どんなにすごい人でも、みんな「はじめの一歩、二歩目、三歩目」があった。

新しいことって、どんな風に始めるの?
チャレンジしている人の0→1の軌跡を深堀りする企画はじめの三歩」。

このコーナーでは、起業から新しい趣味まで大小のモノ・コトを問わず様々な分野のチャレンジャーにお話を聞き、新しいことを始める時に、いっちばん最初は何をしたのか。腰が重くなるような時には、どうやって足を踏み出したのか、失敗、考え方、行動の起こし方をじっくり伝えていきます。

あなたはどんな一歩を踏み出し、二歩目、三歩目と歩き出しますか?

 

 

はじめた人

出産したママに贈る祝福の箱「Baby Box」プロジェクトを立ち上げ、祝福を通して地域と生まれた子、そのママをつなげることに取り組む佐藤亜紀さん(現NPO法人aLkuの代表理事)にお話を伺いました。
佐藤さんトップ 佐藤亜紀さん

神奈川県川崎市出身。2015年から山形県長井市にIターン移住し、地域おこし協力隊に着任。「Baby Box」を贈る事業を立ち上げ、2017年グットデザイン賞を受賞、総務省ビジネスアワード採択の他、NEC社会起業塾生として学び、社会起業家として活躍する。現在はNPO法人aLkuの代表を務め、ベビーボックスの他、様々な社会課題に取り組む。

 

Baby Box(ベビーボックス)とは?

Babybox1

フィンランド発祥の、子育て用品がぎっしり詰まった出産祝いのプレゼントボックス。長井版のBabyboxでは、地域企業や伝統工芸を創る職人、地域の人々と共に企画し、育児グッズはもちろん伝統工芸品なども詰め込んだ祝福の箱となっている。ママへの「出産おめでとう」と赤ちゃんへの「このまちに生まれてくれてありがとう」の想いを込め、赤ちゃんが生まれたすべての世帯に自治体から配布される。また同時に販売も行うことで産業の振興と地域のPRにつなげている。

Babybox2

外箱は生まれたての赤ちゃんが入るサイズでベットにもできる。

神奈川、海外を経て、地域おこし協力隊として長井市へ。なぜ山形への移住に至ったのでしょうか?

神奈川で生まれ育ち、高校卒業後オーストラリアへ留学しました。その後帰国し医療秘書として働いていましたが、パートナーの他界から2児のシングルマザーとなり、神奈川で子どもたちの保育所・学校を探していたところ、首都圏での子育て環境の問題に直面し、不安を感じたことが移住を考える最初のキッカケです。

そんな思いもあり首都圏で開催されている移住フェアに参加したところ、長井の蛇口をひねると出る超軟水の水子育て環境に惹かれました。また当時長井市職員で、移住フェアで会った佐々木さん(後述)の人柄に感動し、長井への移住を決めました。これは私の祖母の家が白鷹町で、子どもの頃によく山形に遊びに来ていたことも影響しているのかもしれません。

その後、前職の経験からも医療系の仕事を探していたのですが、佐々木さんから地域おこし協力隊の紹介を受けました。当時長井はほとんど知らない土地ですし、地域になじみたい気持ちもあったため、協力隊に応募した。というのが協力隊となるに至った経緯です。

 

現在では地域の魅力発信に精力的に取り組まれていますが、協力隊になるキッカケは”地域に馴染みたい”とシンプルなことに驚きました。移住前には地域おこしやBaby Boxのようなことに携わることがあったのでしょうか?

 

フィンランドのBaby Boxは移住前から知ってはいたのですが、移住当時はこれっぽっちも考えていませんでした。地域おこしの経験も全くありませんでしたし、ましてや起業することになるなんて夢にも思いませんでした(笑)

協力隊として最初の仕事はレインボープラン(地域循環型農業の取組)の担当で、子育てとも全く異なるものでしたが、隊員になったからには何か地域のために頑張らねば!とひたすら企画書の作成に取り組みました。しかし複雑な問題を前にして、なかなか課題解決に向かうような提案ができずにいました、、。

