先日、鶴岡食文化女性リポーターというイベントをお手伝いしてきました。
これは、地元の女性たちがリポーターに扮し、facebookやブログ、口コミなど自分たちの発信手段で鶴岡の食の魅力を発信していこうという鶴岡市主催の企画です。
(詳しくはコチラ

 

そばの収穫をしたり、そば打ちをしたり農家さんやそば打ち職人さんのお話も聞けて、私にとっては大満足だったのですが、中でも印象的だったのはそばの昔話。

 

お話をしてくださったのは、農家のおばあちゃん渡部千代さん80歳。
千代さんは昔食べたそば料理とその思い出をお話してくれました。

戦時中、千代さんが小学生の頃のお話。
育てた米は供出米として国に納めていたので、ほとんど手元に残らなかったそう。
当時、焼畑で植えたそばは貴重な穀物でした。

 

手のかかるそばは、冬のごちそう。
春以降は農作業で忙しいので、とてもそばを作る時間はなかったそうです。
戦争に行って男手がない千代さん一家の大黒柱はおばあちゃん。
その日の料理やお金の使い道などいろんなことを決める役割だったんだそうです。

 

「よし今日はそばを作ろう!」

冬に来客があるとおばあちゃんがそばをうちはじめます。
褒められるのがうれしくて、千代さんはよくお手伝いをしたそうです。
そばの実を石臼でひくところから始まり、小麦粉はないから、そば粉だけで練り上げます。
当時養蚕をしていた千代さんのお家にはクワの葉を裁断する道具があって、それを使ってそばを麺の形に切っていたそうです。

 

ゴボウやニンジン、大根など具だくさんの汁をお玉に一杯だけかけていただくそば。
味噌もしょうゆも手作りしていた千代さんのお家では、今のように飲み切れないほどの汁をかけることはなかったんだとか。
そばが食べきれるだけのつゆをかけることがおばあちゃんの教えでした。

 

他に、もっと日常的に食べたのは「ねりけ」なるもの。
鶴岡食文化女性リポーターのイベントでもみんなで作ってみました。
お椀にそば粉を入れて熱湯を加え、ぐるぐると粘りが出るまで箸でかき回します。

 

できたものを漬物の漬け汁(千代さんは「漬物のつゆ」と言ってました)に付けていただくのです。
漬物の漬け汁!?
普段は捨てるものだけに、なんて質素な食事なんだとびっくり。

 

千代さんが持ってきてくれた漬物の漬け汁をいただいてみました。
口当たりはなんともまろやか。
考えてみれば、漬け汁の水分は白菜からのもの、入れられた煮干しと昆布のおかげでうまみたっぷり。捨てる方がもったいないかもと思うくらいのおいしさ!

(下の写真は、手前がねりけ、奥の赤い器に漬物のつゆ)

以前にも赤かぶ漬を漬けるおばあちゃんから
「漬け汁はもったいなくて飲む。」なんて話をきいて驚きましたが、「もったいない」って言葉を私はすっかり忘れてしまっていることに気づきました。

戦時中の千代さんを思い、ねりけをいただきながら、飽食で食べることに困らない、簡単に物を捨てられる己の傲慢さに恥じ入ったのでした。
当たり前のようにしていることがどれだけ無駄な暮らしなのか、我が暮らしを振り返ってみたいものです。

漬け汁を飲み干すまではできないかもしれないけれど(^-^;

料理に使う工夫ができたらと・・・。

 

ブログでは千代さんの口調や柔らかな雰囲気までお伝えできませんが、千代さんが発する言葉や間合いが温かくてお話に惹きこまれてしまいました。
山形では三世帯同居が多いので、おばあちゃんのお話なんて珍しくもないかもしれませんが、県外出身の私にとってはとても貴重な経験でした!

 

今では千代さんはそばを作っていませんが、白菜漬は毎年大きなこが(桶)で作っています。
雪が降り甘みが増した白菜を漬物にし、十分に漬かるのは年明け頃。
漬け汁が凍り、氷を割りながら取り出す白菜漬はそれはそれはおいしいんですって。

 

雪に覆われ、暮らしに不便を感じる冬も「おいしい」を作る要素の一つなんですね。
先日、鶴岡に雪が降り、冬の訪れが憂鬱だった私ですが、白菜漬の話を思い出して楽しみになってきました^^

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この記事を書いた人

明石 智代

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