す著者は、パラレルキャリアな働き方をする上で「造語思考」も大切と述べています。
たとえば、「コミュニティデザイナー」や「ブックディレクター」などは数年前には無かっ肩書きがあります。しかし、その肩書きが生み出されたからこそ、生まれた仕事がありました。「立場が人を作る」・・・新しい働き方を新しいことばと一緒に生み出せばよい、という考え方は、目からウロコでした。
本書によると、仕事は大きく分けて、以下の3つに分類できるとのこと。
①ライスワーク・・・食べるための仕事
②ライフワーク・・・人生をかけた仕事
③ライクワーク・・・趣味をいかした仕事
それぞれでどれくらい稼ぐのか、どれくらいの割合の時間や力で取り組むのかなど、3つの仕事のバランスが大事だということです。自分にとって、この3種類の仕事はそれぞれ何が当てはまるだろう、などと考えていると、発想・アイディア・夢が広がっていくような楽しさがありませんか?パラレルキャリアについて学びながら、そんな楽しさも感じることができました。
”新しい仕事の作り方“、”パラレル思考の作法“、”未来の自分を編集する“などの興味深い各章の最後には、「パラレルキャリアテスト」(それぞれの章の内容に即した質問リスト)がついています。自分にとってのパラレルキャリアな働き方が見えてくるかも?
パラレルキャリアに興味がある方・出てきた方、ぜひ手に取ってみてください。
●山形読書会 ~Yamagata Reading Club~
ブックコーディネーター エリさんが主催する読書会はこちらからどうぞ。