そんなジレンマを抱えていたところ、企画力を買われてシティプロモーションの担当へ移ることになりました。そこで長井市の一人親世帯は東京と同じくらいの割合であることを知り、それならば!と、一人親同士が手を取り、助け合うコミュニティあんじゅ会」をつくることに取り組みました。 現在あんじゅは60世帯が参加し、長井だけでなく米沢からも集まるなど、山形全体に広がっています。(現在はaLkuのひとり親支援事業として運営している)

一人親ならではの悩みや、そうでなくとも普段から集まれる友人をつくれるって心強いコミュニティですね。

その勢いのまま長井のPRに取り組んでいたのですが、「」と「子育て」を組み合わせて何かできないかと考えました。子育てと福祉!と言えばフィンランドが先進的だなぁ。とぼんやり考えていた時、ふとBaby Boxを思い出し、Baby Boxの長井版をつくることをひらめきました。これがBaby Boxプロジェクトの原点ですね。

その後は様々な壁にぶち当たり、その壁を超えるためにNPOとしてaLku]を立ち上げたりと、結局配布開始まで一年以上時間がかかってしまいました。うまくいかないこともありましたが、現在では販売も含めて200人以上の赤ちゃんに贈ることができています。またこれはBabyBoxのみの効果ではないと思いますが、配布を開始して長井市の出生数が1年で約12%増加し、驚きと共に喜んでいます。

この少子高齢化の中、出生数が10%以上も増えるって結構すごいんじゃないでしょうか、、(笑) 移住されてからあんじゅやその他の企画を経てBaby Boxのプロジェクトを立ち上げたのが4か月後とスピード感を感じますが、成果もまたスピード感がありますね(笑)
その一方で、“アイデアや企画を実現する”って実はすごく難しいような気がします。想いを実現するために、佐藤さんがどのように一歩一歩進んでいったのか教えてください!!!

 

 

佐藤亜紀さんの「はじめの三歩」

1歩目:納得いくまで調べる。「こどものために一番の環境を。」

移住前の長女が小学校に入る一年前のタイミングで、“認可の保育所が見つからず、2人目の子をすし詰めの保育所に入れなければいけない状況”と“イマドキ子育ての現実”という2つのショッキングな出来事がありました。

特に、2つ目の近所の小学校の入学説明会の際に、先生から「道で誰かに挨拶されても、絶対に返しちゃダメですよ。」「登下校は名札を裏返しにさせて下さい。」と言われたことがショックでした。自分が育った時の環境と大きく変わってしまったイマドキの現実”に気づかされたのです。

「ここは子どもが成長する環境ではないのでは?」そう思ったことが移住の大きなキッカケでしたね。

そこからは一番の移住地をトコトン探しました。全国各地を調べながら自分達にあった環境を探し、最後には秋田と長井と長野の3つに絞りました。その後、実際に現地を訪れ、地域の環境や保育所、病院の立地など、納得いくまで調べました。ここまでしたから”子どもを連れての移住”という大きな決断ができたと思っています。

また、事業に関しても最初の一歩は同じだったと思っていて、解決したい社会課題や原因、当事者の声などトコトン調べます。調べて仮説を立てて、検証しての繰り返しですね。

kids1自然の中でたくましく成長する子どもたち

 

girl移住前は公園で遊ぶのも嫌がるほど潔癖症だった長女も、長井に来て裸足で走り回るまでに潔癖を克服したとのこと

 

2歩目:誰かを頼ってみる。「人をつなぐのは人」

移住から現在に至るまで、たくさんの方の支えをいただきました。最初に触れましたが、当時長井市職員だった佐々木さんには特に移住を力強く支えていただきました。学校や保育園のことも相談に乗ってくれて、自分の担当以外なのに調べて、つないでくれて、本当に親身になっていただきました。

また、子供が熱を出して保育園にいけない時や、残業でお迎えが遅くなる時など、ママ友や地域の方に助けてもらっています。その度に、地域に育てて頂いているなと実感します。

また、今でも長井市職員の方々に多くの助けをもらっています。誰かを頼ったり頼られたりすることで、新しいつながりが生まれ、一人じゃ乗り越えられないことも越えることができた気がします

