「もしも」に備える、『もしもクロック』。

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▲そのものの色味を生かした無着色のウォールナット材(メープル材を使用したホワイトチョコバージョンもあり)

時計の裏板をスライドさせて開けると、非常食としての板チョコが1枚と、緊急時の連絡先などを記載できるカードが入れられるようになっています。

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一日のうちに何度も時計を目にすることで、「非常時(もしも)に備えましょう」と注意喚起を促すことを意図して、生みだされました。

 

木で出来た、温かみのある「ペン&カードたて」「トレイ」 「コインケース&クリップ入れ」 「名刺入れ」(《mokuhen》シリーズ)。

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天童市に、こんな自社製品を作る会社があります。

 

 

天童の名産品『将棋の飾り駒』製作と家具部材製作が得意な木工屋さん

「もしもクロック」を作っているのは、天童市の『有限会社 佐藤工芸』。

将棋の飾り駒や家具の部材などを製作する社員4名の会社です。

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平成2年9月、建具職人だった先代社長が、将棋の駒を取り扱う商店主から、「NC加工機を導入して、駒の作成を自動化させないか」と誘いを受けたことを契機に、『有限会社 佐藤工芸』を創業しました。

かつて手彫りが主流であった将棋の駒を、数値制御によるNC加工機を導入したことにより、量産化することを成功させました。

飾り駒は、平成4年に開催された第47回国民体育大会『べにばな国体』のお土産物として、全国から人気を集めます。

10人ほどの従業員が、夜中にも塗装を行うなどして働き、2.5寸から1尺駒を中心に、一日に200~300個も製作していたのだそうです。

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▲今もふるさと納税返礼品の《将棋駒ストラップ》を製作しています

 

しかし、べにばな国体以降、ブームは徐々に下火になり、飾り駒の売り上げは減少。

代わって、天童市内の家具メーカーから自動車のパネル加工の依頼を受けたことを契機に、次第に口コミが広がり、山形県内を中心とした複数の家具メーカーの企画物を受注する割合が増加し始めます。

 

現在の売上割合は、飾り駒が約10%なのに対し、家具の部材製作は約70%と、もっとも大きな柱となっています。

 

 

新規顧客「木製品デザイナー」を開拓

しかし、その家具の部材製作、リーマンショック直後は、仕事は激減。

平成12年に入社してから現在まで、将棋駒の彫のNC加工、その後、家具の部材加工にも携わっている高橋裕子さんは当時、危機感を募らせていました。

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新しい仕事を獲得出来たらを期待を抱いて参加した、東京で開催されていた全国の家具関係者が集まる展示会で会社のアピールをしよう名刺を渡そうとしても、男性社会の家具業界では、まるで相手にされませんでした。

「今後、営業しやすくするための名前が欲しい」と社長に相談し、平成25年に高橋さんは取締役専務に就任しました。

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展示会での行動が、次の展開を生みます。

翌平成26年、展示会でチラシを渡していた会社からの紹介で、東京のデザイン会社《株式会社トゥエルブトーン(twelvetone inc.)》と出会います。

試作を何度も重ねて完成した《YOKA》シリーズは、平成27年に開催された展示会でデビュー。

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アカマツのラーチ合板で作られた折り畳み式の椅子とテーブルは、節のある木目がワイルドな味わいを醸し注目を集めました。Journal Standard Furnitureやロフトでの取り扱いが決まったことや、アウトドアブームに乗って爆発的に売れたといいます。

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現在では、木製品デザイナーからの受注が、売り上げの20%を占めるまでになり、デザイナーの高度な要求にも答えられる確かな技術力を磨いています。

今後も、新規のデザイナーとマッチングできるように、意欲的に様々な展示会へと足を運んでいます。

 

確かな技術力を持つ木工職人

佐藤工芸では、仕事を分担制ではなく、1人が顧客との打ち合わせから加工、納品まで最後まで責任を持って担当する形式を取っています。杉山社長自らも、NC加工を手掛けます。

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手加工担当の鈴木徳行さんは、前職は家具製作に携わっていました。

自分の働きが、目に見えて形になっていく仕事ができる方が、自分の性格に合っていると思ったので、敢えて小さい会社を探して、佐藤工芸に入社。

「流れ作業で、一つの作業だけをやるのではなく、この会社では、ひとりで一から十まで、様々な工程を行い、一つの製品となるまで自分で仕上げることができるので、楽しいです。

その分、作ったものが不良になれば、自分に戻ってくるので、責任は大きいですが、それ以上のやりがいがあります。

定年はないので、自分の体力と気力が続く限り、最後までこの仕事を続けていきたいです。」と話します。

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自社商品の開発に挑戦し、新しい仕事を作りだしていく

「加工するものが減っているから、新しい仕事への種まきが必要だ」とという高橋さんの発案で、平成29年1月から自社商品の開発をスタートさせました。

しかし、「自分たちには、作る技術があるのだから、もっと何かを作って売らなくては!」と挑戦を始めたものの、思うようには売れません。

アドバイスを求めた山形県工業技術センターの『スマートデザイン研究会』プロジェクトに参加。山形企業4社コラボによる、山形独自の商品開発に携わりました。

約1年半をかけ完成したのが《もしもクロック》です。

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当時、会社内には『部材を作って、もっと売り上げを!』という声があり、商品開発のために外部に出かけていく高橋さんは、あまり良くは思われていなかった事もあったそうですが、上手く新規開拓に繋がっている今では、社長も理解を示してくれていています。

 

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▲平成22年に、一社員から社長に就任した杉山宏行さん

 

その後、《もしもクロック》の次の商品開発を試みますが、打開策を見出せません。

そこで再度、山形県工業技術センターに出向き、相談を持ちかけることにしました。

注目したのは、家具の部材を製作する際に、大量に発生する端材。

違法伐採など、世界的に森林伐採が問題になる中で、何の遜色もない良質な木材が、ただ灰になってしまうことに心を痛めていました。その木片に新たな命を吹き込んで出来たのが《mokuhen》シリーズの「ペン&カードたて」「トレイ」 「コインケース&クリップ入れ」 「名刺入れ」4種の文具。

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平成30年3月末に、販売を開始した《mokuhen》シリーズの製品は、全社員の手を渡って加工から塗装までを施しています。

 

自社製品を事業の柱に

佐藤工芸のみなさんは、自社開発商品を今後の事業の柱として成長させていきたいと、意欲を燃やします。

開発商品が安定的に販売できるようになり、新たに職人を雇用できるようになるよう、次の展開に向けての希望を膨らませます。

今一番の課題は、どうやってお客様の手元に届けるか、という販路拡大について。

 

天童の小さな「木製品メーカー」の始まったばかりの挑戦を、ぜひ応援してください。

 

有限会社佐藤工芸

もしもクロック

 

※この記事は、平成29年度「東北地域中小企業・小規模事業者人材確保・定着支援等事業」として作成しました。

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