シエロ Baby Boxで贈られる商品の一つとなっているモビール。製作は、移住当初に出会い公私ともに親交が深い、漆器職人のアトリエギャラリーCieloの江口さんと共同で行った。

3歩目:想いを大事に、妥協しない。「やりたいことに本気で向き合う」

Baby Boxで子育て課の職員さんに強くお願いしたことは、「おめでとうございます!!」と拍手して、大袈裟なくらいな祝福と一緒にBaby Boxを渡してもらうことです。

”公務員が役所で手を叩いてお祝いする”なんて、恥ずかしくてなかなかできないことかもしれません。でも、だからこそ想いは伝わるんだと思っています。実際に、Baby Boxを受け取った多くのママさんから「市役所の方の祝福の気持ちが一番嬉しかった。」とアンケート結果が返ってきました。

”この地域で生まれてきたくれたこと、生んでくれたことの重要性”を職員の皆さんにしっかり伝えることで、祝福とエールをママさんに伝えることが実現できたのかな と思っています。

自治体は出生届の受理は日常業務なので、つい事務的になってしまいがちですが、出生届を受理するということは「このまちに新しい命が1つ誕生したんだ!」ということを忘れずに一人一人と接して頂くことで、行政と市民との壁が低くなり、その後の支援へ繋がると考えています。

事業を開始した当初は特に、様々な場面で様々な人と意見が対立したり、批判を受けたりもしましたが、悔しさを原動力に変えて、結局は、「どれだけこの事業やりたいの?」という自分の覚悟を確認するいい機会だったと思います。スーパーポジティブなんですよ(笑)

時にアンケートではシビアな答えが返ってくることもありますが、現在でもママさんのフィードバックを大切にすることで、喜びを届けてママを笑顔にすることに真剣に向き合っています。

 

 

祝福とエールをより多くの人に届けるために

2018年3月で地域おこし協力隊の任期を終え、新しいスタートをされましたね。これから考えている挑戦の一歩を教えてもらえますか?

今後は祖父母手帳、父親手帳事業なども始まり、BabyBoxも新しい形に変化していきます。活動範囲は全国へ広がっていきますが、長井で蓄えた経験を糧に長井を拠点として頑張っていきたいです。

またNPOを立ち上げて感じたことですが、「NPOはお金を稼いではいけない!?」「NPOってボランティア団体だよね、、?」という地方のNPOの常識をを変えていきたいと思っています。

しっかり稼いで資金を確保することで、地域にお金を回し雇用を生み事業を継続することができるし、新たな事業を展開できる。そうしてより多くの祝福を全国に届けたい。 と計画しています。

そして何より、aLkuの活動を若い人に知ってほしいと思っています。地域課題に取り組む若者が私たちを見て、勇気を持て踏み出せるような、そんな後押しができたらと思っています。

スタイ長井市のお母さんたちが縫製するオーガニックスタイは、BabyBoxの中に入っている商品の1つで、お母さんたちに縫製料が支払われる仕組みになっている。

 

祖父母手帳今と昔の子育ての違いにギャップを感じる祖父母世代、子育て世代が多いことから、孫育てに役立つ祖父母手帳を制作している。全国5市町村で配布される予定。

 

まさに今日、山形の楽しさの発掘にとり組む私達が勇気をもらえた、そんな力強いお話でした!

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最後にBaby Boxと一緒にみんなでパシャリ。佐藤さんの躍動に今後とも目が離せません。

 

 

Profile

佐藤亜紀さんさん

神奈川県川崎市出身。2015年から山形県長井市にIターン移住し、地域おこし協力隊に着任。「Baby Box」を贈る事業を立ち上げ、2017年グットデザイン賞を受賞、総務省ビジネスアワード採択の他、NEC社会起業塾生として学び、社会起業家として活躍する。現在はNPO法人aLkuの代表を務め、ベビーボックスの他、様々な社会課題に取り組む。

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小池 拓矢

ライター情報

小池 拓矢

20代独身サラリーマン。青森県で生まれ育ち、6年間仙台で大学生活を送り、第三の地、山形で就職した建築士のタマゴ。大学時代に日本を飛び出した...